ウクライナでのロシアの戦争が米国政治をかき回す

ダン・ラボッツ

 ウクライナでのロシアの戦争が米国政治を完全にかき回すことになった。最終的にそれは、両者とも2024年大統領選の候補者であるかもしれない、ジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領の未来を決定する可能性もある。また両政党とも、この戦争が今年11月の中間選挙における彼らの可能性を複雑化した、と気づいている。
 バイデンは、民主党員と共和党員をまとめ、ウクライナ支持とウラジーミル・プーチンロシア大統領反対で国を団結させることで、信用を得ることができる。彼はさらに、制裁戦略をめぐってNATOをあらためて団結させる点での成功をも主張してきた。そうであっても次にやるべきことに関する両党内の競合諸計画が、議会と政治エリートを貫いて渦を巻いている。共和党は、党の規律を固め、その親プーチン部分を抑え込もうと努力し、一方民主党は、制裁に関するさまざまな違いに対処している。
 共和党内では、大統領の1候補者でもある前副大統領のマイク・ペンスが、彼の元ボスである前大統領のトランプへの一撃を狙って、共和党内には「プーチンの弁解者のための余地はまったくない」と声明した。トランプは最初プーチンの才に対する感嘆を表明し、その後ウクライナ大統領のヴォロディーミル・ゼレンスキーに対する共感を表明したのだった。トランプは今も党を率いているが、何人かの共和党議員は、プーチンに対する最良でも両義的な彼の立場が中間選挙での彼らの可能性を傷つける可能性もある、と信じている。
 サウスカロライナ州選出の共和党上院議員、リンゼイ・グラハムは、まったく曖昧ではない。彼はロシアの誰かに、プーチンを殺すか彼を打倒するクーデターを組織するよう求めて声を上げた。しかしそれはバイデンと共和党によって拒否された立場だ。その間、右翼女性下院議員のマージョリー・テイラー・グリーンは、白人民族主義者の政治集会に出席し、そこでは人々がプーチンに向けて喝采を送った。それでもほとんどの共和党議員は今、ウクライナ支持とプーチン反対で結束している。
 共和党は、バイデンの戦争対処と制裁の影響を11月中間選挙での主要キャンペーンテーマにすることを見込んでいる。彼らの主張は、ロシアにもっと強いエネルギー制裁をかける点でのバイデンの失策は、米国の原油購入がガソリン価格を上昇させる中でプーチンの戦争に資金を回す助けになっている、ということを意味する、というものだ。
 何人かの共和党知事は語る。「われわれの州の人々は、ガソリンスタンドで追加料金を払う余裕はないし、われわれの同盟者もプーチンの専制と侵略の人質にされてはならない」と。他の共和党員はバイデンに、原油と天然ガスの賃貸契約およびパイプラインを制限した、さらに米国のエネルギーを依存的にしている、そうした彼の環境問題の立場を覆すよう求めている。
 民主党は制裁に関し分裂している。これまでのところバイデンは、ロシア産原油と天然ガスの輸入禁止には反対している。しかし下院議長のナンシー・ペロシは「私はそれを、その禁止を全面的に支持する」と語っている。石炭産業を代表するウエストバージニア州選出民主党上院議員のジョー・マンチン、および原油が豊かな州であるアラスカ選出上院議員のリーサ・マーカウスキーは、ロシア原油に対するもっと強力な制裁を含んだ新法を提案中だ。
 バイデンは、核戦争にも至る可能性のある全面的な欧州衝突を引き起こしかねない行動を避けようと努力してきた。しかしニュージャージー州選出民主党下院議員のトム・マリノウスキーは、キエフを救うために、1948―同49年のベルリン空輸に似た空輸を計画すべき、と提案している。しかしながらそうした作戦はすべて、ほとんど確実にロシアとの直接的軍事衝突に導くと思われる。
 これまでのところ、ウクライナでの戦争はバイデンを助けてきた。3月1日の彼の年頭教書演説は、彼のウクライナ支援により、通路を挟む両側からのスタンディングオベーションを彼にもたらした。彼はさらに、2月における67万8000の職創出という、雇用における強力な成果のおかげで信用も獲得している。彼の全体的支持率は、先頃の世論調査で8%上昇し、47%になった。これは、11月における民主党の可能性を改善しているが、依然として民主党は議会の支配を失いそうな気配にある。
 これまでに、ほとんどがウクライナ系米国人による、ロシアの戦争反対、ウクライナ支持、の大衆的なデモが起きてきた。いくつかはこの紛争における米国とNATOが果たすもっと大きな役割を求めて声を上げてきた。米国の左翼は対応が遅かった。とはいえそれは今、欧州ほど大規模なものはどこにもないとは言え、ロシアの侵略に反対するデモの組織化を始めつつある。(「ニューポリティクス」誌より)(「インターナショナルビューポイント」2022年3月12日)

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