イスラエル:われわれのジェノサイドは明確

断固としたジェノサイドノーを

B' tselem

 イスラエル国内ではここに来て、ネタニヤフのガザ攻撃への反対が急速に高まり、停戦要求のデモが何度か数十万人規模で起きている。以下はイスラエル内人権組織の報告で、ネタニヤフ政権の攻撃をジェノサイドと明確に規定し、その具体的実情、論理、歴史的連続性を解き明かしている。(「かけはし」編集部)

数々の事実への結論は明白

 B' tselemは、設立後長い歴史をもつイスラエルの人権情報センターだ。それは、イスラエルのガザにおける戦争を現在公式にジェノサイドと確認した(「人権のための医師」と並んで)イスラエル内の2組織のひとつだ。以下は、「われわれのジェノサイド」の標題をもつ同組織の幹事会総括だ。
 2023年10月以来、イスラエルはパレスチナに向けたその政策を原理的に変えてきた。2023年10月7日のハマスが率いた攻撃に続いて、イスラエルはガザ回廊の中で徹底的な軍事作戦に乗り出した。そしてそれは21ヵ月以上経った今も進行中だ。
 ガザに対するイスラエルの猛襲には以下のものが含まれている。直接的攻撃の中での、また死者数を大規模に生み出すような破局的な諸条件をつくり出すことを通じたその両者による大量殺害。回廊の住民全体に対する深刻な身体的、精神的な障害。インフラと生活条件の大規模な破壊。パレスチナ人の教育諸機関や文化的な場を含む社会組織の破壊。大量逮捕とイスラエルの刑務所内における拘留者虐待。そしてその刑務所は事実上、裁判もなくとどめられているパレスチナ人数千人にとっては拷問キャンプに成り果てている。さらにガザでの民族浄化というもくろみを含み、後者を公式の戦争目標にする強制的な大量追い立て。そして難民キャンプの意図的な破壊、およびUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)を掘り崩すもくろみを通したパレスチナ人のアイデンティティに対する攻撃。
 ガザ回廊におけるこの包括的な攻撃の結果は過酷であり、少なくとも部分的には、パレスチナ民衆の一部としてガザ回廊に暮らす2百万人以上の人々には回復不可能な傷になっている。
 ガザ回廊におけるイスラエルの政策とその恐るべき結果に対する検証は、攻撃の目標に関する高位のイスラエル政治家と軍司令官たちによる言明と一体となって、ガザ回廊のパレスチナ人社会を破壊する協調された意図的な行為をイスラエルが取っている、との明白な結論に導く。換言すれば、イスラエルは今、ガザ回廊でパレスチナ人に対するジェノサイドを犯し続けているのだ。

ひとつの全体的脈絡の中の行為


 ジェノサイドという用語は、人類史を通して起きてきた社会歴史的で政治的な現象を指している。1948年にジェノサイド犯罪防止・処罰に関する国連条約が署名されて(そして1951年に発効して)以来、ジェノサイドはまた、全体としてあるいは部分的に、ひとつの民族的、人種的、あるいは宗教的なグループを破壊する意図に基づいて犯された行為も含み、国際法内の重大な犯罪のひとつとして認識されてきた。
 ジェノサイドは、そのひとつでしかない大量の肉体的殺害を伴って、時間を通じた多様で平行的な行為を通じて実行される。時に人口密集圏やキャンプ内での生活条件の破壊、体系的な出産妨害の試み、集団メンバーに対する広範に広がる性的暴力やかれらの大量排除はすべて、民族的、人種的、宗教的、また他のグループを破壊するために国家や支配的権威により利用される手段の部類に入る――そして歴史を通じてそうだった――。
 したがってジェノサイド行為は、支配的権威による意図的で協調された努力の一部として、区別された集団の破壊をもたらすことが意図されたさまざまな行為だ。道義的、また法的な双方で、自衛行為を含むいかなる環境の下でもジェノサイドが正当化されてはならない。
 ジェノサイドは常に、ひとつの全体的脈絡の中で起きている。つまり、それを可能にする条件、引き金を引くできごと、またそれを導くイデオロギーがある。ガザ回廊内を含んでパレスチナ民衆に対する現在の猛襲は、ガザ回廊内に住む人びとに対する最も極端な形態をとって、暴力的で差別的な体制をイスラエルがパレスチナ人に押しつけた70年以上という全体関係の中で理解されなければならない。
 イスラエル国が創立されて以来、アパルトヘイトと占領の体制が制度化され、その体制は暴力支配、人口統計的工作、差別、パレスチナ人集団の断片化からなる仕組みを系統的に用いた。体制が据えたこれらの基礎が、2023年10月のハマス率いる攻撃の後即時にパレスチナ人へのジェノサイド的攻撃に乗り出すことを可能にしたものだ。

抑圧と統制から破壊と絶滅へ


 この報告は、特にこれらの基礎の3つを強調している。すなわち、分離、人口統計的工作、さらに民族浄化を強要するアパルトヘイト体制下の生活。下手人が免責を享受する中での、パレスチナ人に対する体系的で制度化された暴力の使用。そして、存在に関わる脅威としてパレスチナ人を練り上げ、非人間化する制度的な仕組みだ。
 そのような条件は、ジェノサイド的な猛攻に発展することなくある時間ずっと存在することが可能だ。しばしば、下手人グループ内部に存在に関わる脅威という感覚を生み出す暴力事件が、支配のシステムがジェノサイドを実行するための引き金になる。2023年10月7日のハマスと他のパレスチナ人武装グループによる攻撃が、この種の触媒だった。
 非道な攻撃は、多くの戦争犯罪、またおそらく人道に反する犯罪をも含んで、もっぱら市民を狙った。それはその882人が市民の1218人のイスラエル人と外国籍の人々の命を奪い、性暴力を含む広範囲に広がる厳しい暴力行為を伴った。そして、数万人の負傷者、およびガザ回廊へと拉致された252人――そのほとんどは、女性、高齢者と子どもを含む市民――という結果を残した。拉致された最も若い者は、ガザにとどめられる中で3歳の兄と母親と共に殺害された生後9ヵ月の赤子だった。
 それはイスラエル人に対し、攻撃、その規模およびその結果という事実そのものが、イスラエル社会内に深い政治的かつ社会的な変化に導いたほどの存在に関わる脅威という感情と不安を生み出した。これらが、ガザ回廊内のパレスチナ人に向けたイスラエルの政策にひとつの移行を起こさせた。つまり、抑圧と統制から破壊と絶滅への移行だ。
 ガザへの猛攻は、東エルサレムとイスラエル国内も含んで、西岸のパレスチナ人に対しさまざまな形態とレベルで加え続けられている暴力のエスカレートから分けられてはならない。これらの地域ではガザにおけると同じく、下手人には説明責任が全くない形で、パレスチナ人に命に関わる犯罪が犯され続けている。これらの地域での破壊と暴力は、それらを止めるための機能する効力のある国内的、国際的仕組みが全くない形で、時間が経つと共に激化し続けている。
 結果としてこれらの犯罪は、兵士、司令官、政治家、メディアの人間、また全体としてのイスラエル人から見て正規なものになり続けている。われわれは、ジェノサイドはガザ回廊にとどめ続けられることなく、諸行為とそれを駆り立てる考え方は同じく他の地域へと広げられるかもしれない、との鮮明で現にある危険について警告する。

イスラエルの行為止める行動を

 B' tselemは、イスラエルのアパルトヘイトと占領体制下でパレスチナ人に引き起こされた障害を調査し文書で証明するイスラエルの人権組織だ。B' tselemは、人間、かれらの命、尊厳、そして個人と集団の諸権利を守る義務に誓って、パレスチナ人の人権に対するイスラエルの系統的な侵害を暴露するために35年間活動してきた。パレスチナ人に対する系統的で広範に広がる国家暴力を妨げ止めるために活動する人権組織として、それらを実行している体制とその基礎をなす政治的論理という全体関係の中で現地で人権侵害を分析することは、われわれの義務なのだ。
 2023年10月以来、われわれは目撃者の証言を集め、イスラエルが支配する領域中でのパレスチナの市民に対する前例がないほど極度の暴力を伴っている数百件の事件を文書にしてきた。一方鍵となる政治家と軍の司令官たちはあからさまに現場で実行されている政策を諸々言明してきた。これらの政策の結末に関する無数の証拠は、パレスチナ人の扱いにおけるイスラエルのシステム全体の恐るべき転換を映し出している。
 B' tselemで、ガザ回廊、西岸、東エルサレム、またイスラエル出身のパレスチナ人とユダヤ人―イスラエル人は、人権の擁護は基本的な人間的かつ道義的な義務という分かち合われた観点を導きとして肩を並べて活動している。われわれすべては、われわれがユダヤ人というだけの理由から特権を与えられた主体としてわれわれのある者を、またわれわれがパレスチナ人という理由だけで何らかの保護に不相応として他者を分類するような、差別的なアパルトヘイト体制下に生きている。われわれは共に、地中海とヨルダン川の間で差別や暴力的抑圧や絶滅のない暮らしを行うために、われわれ全員がもつ権利のために闘っている。
 われわれが書いている中でさえ、イスラエルはパレスチナ人への残忍で容赦のない猛攻を強め続けている。ガザ回廊での日常仕事になっている殺害と破壊は、西岸での高まる一方の暴力と何万人という力づくの追い立て同様、これらの犯罪がもつ理解不可能な規模と激しさを前にした国際的な怠慢なしには不可能だったと思われる。
 特に欧州と米国の多くの国家指導者は、暴力と絶滅を止める有効な行動を控えてきただけではなく、その継続を可能にしてきた――イスラエルの「自衛権」を断言する諸言明を通してであろうが、武器と弾薬の船積みを含む積極的な支援を通してであろうが――。
 この土地の人民として、また人権活動家として、われわれと他の多くが調査し文書で証明してきた事態を証言するのはわれわれの義務だ。われわれが目撃し生き抜いている現実に名前を与え、それを詳しく話し、犠牲者と共に立ち上がるのはわれわれの義務だ。
 イスラエルの体制がガザ回廊でジェノサイドを今犯しているという認識、そしてそれがイスラエル支配下でパレスチナ人が生きている他の地域に広がるかもしれないという深い懸念は、次のことを求めている。つまり、イスラエル社会と国際社会両者からの緊急かつ断固とした行動、パレスチナ民衆に対するイスラエルのジェノサイドを止めるための国際法下で利用できるあらゆる手段の使用だ。(2025年7月、B' tselem報告、「ソリダリティ」より)(「インターナショナルビューポイント」2025年8月7日)   

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