連帯と社会正義にもとづいて行動を

医療危機 対処には人々の参加こそ不可欠

ATTACフランス

新型コロナウィルスの全世界的流行が、現在の政治・経済・社会システムの重大な欠陥を照らし出すと共に、反資本主義左翼にもさまざまな討論課題を投げかけている。その一つの参照素材として以下にATTACフランスの声明を紹介する。日本でATTACの活動を行っている方々が翻訳したものであり「ATTAC関西グループのブログ」から転載した。(「かけはし」編集部)

 三月一七日、人々の自宅隔離がついにフランスでも始まった。
ここ数週間において、中国とイタリアの例が示したのは、これが流行に対処する唯一の可能な方法であることだ。この自宅隔離は、前保健大臣の声明を考えると、予期されるべきことではあった。ここに記す文章は、病気の拡散を封じ込めることが緊急に必要な現時点で、とられた措置の功罪を論じるためではなく、現時点までの経緯が、ひとたび危機が過ぎ去った際にくまなく明らかになるよう、この日付を確認しておくために書かれた。しかしながら、「無責任な人々」を罪悪視する言説には何の根拠もないし、その一方で政府による発信は少なくとも混乱し、矛盾していた。このパンデミックは、長年にわたる財政緊縮により公立病院が弱体化した時期に突発した。公立病院はますます収益性基準に従って、企業として運営されているからである。エマニュエル・マクロンが政権の座に就いたことで、この方向性はますます増幅されていた。

医療緊急事態に直面して、指導的レベルでの連帯を


緊急措置が講じられている現在、われわれは連帯を組織しなければならない。なによりもまず、ウイルスとの闘いの最前線に立つ人々(介護者と全医療労働者)との連帯が組織されなければならない。しかし同時に、食料へのアクセス維持を可能にする商業・食品・農業分野の労働者や、もっとも脅威にさらされている人々、なによりも高齢者や病気を抱えた人々との連帯が必要である。彼らを医療システムのリソース不足によって犠牲にすることがあってはならない。
また、すぐに被害を受け、自宅隔離できる手段を持っているとは限らないのは、もっとも弱い人々、つまりホームレス・囚人・移民(とりわけ移民収容所にいる移民)である。

 医療危機はわれわれの社会にすでにある不平等を強化するだけだということを忘れないでおこう。誰もが打撃を受けるにしても、特定の層はより危険にさらされる。したがって、われわれ自身を守らなければならないだけではない。われわれが、とりわけもっとも弱い人々にウイルスを拡散することによって、潜在的な脅威になっていることを自覚しなければならない。
危機に対処するにあたっては、女性が最前線に立たされている。医療・清掃・介護などの絶対に必要な分野は大半が女性で占められているうえに、女性は家事労働のほとんどでも責任を負っている。しかも、それが自宅隔離期間中に急激に大きくなるのは必至である。
われわれはまだパンデミックの入り口にいる。予測では、ウイルスの拡大がますます加速するとのことだ。その原因と見通しを理解することは、われわれ全員を見舞っているこの現実と直面するために、民主性の観点から必要なことである。フィリップ・サンソネッティ教授がコレージュドフランスでおこなったテレビ会議のように、多くのリソースが存在している。われわれはATTACのサイトで、コロナウイルスとその影響についてのいくつかのテキストを集め始めている。
公立病院を守るために一年前から闘ってきた病院関係者グループをはじめとする介護関係者が言うように、自宅にとどまれ! 解決策のうち第一のものは、安全指針をしっかり遵守して、可能な限り移動や面会を避けることだ。絶対に必要だとはいえない行動は、すべて禁止されなければならない。というのは、無症状の感染者も多いとはいえ、感染者の二〇%に重篤化する可能性があるからである。重症で長期にわたる治療を必要とする患者の増加や、ICUの忙殺状態(それはいずれは倫理的問題を引き起こす)ゆえに、病院と医療システムは大きな緊張状態にある。

沈黙しないで行動を


今日われわれ各人が自宅隔離状態にあるとしても、それは協同行動と連帯の意思表示が終わったことを意味するものではない。それどころか、連帯が不可欠な要素となっていく時期に入っているのだ。集合住宅・近隣地区・村の中での連帯―移動を抑えるための協同物資調達を組織すること、もっとも緊急なニーズに応えること。絶対に必要な労働についている賃金労働者との連帯―保育支援を国がやらない場合に組織すること。孤立した人々との連帯―電話連絡を維持すること。自宅隔離期間中に増加しかねないドメスティック・バイオレンスへの極度の警戒。もっとも貧しい人々との財政的連帯……。われわれの連帯は、自宅のベランダや壁に横断幕やプラカードを掲げたり、医療労働者を支えるために毎晩窓から声を上げたりすることで表現することができる。
政府が表明した四五〇億ユーロのうち、もっとも大きな部分が企業支援に割り当てられている。小企業が経済危機に呑み込まれないようにすることが必要であるとはいえ、医療システムの壊滅的状況を是正することが最優先である。政府は医療危機への対策資金として二〇億ユーロの財源を用意すると表明しているが、この金額は、病気休暇に関わる負担も病院のニーズへの直接的支援も一緒くたにしたものだ。病院のニーズに対する支出は、保障され、明確に表明され、具体的な金額で示されなければならない。
エマニュエル・マクロンは、三月一六日の演説の中で、戦争ということに何度も言及した。しかし、誰に対する戦争なのか? 総動員ということなら、われわれの導きとなるべきは、この不適切で戦闘的な想念に表れている軍隊調の好戦的な価値観とは逆に、連帯と(医療や物品にアクセスする際の)平等という価値観である。
この危機を利用して権威主義的な性格を加速させようとする権力のいかなる試みにも、われわれは警戒心を持つだろう。この試練の中で未来が書かれつつあることを、ナオミ・クラインはわれわれに思い起こさせる。「危機によって試されているときは、われわれが後退し、崩壊してしまうか、それともわれわれが成長して、それまではできるとは思っていなかった強さと共感とを蓄えているかのどちらかである」。
戦闘的な想念は国同士の対抗の芽をはらんでいるが、それとは反対に、COVID―19危機はわれわれに国際連帯とさまざまな国のあいだでの連携を呼び起こす。

社会的・医療的緊急事態は、即時の対応を求めている


状況の深刻さは、病院のための緊急計画を必要とする。その計画は、何カ月も闘ってきたスタッフの要求にもとづいて作られなければならない。それには以下のことが含まれる。
スタッフの採用、病床の再開(救急で1万床、EHPAD<要介護高齢者滞在施設>で4万床)、効果のある防護服の系統的提供、診断リソースの提供、年齢や法的身分に関係なくすべての感染者に提供される治療、(人工呼吸器などの)大型治療器具の購入、一〇年にわたる新自由主義政策のもとで蓄積された(80億~100億ユーロもの)病院債務の帳消し。

われわれの健康は彼らの利益よりも価値がある

 この危機的状況の中で、何千人もの労働者が(アマゾンの倉庫、造船所、エアバス工場などで)不必要なものを生産し続けることは受け入れられない。医療危機の時期において公共の利益に属さない部門で働いている労働者にまで、自宅隔離措置を拡大すべきである。それらの事業所を一時的に閉鎖し、ただし、賃金支払いの継続と解雇の禁止は保証しなければならない。さらに、多くの不安定労働者、フリーランス、個人事業主もまた、とりわけ市民団体や文化事業の部門において、危険にさらされている。(大学食堂のような)安価な消費手段を奪われている学生も同様である。
こうした人々に対して、政府は代替所得を保障しなければならない。そこには、保育を女性のみの負担にしないこと、病気休暇は完全に有給であることを保証する意味もある。
政府が冬季休戦を延長しているにもかかわらず、いまでも多くの人々が路上で眠っている。こうした人々を迎え入れるために、空き家の徴発が緊急に実行されなければならない。
エマニュエル・マクロンは、立法プロセスの一時停止つまり年金改革の一時停止、および失業保険改革の実施見合わせを発表した。経済危機であろうとなかろうと、これらの法案は必要な保護と社会的保証を提供することができないと十二分に立証されている以上、この一時停止を撤回へとつなげなければならない。

社会的・エコロジー的危機に終止符を打つために


エマニュエル・マクロンが発表したばかりの措置は、政治的選択が必ずしも経済決定主義に従う必要はないことの証拠である。自由ヨーロッパによる緊縮措置と厳命は、このような状況のもとではもはや、いかなる価値も有しない。この事実は確実に、われわれにとって教訓である。ノー、新自由主義グローバリゼーションは不可避ではない。イエス、人々は断固とした政治的介入を通じて、自分たちの経済の今後のあり方へのコントロールを取り戻すことができる。イエス、できるだけ多くの人の社会的・環境的・医療的ニーズを満たすために、経済を再編成することは可能である。この事実はまた、われわれが生産と輸送を削減すれば、温室効果ガスを削減できることも示している。そして、われわれが今、何十年間もわれわれにのしかかってきた競争力だの競争だのの要求の一切に逆らって生きることを学びつつあることも。
そうしたことが今日、緊急の状況において、事前の計画なしに起こっているわけだが、もっとも有害で不必要な生産活動を標的とする別の経済的・社会的展望が開かれれば、気候変動と有効に闘うことが可能になるだろう。
同様に、ブルーノ・ル・メール〔経済大臣〕は、フランスの多国籍企業を守るための国有化の可能性を示唆しているが、製薬産業やエネルギー産業のような特定の主要産業部門を市場原理から解き放ち、社会のためのものとするのに必要なのは、それらの産業部門の社会化である。
今回の医療危機は諸国家の権威主義的行動や、企業による従業員からの搾取強化を促すかもしれない。しかし、それはまた、社会の中での新たな行動の仕方を作り上げ、協同組織の編成をもたらすことで、われわれの消費方法を変革し、われわれの事業活動の国内への再移転のきっかけとなる可能性もある。
医療災厄や気候災厄への対処は、人々の参加なしにはありえないだろう!

The KAKEHASHI

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