菅政権に政治を委ねられない

かけはし 第2652号 2021年2月8日

労働者・市民の批判と行動強めよう
「新しい政治と社会」をめざそう
「もう一つの世界」を作るとき

混迷を深める菅政権

 1月8日、2回目の緊急事態宣言が発せられた(2月7日まで)。しかし昨年4~5月の1回目とは違って、「正常化(楽観)バイアス」(「自分だけは大丈夫」と思ってしまう現象)の蔓延によって、新型コロナウイルス感染の鎮静効果は十分に出ているとは言えない。政府は宣言解除の目安を「東京での感染者数が1日500人以下」としているが、ひっ迫する医療現場からは「宣言期間延長」の声が上がっている。また一方では、統計学研究者から「2月7日まで対策が緩まなければ、同日の東京の新規感染者は154人になる」という推計も出されている(朝日新聞)。
 1月18日から始まった国会では、感染症法改定案と特措法改正案に関連して、刑事罰の適用と行政罰としての過料額をめぐって論戦が交わされた。特に刑事罰の導入には、与野党協議だけでなく、日本医学会連合や全国保険所長会をはじめ、諸方面から数多くの反対意見が噴出した。「これまでの逮捕は偽計業務妨害の1件だけ」「脅しで住民との信頼関係は作れない」「入院できない人への支援の方が大事」「差別や偏見が問題となったハンセン病への反省がない」など、菅政権の民衆弾圧的なコロナ政策への批判の声があがった。
 こうした世論の反発から、国会では「刑事罰の撤回と過料額の削減」ということになったが、「コロナ対策で締め付ければ、さらに内閣支持率が低下する」と考えてきた菅義偉首相にとっては、野党からの妥協案は間違いなく「助け舟」となっただろう。「経済の菅」として、ブレーキは極力踏みたくないというのが菅義偉の本音だ。今回の「刑事罰と過料」に踏み込んだ背景には、全国知事会からの猛烈なプレッシャーがあったからだった。

政権支持率の急落


 しかしコロナ対策に対する不信による内閣支持率の低下は顕著である。菅政権発足当初の内閣支持率は64%であったが、発足から4か月後(1月中旬)には33%にまで急落した(毎日新聞)。
 「菅政権では次の選挙は戦えない」という声が自民党内から上がっている。しかし安倍がコロナで火だるまになる前に「仮病」で政権から逃げ出したように、現在のまったく見通しの立たないコロナウイルス感染事態の中で、首相をやりたいと思う自民党の幹部は皆無だろう。そうした意味で「貧乏くじ」だったからこそ「菅義偉が引けた」のである。コロナ危機は、2011年の東日本大震災と福島原発事故以上に困難なものなのかもしれない。その困難は全国的で、全世界的だからだ。
 菅義偉が頭の中で思い浮かべている政治スケジュールは、ざっとこんな感じなのではないだろうか。東京オリ・パラをどうするのかは、タイムリミットのぎりぎりまで引き延ばす。国内でのスポーツや娯楽イベントへの観客動員を通した「人体実験」を続ける。3月からのワクチン接種を進めながら、春(4~5月)の感染終息を期待する。最終的にどのような形になるのかは未定とした上で、東京オリ・パラの開催実施を宣言する。そしてGoToトラベル・イートを再開する。支持率回復で7月の都議選に勝利する。東京オリ・パラの実施。秋風が吹く前に解散・総選挙。総選挙に勝利して、自民党総裁と首相続投。
 菅義偉は「博打」に打って出ているということだ。すべてが「コロナ次第」である。そうなると「リミットは5月」ということになるだろう。5月までにコロナの国内終息が達成できなければ、東京オリ・パラもGoToトラベルもすべてが消滅するだろうし、菅政権も消滅するということになるだろう。自民党はコロナ蔓延状況のなかで、誰を「頭」にして都議選と総選挙に向かうのか。「鬼」の河野太郎で突破できるのだろうか。
 しかし、その逆も十分にありうるのだ。1月上旬に実施された世論調査(共同通信)によると、東京オリ・パラは「開催すべき」が14・1%、「中止すべき」が35・3%、「再延期すべき」が44・8%だった。しかしこれで「五輪はなしか」と想像するのは早合点だ。1月上旬といえば、東京2000越えの「衝撃」が走った時であり、国内のコロナ感染拡大が下火になり、ワクチン接種が広まれば世論は手のひらを返したようにコロリと変わるだろう。どんな形になるのかは分からないが、「五輪は開催できるのではないか」という空気が一気に広がるだろう。だが崩壊と壊滅の危機の中にある医療現場は、ころころと変わる世論に振り回されるわけにはいかない。

オリ・パラ中止せよ

 東京オリ・パラは当初、ボランティアを含めて1万人を超える医療スタッフが必要とされてきた。コロナ患者に対応してきた東京都の医師は、「今の状況で大会に振り分けるのはご法度。行くというものはいない」「無観客でも大勢の関係者(1万人以上)に対応するのも簡単ではない」(毎日新聞)と話している。
日本の医療現場は人口1千人当たりのベッド数では13・0と世界で断トツなのだが、医師は2・5人(OECD平均は3・5人)と不足している。看護師は11・3人なのだが、ベッド数に対して看護師数が少ない。ちなみにドイツではベッド数8・0に対して医師4・3人、看護師12・9人であり、英国ではベッド数2・5に対して医師3・0人、看護師7・8人だ。また急性期病棟を持つ全国4255医療機関(3分の2が民間)で、コロナ患者の受け入れが可能だとしているのは1707機関で、その内訳は民間が21%、公的が83%、公立が71%だった。コロナウイルスのような感染予防医療にとって公・公立病院がどれだけ重要なのかがわかる。医師と看護師の増員(特に集中治療や感染症専門医)と、公・公立病院の増設と充実が求められている。
7月4日投開票の東京都議選に向けて、小池東京都知事が推し進める都立病院の独立法人化による切り捨て政策に反対して、「切り捨て反対」の候補に投票しよう。
全国で実施されるワクチン接種と並行させて、公費による無料のPCR検査を実施するように政府と各自治体に要求しよう。
菅政権はスポーツや娯楽イベントへの「人体実験」的な観客動員を中止しろ。命と人権無視の東京オリ・パラをただちに中止しろ。生活困窮者と家庭に対してひとり当たり一律10万円の緊急支援をただちに実施しろ。

根本的なシステム転換


ワクチン接種に絡めて、「マイナンバーカード」の普及拡大がもくろまれている。菅政権が推し進めようとしている「デジタル社会の実現」は、中国を「モデル」としているもので、その実現のための媒体は個々人が所有する「スマホ」である。まさに「どさくさ紛れ」なのだ。ワクチンの接種にあたり各自治体は、LINEアプリを使った予約システムの導入を決定したり、検討したりしている。また併せて、AIによる自動電話予約も受け付けるという。
そもそも「デジタル社会」なるものが本当に必要なのだろうか。「誰が、誰のために、何のために」必要だとしているのだろうか。「人も物もカネも一元的に管理する社会」とは、いったい誰が求めているのだろうか。宣伝広告や値引きに操られた「無駄な消費」と「資源・電力の浪費」をやめにしよう。「自由」を守るためにデジタル化社会反対の声を上げよう。
グレタさんも厳しく批判しているように、現在世界中で堰を切るように打ち出されている「脱炭素化」は、まったくのでまかせである。現在の総エネルギー消費量を維持・拡大する経済成長ありきの「脱炭素化」などあり得ないし「絵に描いた餅」に他ならないからだ。また戦争のために武器を売り買いする社会は、絶対に「脱炭素化」を実現することはできない。経済的に貧しい国の人たちが、人間らしい幸福な生活をするために経済成長する権利を保証しながら、一人当たりのエネルギー大量消費国では、総消費エネルギーを半分以下にまで下げなければならないだろう。そして戦争のない世界を実現しなければならない。
拡大再生産という無駄(核兵器と原発はそれを最も象徴している)と、戦争という破壊を止められない社会は、脱炭素社会を実現することは絶対にできない。すなわち資本主義社会では絶対に実現できないということである。それは、そうすることができない社会システムだからだ。世界的に計画された持続可能で平和で平等な社会を実現するための闘いと、「脱炭素社会の実現」はまさに一体的な闘いなのである。
奴らの言う「巨大洋上風力発電」と「水素製造」、「EV車と水素車」にだまされるな。エコ社会主義のために共に闘おう。(高松竜二)

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