2023年ユン・ソギョル政府の労働政策展望

 ユン・ソギョル政府の国政支持率が12月から本格的な上昇傾向になっている。このような上昇の原因として貨物連帯ストライキに対する強硬な鎮圧が挙げられており、労働界は緊張感と当惑感を隠せずにいる。政府の支持率はこれまで30%強で動いていたが、12月の第1週から徐々に上昇し、12月の第3週には41・1%まで上昇した。支持評価の理由で最も多かった回答は「労組対応(20%)」だった。

 自信を回復したユン・ソギョル政府は労働・教育・年金の3大改革に本格的に乗り出した。おりしも労働改革の下絵も完成した。

 ユン・ソギョル大統領は3大改革の核心は労働改革だとし、「真っ先に推進すべきもの」とした。関係部庁が合同で発表した〈2023年経済政策の方向〉では、政府の「労働改革」推進日程を大まかに見ることができる。雇用労働部は2023年の第1四半期に労働市場の格差緩和と保護死角地帯の解消などに対する包括的改革の議論に着手し、第2四半期には未来労働市場研究会勧告案と経使労委など社会的対話を通して労働時間改編案を準備し、関連する立法事項を推進する。第3四半期には派遣制度改編に着手する。未来労働市場研究会の勧告案によれば、派遣業務及び対象期間の調整、派遣と請負の区別の明確性を高めるためには、派遣制度の改善が避けられないが、まだ具体的に示された案はない。

長時間労働への条件は整った


 政府が最も重点を置いている政策としては、労働時間の柔軟化政策である。未来労働市場研究会は勧告案で「週単位」で管理されている延長労働時間を「週・月・四半期・半期・年単位」に改編するよう注文した。現在の週52時間制は、1日8時間労働を基準に、週5日間40時間以内の正規労働時間であり、延長労働も、12時間が最大労働時間である。政府は、延長労働時間の単位を「週単位」ではなく、月、四半期、半期、年単位に拡大することを明らかにしている。年単位で延長労働時間を管理すると1週間で最大69時間労働が可能となり、1年間の延長労働の上限は440時間なので最長15週間(440時間÷29時間)連続で69時間ずつ働かせることが可能になる。

 政府と未来労働市場研究会などは労働時間に対する「自律権」を標榜して労働時間を弾力的に運営しようとしているが、14・2%の低い労組組織率や産別交渉の制度化が困難な現実のなかで実質的には労働時間の主権を労働者が手にすることは難しいという指摘が出ている。特に景気沈滞状況がさらに悪化すると思われる状況では、実質賃金の下落もしくは停滞を経験する労働者も泣き、唐辛子をかじりながらの長時間労働が必要になる。すでに企業の構造調整は始まり、長時間労働に依存しなければならない不安定労働層はさらに拡大するものと考えられる。企業が1980年代生まれを含む希望退職を進めているという動静とともに、本業の他に副業をする青年と家長が増えているという統計が出ている。統計庁によると、昨年19~34歳の青年就業者10人のうち4人は2つ以上の仕事を持っていることが分かったが、常時労働青年10人のうち3人は年俸が2000万ウォンに及ばなかった。そしてこうした状況を根拠にして、「もっと長く働きたい青年たちの声を聞け」と保守言論が長時間労働への改編を主張している。

 長時間労働に追い込まれる状況は低賃金の問題だが、政府は労働市場の二重構造が問題であり、労働者間の賃金格差にのみ焦点を当てようとしている。イ・テウィ民主労総副委員長は「最低賃金法自体を改悪して最低賃金が上がったように見えても実質賃金はむしろ低下している。非正規職は既に最低賃金の人生であり、ここに公務員たちまで含まれている」とし「最も危機に追い込まれている労働者の生存を守る闘争が準備されなければならない。来年度の最低賃金引き上げ闘争は『国民的』になるだろう」と話した。

 キム・ヘジン不安定労働撤廃連帯常任活動家は「労働時間改悪に対する戦いは労働時間の主権をめぐる戦いという点を明確にしなければならない」と強調する。労働時間を柔軟に定めるのは労使関係によるが、出勤時間、残業特勤を決め、仕事の分配を決めるのは結局企業。「今回の改悪は労働時間主権を全面的に企業が奪うことである」と明らかにした。

 さらに「すでに現場は長時間労働体制に入っている」とし「長時間労働体制は雇用形態問題と分離できない問題であるため、非正規職労働者への影響を検討しなければならない」と指摘した。不安定労働撤廃連帯は現在、アンサン地域で公団組織化事業を行っている。キム・ヘジン常任は「すでに週52時間制の意味がなくなっている。日雇いとして毎日12時間ずつあるいは20時間の雇用契約を締結すればどうなるか。今週80時間ずつ仕事をさせて解雇し、他の人を採用して再び週80時間ずつ仕事をさせて切る姿まで想像できる」と憂慮した。

霧雨で服を濡らすような賃金システム再編


 一方、IMF経済危機以後、政府は御用学者らを動員して賃金体系改編議論を主導したが、職務・成果給への転換の必要性はすでに2000年代から提起されてきた主張だった。構成員12人の全員が大学教授で構成された未来労働市場研究会の賃金体系の答えも職務・成果給中心の賃金体系だった。そしてこの過程で2大労総と何のやりとりもなかった。

 イ・ジョンヒ民主労総政策室長は「未来労働市場研究会が勧告文を出す前、11月末頃には一度連絡が来て相談するジェスチャーでも取るのだろうと思った。しかし、何の連絡もなく、韓国労総も何の連絡も受けなかった」とし、「最小限の手続きをすら省略するならず者のようだ」と憂慮した。

 すでに2大労総が職務・成果給中心の賃金体系に反対しているため、政府は説得する代わりに、個別の事業場で職群別に導入してみるという意向を明らかにしている。未来労働市場研究会は、特定の職群を対象に賃金体系を改編することができなければならないとしている。現行法上賃金体系改編のためには、当該事業場の労働者を対象に就業規則変更に関する意見を聞いたり同意する手続きを経なければならないが、未来労働市場研究会は賃金体系改編対象である当該職群の同意さえあれば就業規則変更ができるように法制度を変えようとしている。使用者側が過半数の労組を排除し、「部分勤労者代表」と賃金体系改編の導入に合意できる道を開いてくれるというものだ。

 チョン・ギョンウン民主労働組合総連盟付設民主労働研究院研究委員は労組のある生産職がターゲットにされる可能性が高いことを明らかにし、「大卒事務職、研究職、開発職が高卒生産職より賃金が低い理由は生産職が多数で職務給を導入できないためで、解法は職群別代表を選出して過半数労組を無力化する方法が最適だと見ているようだ 。すべての事業場で、性別、雇用形態、組合員の有無、職群と職級による葛藤は当然にも存在している。結局、民主労総の大企業事業場に職群間の葛藤を起こそうとする算段のようだ」と指摘した。

 一方、政府も実際に民間部門に強制することが難しいため、公共部門から職務・成果級中心の賃金体系導入を試みるものと見られる。職務重要度と難易度の高い重要職務給の支給対象を定員15%以内から30%以内に拡大し、これらに最大10~20万ウォンまで支給すると具体的に明示した。それで公共運輸労組も2023年上半期、公共機関革新ガイドラインによる本格的な人員削減と職務給制導入への対応を優先するという計画だ。

 部分労働者代表制で職群間の分裂を図る政府は、様々な利害関係の中で対立と分裂を助長している。代表的な分裂対象がまさに中高年代と青年だ。政府の労働時間改編にも、賃金体系改編にも、労組会計透明化の理由のいずれにもMZが登場する。労組の財政を監視し、「MZ世代や未組織労働者など政府の支援を必要とする社会的弱者などに役立つ方向」に改善するということだ。

民主労総を孤立させるために


 ユン・ソギョル政府が推進している3大改革は、先の大統領選挙でユン・ソギョル大統領と単一化する前、アン・チョルス議員が大統領候補として出した公約だった。現在、労働改革は「改革」という外皮をまとって、結局労働組合弾圧になるだろうという懸念が大きいが、それもそうで、アン・チョルス議員の「労働改革」の目的は民主労総を引き裂いて組織された労働者を瓦解させることだ。

 12月18日、ハン・ドクス首相は「労組財政運用の透明性など国民が知るべき部分を政府も積極的に要求するだろう」と話し、現在行われている労組会計関連の問題に火をつけた。2日後にはハ・テギョン国民の力議員が労働組合の監査資料を毎年義務的に行政官庁に報告するようにする労組法改正案を発議した。また現在労組会計を監査する監査院の資格が明確ではないが、今後会計監査院の資格を会計法人・監査班等に限定しなければならないとした。また雇用労働部も労働組合の財政透明性の向上を裏付ける法改正を推進すると述べた。

 民主労総は政府の会計監査問題に対して「労働組合と組合員、労働組合と市民を分裂させようとすること」だと強く反発している。労働組合会計に関する規定は、労組法に基づいて労働組合が自らの規約と規定によってより確実に制度化し、執行と監査、これに対する審議と議決及び報告の手続きを公開的かつ透明に保っているとも説明している。

 一方では、より積極的に民主労総が対応しなければならないという声も出ている。会計監査問題という悪質な宣伝はこれまで労組に加えられたどんな攻撃よりも、その内容と波及力の面ではるかに被害が大きいと予想される。労働界のある関係者は「追加延長勤労制のような具体的な法案としての労働改悪も大きな問題だが、さらに懸念されるのは労働組合の会計と監査をのぞき見たり監視するという態度」だとし「大衆に『労働組合が組合費を流用し私的利得をうる腐敗した不公正な集団』として烙印を打つ効果を誘導するものだ」と指摘した。

 さらに「社会全般がアトム化され右傾化された今は労働組合、労働運動が大衆一般の支持を受けにくい状況だ。大衆との乖離感と孤立がさらに深刻な問題として提起されるだろうが、このような状況で道徳的であるべきことさえ失うと、その後の運動は政府や資本との戦いではなく、大衆一般との葛藤になるだろう」と話した。

 また「現在の政権と資本もこのことを労働運動の弱い環として捉えているため、継続的にこれを攻略しようとするだろう。このように運動全般が大衆的信頼、支持基盤を失うことになれば、結局どんな政策的改悪にも闘争の動力を設けることが難しくなるしかない」とし「大衆的支持を受ける労働者の代表性という運動の根幹自体が攻撃を受けているという状況として認識する必要がある」と提言した。

パク・ダソル記者
(「チャムセサン」1月2日)

朝鮮半島通信

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