2021年度政府予算案を批判する

かけはし 第2651号 2021年2月1日

貧困加速・戦争への道止めよう
労働者・市民の生活破壊促進
「コロナ対策」は後追いだ

補正予算組み入れ手法

 菅義偉政権は、2020年12月21日、2021年度政府予算案を閣議決定した。一般会計の総額は106兆6097億円で9年連続で過去最大を更新した。新型コロナウイルス感染拡大にもかかわらず民衆生活、社会保障、医療、中小企業に対して十分な予算を計上することもなく、軍拡と原発推進をはじめ大資本、ゼネコン、各界利権業者のための手厚い予算案を作り上げた。
 同時に12月8日に決定した「追加経済対策」のうえで2020年度第3次補正予算案は、21年度政府予算案の膨らみを少しでも圧縮したようにみせかけるために次年度予算の事業を補正予算に前倒し計上する手法を9年連続で強行した。要するに政府は新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受ける景気を下支えすると称して、当初予算案に組み入れると巨額な予算案になるから強引に補正予算に無駄遣い予算を組み込んだ。
 深刻なコロナ危機に陥っているにもかかわらず、資本のために「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」に向けて当初予算に組み入れることを避けた「国土強靭化」関連、治安弾圧と民衆管理のためのデジタル庁と情報関連、マイナンバーカード拡大、感染拡大のGoToトラベル 、緊急性がない脱炭素社会基金、大学の研究開発支援ファンドの創設、カーボンニュートラルなどを詰め込んだため15 兆 4271億円におよぶ補正予算を作り上げた。21年度政府予算案と合わせると121兆円以上に達し、民衆のためとはほど遠い超大型予算案だ。
 それだけではない。国会のチェックなしで政府の裁量で勝手に使える予備費5000億円を確保したうえで、さらに新型コロナ感染症対策予備費として5兆円を計上した。21年度政府予算案と第3次補正予算案のトリッキーな編成からわかるように予備費が民衆のために適格に使われるとは考えられない。すでに菅政権はコロナ感染拡大に対する後追い対応を繰り返しているが、当然、危機管理予測による感染拡大を前提にした様々なシミュレーションを構築してこなかったのであり、医療機関の強化、処遇改善の引き上げによる医療・介護人材確保などに向けた集中した予算作りを軽視してきたことを証明している。

命と暮らしには無縁

 コロナ危機下であるからこそ無駄な予算計上は許されない。命と生活をまもるための大規模な財政出動も必要だ。だが菅政権は、真逆な予算編成を行っているのだ。以下、主な予算編成についてチェックしていく。
そもそも歳入は、57兆4
500億円程度であり、税収が当初の見通しより6兆700億円程度減収している。そうであるからこそ無駄づかい予算を削減し、民衆のための予算配分が必要なのだ。だが、またしても安易な国債の大量発行に頼ることを選択した。慢性的な財政破綻に対して危機感が麻痺している。赤字国債を約37兆円、建設国債を約6兆円、計43兆円以上の新規国債を発行する。歳入に占める国債の割合(公債依存度)は40・9%であり、「借金漬け予算」そのものだ。
政策経費を税収などでどれだけ賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字規模は、20兆3617億円に達している。かつて政府は25年度にPBを黒字化させるなどと言っていたが、完璧に投げ捨ててしまった。同時に日銀による大量の国債買い入れ、金余り状況による投機への流れによって経済が停滞しているにもかかわらず株高による資産バブルを発生させている。ますます貧困層と富裕層の構造的格差の広がりを意識的に放置していると言わざるをえない。
すでに国だけの長期債務残高は21年度末に1019兆円に積み上がっている。国と地方の長期債務残高は1209兆円に達してしまう。民衆一人あたりの借金は、960万円だ。予算の地方交付税は17兆4000億円だが、地方交付税総額及び地方一般財源を地方の債務である臨時財政対策債(5兆5000億円)の大量増発によって繕い、地方財政に巨額な負担を強要するものでしかない。コロナ危機に対処することで地方財政は危機的に追い込まれており、手厚い地方交付金を配分すべきなのだ。
民衆生活に直接関わる社会保障費は、新自由主義政策にもとづいて医療、年金、介護支出の抑制、不十分な幼児教育・保育、教育政策を柱に35兆8421億円となった。自然増を3500億円程度に抑えたと自慢しているが、介護報酬の0・7%のプラス改定、毎年薬価改定による薬価の引き下げ、後期高齢者医療制度の保険料特例の見直しなどにより、約1300億円分を抑制した。そのツケは民衆への押し付けだ。
全世代型社会保障の実態は、消費税増税のままで年金支給の「マクロ経済スライド」(賃金や物価による年金額の改定率調整)による削減、介護、医療費の高額負担など「世代間の負担の公平」と称してカネ収奪政策の強化でしかない。
社会保障費は、民衆への公共サービスを含む生活支援の充実した内容にしていくのは当然だ。資本と与党、共犯関係にあるエコノミストらは社会保障費削減・抑制を繰り返すが、自らの延命と保身のための民衆への犠牲転嫁を許してはならない。
厚労省は、1月15日、新型コロナ感染症による解雇、雇い止めが8万205
0人に達していることを明らかにした。その上緊急事態発令による飲食業などの休業によってさらに増加する可能性がある。この数値は、労働局やハローワークが掌握しているものにすぎず、もっと多いとされる。だが、 菅政権は、新型コロナ感染症拡大によって雇用悪化の事態が当然、予想されていたはずたが、あらためて従来の姿勢のままで予算を作り上げていたことが示された。
とりわけ中小企業に対する持続化給付金、有期雇用など不安定な雇用形態、フリーランスなどに対する直接的な充実した支援策を後景化させ、逆に中小企業のリストラ、業態転換のための「事業再構築補助金」を新設した。つまり、予算編成時の「中小企業向けの補助金は(適用)対象を絞り込むべきだ」(財務省幹部)、「支援が常態化すれば新陳代謝が阻害される」(経済官庁幹部)〈東京新聞/12・22〉という本音を貫徹したのである。
さらに新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言再発令(1・8)によって雇用危機は深刻な状態に陥っている。そうであるからこそ雇用調整助成金、住居確保給付金、時短営業飲食店支援と関連企業支援、緊急小口資金・総合支援資金の特例貸し付けなど場当たり的な対応ではなく期間を設定せず、支援金の増額とすみやかな支給が必要なのはあたりまえだ。少額であるが、いまだに支給さえも未定のままであり、飲食業などは家賃を払えず次々と廃業に追い込まれている。

必要なところに回らない

 とりわけ以下は、予算増額が強く求められている主なものだ。
厚労省は、待機児童数1万2439人(20・4)と発表しているが、いまだに待機児童の解消に向けた予算配分を行っていない。子ども・子育て支援新制度の着実な実施は、1兆9120億円 を計上した。だが「新子育て安心プラン」に基づく保育の受け皿整備は、 602億円 で前年度(767億円)より減額してしまった。保育人材確保のための総合的な対策は、 191億円 でほぼ前年度よりも1億円しか増額していない。保育士の処遇改善、幼児教育・保育の無償化等を引き続き実施すると言っているが、充実した予算配分をしていないため保育士の保育所離れを加速するだけだ。政府は、待機児童ゼロの実現を言ってきたが、予算計上から明らかなように真面目にやろうとしていないのが実態だ。
文部科学省の予算案は5兆 2980億円で文教関係予算は 4 兆216 億円(前年度より 87 億円減)だ。公立小学校の学級編制基準を一律35人に引き下げ、教職員定数の改善総数は1141人とした。だが、教職員定数の合理化減や加配振替分は3615人であり、実質の教職員数は減少となり、長時間過密労働の継続強要でしかない。35人学級の実現のために教職員の大幅増員が必要だ。
このように教職員増員予算を抑制しながら内閣府と文部科学省は、新型コロナウイルス対応と称して最大10兆円規模の大学ファンド創設を予算に盛り込んでいる。学術研究・基礎研究の分野に大胆な投資などと言っているが、政府・資本のための軍事・科学研究開発のためのファンドだ。学術会議への権力介入にみられるように先取り的に統制下に組み入れ、大学再編を加速させていく狙いだ。戦争のための大学ファンド創設を許してはならない。こんな無駄遣いをせずコロナ対策、医療強化のために予算組み換えを行え。
東日本大震災復興特別会計(復興特会)は、前年度55%減の9318億円を計上した。減額理由は、インフラ整備、大規模事業を計画通り完了するからとしている。だが前年比で8割以上の大幅減の本音は、被災者の自助努力の強要だ。災害復旧事業費(3割減)、コミュニティー支援(42億円)などの減額によって被災者の生活再建への不安を追い詰めていくことになる。被災地軽視予算はやめろ!
さらに政府は福島第1原発で出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を前提に風評払拭・リスクコミュニケーション強化対策費に20億円を計上している。海洋放出は、反対が強く21年に持ち越したが、すでに海洋放出に向けて対策費を予算に組み入れているのだ。被災民衆に敵対する予算案に反対していこう。
無駄な予算は、以下の通りだ。

軍拡・原発に固執


政府は、来年9月のデジ
タル庁創設に向けて368億円を計上し、連動して総務省はマイナンバーカード普及のためと称して1001億円を計上した。しかも資本のためにデジタル化を促進するための投資減税(110億円)、研究開発減税(240億円)まで組み込んでいる。政府は、「新型コロナウイルス禍のような緊急時に迅速に給付金を支給できるようマイナンバーの活用が必要だ」と言っているが、いずれも民衆治安管理の高度化をめざしたものであり、人権破壊そのものでしかない。
すでにチェックしてきたように後追い的にしかコロナ対策ができていなにもかかわらず、わざわざ「速やかに給付金を支給」のためとミエミエのウソを言い出している。こんな不真面目な態度を許さず、デジタル庁創設などの予算はすべてコロナ対策、命と生活を守るための予算に組み換えろ!
公共事業関係費は、20年度当初比11・5%減の6兆695億円としているが、国土強靱化費用を3次補正予算案に前倒し計上したから26億円も増加しているのが実態だ。国交省予算だけでも5兆2587億円と突出している。
その大きな柱は、従来通りの環境破壊・ゼネコンのための大規模開発工事だ。大都市圏環状道路と高速道路建設、物流ネットワーク羽田空港や成田空港など首都圏空港機能拡大などに巨額な予算を計上した。コロナ禍によって航空会社、空港会社は経営危機に陥っている。とりわけ成田空港会社は、航空会社危機によって赤字に追い込まれているにもかかわらず第三滑走路建設(4000億円)に向けて押し進めている。金儲け主義を優先し、あいかわらずの環境・人権無視に貫かれている。空港関連費はすべてゼロベースに組み直すべきだ。
原発・エネルギー関連予算は、原子力技術開発支援(12億円)、原子力産業基盤強化(12・5億円)、新型炉開発(56億円で前年度より7億円増額)、原発立地自治体買収費である電源立地地域対策交付金(754億円)など次々と原発推進に向けて予算を配分した。
菅政権は、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロと言っているが、石炭火力発電開発に161・5億円も予算計上した。いずれもコロナ危機に便乗し、ポストコロナに向けて成長戦略の柱など言って居直っている。地球破壊・人権侵害に満ちた原発再稼働・推進、インチキ脱炭素政策のウソを暴きだし、エコロジー社会主義に向けた環境・人権運動を強化していかなければならない。
無駄予算の象徴が東京五輪・パラリンピック予算だ。コロナ禍の真っ只中、各世論調査結果をはじめ民衆は、早く東京五輪・パラリンピックの中止を決断し、コロナ対策に東京五輪・パラリンピック費用をまわせという要求が高まっている。このような民衆の切実な訴えに敵対するように東京五輪・パラリンピック関連予算は、約3959億円となった。大会延期や諸費用など総額1兆6440億円と膨らんでいる。コロナ対策費、感染症対策なども含めると総額3兆円を超えると報道されている。警察権力は、東京五輪に便乗してテロの未然防止などとデッチ上げて警視庁の警戒警備費223億円の事業費を計上した。
「コロナに打ち勝って東京五輪を開催する」などと言っていられないデッドロック状態に追い込まれているのが菅政権だ。コロナ対応で医療崩壊に陥っているのに東京五輪・パラリンピック医療対策に医療関係人員をシフトせよと言うのか!民衆に敵対する政権は、早く打倒しなければならない。東京五輪・パラリンピック予算は計上せず、コロナ対策、命と生活をまもるための予算に投入せよ。
軍事費は5兆3235億円を計上し、7年連続で過去最大だ。しかも3次補正予算の軍事関連費を加えれば実質5兆7289億円の額に膨らんでいる。
軍事予算の大きな無駄遣いは、こうだ。航空自衛隊F2戦闘機の次期戦闘機の開発費が576億円、12式地対艦誘導弾(SSM)開発に335億円、イージス・システム搭載艦建造に向けた調査費17億円の巨額予算を投じる。さらに米軍と共同しておこなう宇宙監視や弾道ミサイル防衛、宇宙・サイバー・電磁波領域の増強、「かが」の“空母化”など敵基地攻撃能力のレベルアップをともなうグローバル派兵国家化に向けた戦争予算だ。
しかも米国有償軍事援助(FMS)のローン支払も入っている。在日米軍駐留費、辺野古新基地建設も含む米軍再編関係経費は、2187億円を計上している。日米安保粉砕!戦争予算は廃止だ!

民衆生活に予算を回せ

 麻生太郎財務相は、緊急性があるコロナ対応による医療機関減収に対する補填やPCR検査の全国拡充と無料化を否定するコロナ対策軽視、不十分な持続化給付金・家賃支援給付・雇用調整助成金の早期打ち切りなど民衆生活破壊予算をデッチ上げながら「感染防止、経済再生、財政健全化のバランスを取ることが最も難しい予算編成だった」、「中長期課題を見据え着実に対応を進めていくための予算だ」と平然と言う始末だ。いったいどこが「感染拡大防止と社会経済活動の両立」なのか。こんなパフォーマンスに対して「菅カラー演出腐心」(毎日新聞/12・22)と揶揄される有様だ。
まったく民衆のギリギリの生活状況を直視しない麻生は、「定額給付金」の再支給について「国民に一律10万円の支給をするつもりはない」(1・19)と断言、しかも生活危機に追い込まれている世帯に限定した追加の給付措置は可能かという記者の質問に対してさえも「考えにくい」と突っぱねた。民衆は、麻生の居直りに対して怒りを沸騰させている。民衆生活を破壊する21年度政府予算案、2020年度第3次補正予算案を厳しくチェックし、民衆のための予算案に組み換えさせなければならない。    (遠山裕樹)

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