カナダ民衆と無縁な右翼の暴挙
国の活動停止
多方面から糾弾の声
トニー・リー
今年2月はじめから数週間米国/カナダ国境の橋とカナダの首都中心部を占拠した大型トラックの群れ、がニュースとして世界中に配信された。ワクチン接種の義務化に反対し、自由を求める運動、との内容だった。しかしその実態は基本的に、労働者の要求とは無縁の右翼の行動だった。以下はカナダの労働者による具体的な報告。極右による反ワクチン運動利用の例として紹介する。(「かけはし」編集部)
反ワクチン主義者たちがカナダの首都であるオタワで1週間以上トレーラーとトラックを駐車させた。彼らはコヴィッド19の規制すべてを、そのほとんどが連邦の規制というよりも州のものであるにもかかわらず、解除するよう求め続けている。
今週早く、50から70台の車両が、ミシガンのデトロイトからオンタリオのウィンドソーへとデトロイト川を渡るアンバサダー橋を遮断した。自動車や自動車部品や食品を含んで、3億2千万ドル以上の商品がトラックで日々国境を越える。GMとステランティスの工場は、ジャストインタイム配送が操業条件となっているため、部品欠落を理由に労働者を家に帰した。この橋梁は、橋梁上のトラックの山により、カナダ側で通行を阻止されたままだ。乗用車はデトロイト―ウィンドソートンネルによって国境を通過できるが、運輸はヒューロン港のブルー・ウォーター橋(デトロイトの北方1時間以上)へと変えられた。
これは労働者が支持すべきデモだろうか? オタワとカナダの他のところのデモがほとんど労働者のデモではなく、また労働者の権利のために闘ってもいない、とする理由をトニー・リーが説明している。
参加者の多くは
労働者ではない
諸抗議行動でそうした破壊的な部分を演じてきた大型トレーラーは、自分で車を所有している運転手やトラック運送企業所有者により持ち込まれた。労働者階級のトラックドライバーは誰一人、抗議のため、またそれを続けて何日も何週間も駐車するため、6桁も費用のかかる車両を使う手段をもっていない。労働者階級のトラックドライバーには経営者(トラックを所有)がおり、カネを稼ぐためには道路上にいなければならないのだ。
カナダ人長距離運送トラック運転手の90%はワクチン接種を受けている。彼らはこの抗議運動をまったく支持していない――チムスター・カナダの声明参照――。抗議行動中の指導的トラック所有運転手とトラック輸送企業所有者は過去に、ピケットラインを組織した労働者を脅したことがある。
労働者階級の
要求は皆無だ
この抗議行動は、トラックドライバーのための賃金引き上げも安全な労働条件も求めていない。カナダには(おそらく米国でも同じく?)、ドライバーに、特に移住労働者に、その結果企業が最低賃金や時間外手当を払う必要がなくなるように、彼らが「自営の契約者」であるとの契約に署名するように、トラック運送企業が圧力をかけるという大きな問題がある。誤った類型化にさらされたドライバーはまた、労働者調停や失業手当の権利も奪われる。彼らは大量の賃金盗み取りにさらされているのだ。今回の抗議行動参加者はこれらのどちらの問題にも触れていない。
彼らはそれとは別に、公衆衛生の諸方策を終わらせる――所有者の利益をつくり出すために、保護もないまま労働者を戻したがっている企業を利するにすぎない――ために闘っているのだ。
札つきの右翼
とレイシズム
この抗議行動は、南軍旗や鍵十字を携えた者たちを含んでいた。そして彼らはプライドの旗やワクチン接種支持を示すものを付けた家々や事業所を破壊した。またそれらには常軌を逸した右翼の陰謀論が含まれ、彼らはマスクを着けているオタワ市民に悪口を浴びせ迫害を加えた――彼らにつきまとい、マスクを外すよう要求しつつ――。彼らは医療ケア労働者をも脅迫した。
この抗議参加者の支持者は、ほとんどは平和的だ、と言っている。しかし、レイシストや嫌がらせを行っている部分は大目に見られてきた。現実には、煽動者や抗議運動の指導者には、ネオナチや白人至上主義の運動と結びついた長い歴史をもつ者たちが含まれている。
それはまさにひどいものであり、人々がオタワ警察に苦情を言った時には、警察が、抗議参加者を怒らせない目的で、外ではマスク装着を避け、彼らが医療ケア労働者と同一視される服装を避けざるを得なかった、と市民に話す程だったのだ。またこの抗議運動には、いくつかの警察と軍からの相当な支援もある。
トランプ派の
著名人が支持
抗議車列の指導者たちは大部分トラック運送業出自ではなく、保守党の右翼、さらには右翼の人民党(マクシム・バーニー、ブライアン・ペックフォード)、白人至上主義者、西カナダ分離主義者(マヴェリック党)から出ている。彼らは反労働者かつ反移民だ。彼らはイーロン・マスク(南ア出身の実業家で投資家、電気自動車製造企業のテスラの所有者:訳者)、リック・ディサンティス(共和党のフロリダ州知事、トランプ主義者でティーパーティー支持者:訳者)、ドナルド・トランプ、テッド・クルーズ(テキサス州選出の共和党上院議員)の支持を引き出した。
カナダ諸労組、進歩的グループ、先住民諸組織が暴挙を糾弾
カナダの中央労働者機関であるカナダ労働者会議、チムスター労組、さらに他の多くの労組が、この抗議の背後にある反労働者性、レイシズム、右翼政治を指摘している。カナダ内の多くの先住民グループも同じことを行っている。私の考えでは、われわれが共に立ち上がるべきなのはそれらの人々であり、右翼の抗議参加者ではない。
カナダ公共サービス連合(カナダ全国で21万5千人のメンバーをもつ)の声明は次のように述べている。「今週末われわれは、反公共衛生の車列がトロントに向かう中、公共衛生、科学、民主主義、公正、また公立病院スタッフと患者を支援するイベントを組織した驚くべき公衆衛生従事者と連帯し、共に立ち上がった」。2月12日には、前線の労働者および占拠に影響を受けているオタワ住民と連帯する、労組活動家とコミュニティ活動家の集会が予定されている。(2022年2月10日、「アゲンスト・ザ・カレント」より)
▼筆者は、長い経歴を持つカナダ人労働者活動家。彼は2019年12月にGMオタワ組み立て工場を退職し、現在はユニフォー(カナダでは最大の民間部門労組)222支部政治行動委員会の座長。(「インターナショナル・ビューポイント」2022年2月号)
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