早朝点描 ほっこりする話

コラム「架橋」

 朝4時に起き、早朝からのバイトに向かう。冬は真っ暗だが、今の季節は朝陽が昇り、外は明るい。何よりも早朝の空は素晴らしい。朝焼けをはじめ空と雲が織りなす模様は神業だ。
 朝5時半から「松屋」の朝定食。ごはん小、生卵、おしんこ、焼きのり、山芋、みそ汁。これで330円。今朝もこれを頼んだと思ったら、ごはんがなくて生野菜。店員さんに「ごはんがないけど間違いでは」と聞くと「いや、ごはんの代わりに生野菜を頼む人がいるので新しいメニューに入れました。ごはんに換えることもできますが」。私はごはんに換えてもらった。
 食券を見ると360円。差額の30円はどうなるのか。私が間違えたのだから仕方がないと、黙っていたら店員さんが差額だと言って30円戻してくれた。知らんぷりされても文句を言う人も少ないだろうと思いながら、店員さんの温かい心づかいにほっこりし感謝する気持ちが沸いた。
 それを出てバイト先へ。ある小学校の出入り口の歩道を歳取った犬が散歩している。今朝、初めて飼い主に声をかけた。「何歳になりますか」「50歳を過ぎている」「何という種類ですか」「保護犬で雑種。毛の模様から甲斐犬の血が混じっているようだ。よたよたした歩きは以前足をケガし、そのせいだ」。
 私は近寄り首から背中をなぜてあげた。犬はうれしそうだった。「この犬はとても優しいよ」と飼い主。
 小学校の校門の前にはいつも4~5人の給食(?)の女性たちが仕事の始まるのを待っている。彼女たちはこの犬に餌を与えたり、声をかけたりしてかわいがっている。
 ここを通り過ぎて、バイト先へ。少し早すぎるので、歩道で待っていると新聞配達のお姉さんが電動自転車をこぎながら通っていく。私がいつからか、「がんばっているね」というつもりで、頭を下げるようにした。すると私の姿を見つけるとかなり手前で手を振り、通りすがりに「おはようございます」と元気よく、あいさつをしてくれる。もしかしてアジアからの留学生か? 異国に来て早朝新聞配達をしながらがんばっている姿にほっこりしてしまう。
 数分後にバイト先の同僚がやってきた。私が「オリンピックの交通規制でいつもの八百屋さんが来ていないね」と言うと、その女性の同僚は「テレビでやっていたけど、この期間首都高を使うと余分に千円払わなくちゃいけない。選手を運ぶために車の台数を減らすためのようだがおかしいね。わたしゃ、オリンピックなんか見ないよ」とちょっと怒ったような口ぶりだった。あー、これが迷走するオリンピックに対する庶民感覚なんだと、再認識した。八百屋さんは、「豊洲は交通規制で、どう行ったらいいいのかよく分からなくなっている」と困惑し、迷惑そうだった。
 話は変わるが、コラムの筆者の灘さんがある病気で、コラムの執筆が出来なくなり、先回と今回お休みにしている。何とか回復してほしいと願うばかりである。  (滝)

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