【歴史資料】釣魚台(「尖閣列島」)に対する社会党・共産党の排外主義を批判する(「世界革命」1972年4月21日号)
以下に紹介するのは「世界革命」269号(1972年4月21日)に掲載された論文です。当時の立場は、「革命」中国に対して日本の労働者民衆は「祖国敗北主義」をとるべきである、というものです。
今日、この論文を掲載するにあたっては、現在も私たちが中国を「歪曲された労働者国家」と見なしているのかどうか、ということにも言及する必要があるのではないかと思います。組織的に統一された見解ではありませんが、私は、現在の中国を私は労働者国家と見なしていません。いつから労働者国家ではなくなったのかという点については、1989年6月4日の「天安門事件」で「労働者国家に値しないことが明らかになった」と考えています。
現在の中国は資本主義国家なのかというと、その通りで、日本の高度成長期に比べると、様々な条件から「歪んだ開発主義国家」なのではないか、と考えています。歪んでない開発主義国家はあり得ませんが、中国の場合は国がでかいので、様々な矛盾が大きく表れるというニュアンスを含んでいます。
資本主義であれば資本はいずれ利潤を求めてより弱い国へ進出するのは必然であり、中国資本が進出した地域の労働者にとっては、「革命」中国どころか、一種の「帝国主義」に映るのかもしれません。中国国内の少数民族からみればすでに「中華帝国主義」だともいえるのではないでしょうか。この議論は今後も継続していきたいと思います。
(Y)
「世界革命」第269号1972年4月21日
釣魚台(「尖閣列島」)に対する社会党・共産党の排外主義を批判する
沖縄「返還」協定粉砕、自衛隊沖縄派兵阻止、四次防粉砕、春闘勝利の闘いをすすめるなかで、日本帝国主義の釣魚台(「尖閣列島」)領有にたいしてわれわれがいかなる態度に立つべきかは「世界革命」第267号において原則的にしめした。しかしここでは他の諸党派の立場について充分にたちいって論ずることができなかった。
釣魚台にたいする態度は、釣魚台が現在のアジア情勢の焦点のひとつとして問題となり、かつまた領土にかかわる問題であるがゆえにそれぞれの諸党派の階級的本質を端的に示すものである。それゆえ、釣魚台問題は単にわれわれが自己の主張的態度を提示し、闘争スローガンに掲げるだけでは不充分であり、この問題をめぐって激しい党派闘争を展開することが、われわれをして全人民の多数派の獲得への道をきりひらくものであるといわねばならない。
(1)
社会党・共産党は3月30日にそれぞれ「尖閣列島」は日本の領土であるという見解を決定し、発表した。両党の主張はその論理構成と政治的立場において本質的に同一である。いまここでは共産党の見解を追ってみよう。彼らの見解は次の如くである。
「尖閣列島の領有という点では1895年(明治28年)1月に日本政府が釣魚島・久場島を沖縄県の所轄とすることをきめ、翌95年4月に尖閣列島を八重山郡に編入して、国有地に指定した。歴史的には、この措置が尖閣列島にたいする最初の領有行為であり、それ以後日本の実効的支配がつづいてきた。これが、国際法上『先占』にもとづく取得および実効的支配とされているもので、1970年までの75年間、外国からこれに異議が公式にだされたことはない。」という基本的案決定をなして、その後の歴史的経過として、
1、「尖閣列島」に日本の開拓労働者が派遣されていた。
2、日清戦争においても「尖閣列島」の帰属問題はとりあげられていない。
3、太平洋戦争の敗戦において日本の侵略した領土の返還がなされたが、「尖閣列島」はそのなかにはいっていない。
4、敗戦後は「尖閣列島」は沖縄の一部としてアメリカ帝国主義の支配下におかれた。
以上の諸点をあげて「尖閣列島」は日本の領土であることは争う余地がなく明瞭であり、中国や蒋介石の主張には根拠がない。したがって、「共産党は「尖閣列島」の日本帰属を認め、「われわれは、久場、大正両島の米軍射爆場を撤去させ、尖閣列島が平和な島となることを要求する。」(以上引用は「赤旗」3月31日号より)
日本共産党がまとめあげた釣魚台の「日本領土」論の根拠は他のいかなる党派のみならず、日本帝国主義とその政府をもふくめてもっとも完璧なものであろう。共産党の能力はかくて見事に極東帝国主義に「帰属」していることをしめしたといえよう。
(2)
われわれはこの共産党(社会党も)の見解にたいして何を対置しなければならないか。
中核派は釣魚台が中国大陸の大陸棚の先端に位置しているのであるからこの列島は「中国固有の領土」であると主張している。共産党は中核派の見解を意識して次のようにいっている。
「尖閣列島が、いわゆる『中国の大陸棚』の先端に位置することを「中国領」の論拠の一つにする向きもあるが、水深200メートルを基準としたいわゆる『大陸棚』論は、海底資源にかんする説であって、海上の島の領有とは別問題である」
いまや中核派は論拠ぬきで「中国領土・釣魚台」といい、これを日帝が略奪するのであるからまさにアジア侵略であるというキャンペーンを展開している。
中核派の「釣魚台・中国領土」論と共産党の「尖閣列島・日本領土」論は同じ一国主義の対極をなすものにすぎずこの対立の次元ではわれわれは正しい原則に到達することは不可能である。われわれは中核派の立場と共産党の立場(=社会党の立場)とを客観主義的に対置してどちらも駄目だといっているのではない。
われわれは中核派の日帝の釣魚台略奪阻止の立場を支持し、共に闘う立場に立つのである。しかしこのことは自動的にわれわれが中核派の「釣魚台の中国固有領土」論に組するものではない。われわれは釣魚台の日帝略奪阻止闘争をより徹底的におしすすめるために中核派が原則的立場に徹底してたちきることを要求するものである。
そのポイントをなすものは労働者国家擁護の問題である。中核派は釣魚台を片面の政治性においてしかとらえていない。すなわち、日帝の略奪という側面においてのみ、釣魚台闘争の反帝国主義性を強調するだけである。中核派の立場から形式論理的にふえんするならば釣魚台を日帝が略奪するから問題なのであって釣魚台がどこに帰属するかは、あまり関係のないことではないのだろうか。日帝が自分のものではない島、他国の島を侵略して奪うのが釣魚台問題であるというふうにするために、釣魚台を中国の領土に「帰属」させたのではないだろうか。
それゆえに、「中国領土」論の立証は没階級的であって、自然的、地理的条件からその根拠を導いてきたのである。中核派は毛沢東や蒋介石が「釣魚台は中国の領土である」という主張を支持するのであろうか。外見は中核派が釣魚台は中国領土であるというがゆえに、中核派は毛沢東や蒋介石を支持しているようにみえるのであるが、「前進」ではいまだ中国の主張にたいしていかなる態度をとるかが明らかにではない。
われわれは釣魚台が中国大陸の大陸棚にのっかっている島であるがゆえに中国の主張を支持するのではない。われわれは釣魚台をめぐって、片方にアジアの革命的人民がおり、片方にアメリカ帝国主義と日本帝国主義がおり、そのどちらに釣魚台を帰属させるべきかが問われているのであると問題をたてるのである。労働者国家・中国はアジアの革命的人民の側にあるがゆえに労働者国家・中国の主張を支持し、日本帝国主義の主張に反対するのである。
(3)
日本共産党(そして同様に社会党)にたいする批判は彼らがあれこれとして採集してきた「事実」にたいして、われわれがまたあれこれの「事実」をみつけだして、釣魚台が中国のものか、日本のものかとやり合うことによっては決して果たされるものではないのである。
われわれの出発点は何か。
「第一に、われわれのテーゼのもっとも重要な、基本的な考えかたはなにか? それは、被抑圧民族と抑圧民族とのあいだの区別である。われわれは、第二インターナショナルやブルジョワ民主主義とは反対に、この区別を強調するものである」(レーニン コンミターン第二回大会・民族および植民地問題委員会の報告)
日本共産党はまずこの区別をしない。彼らは革命と反革命、労働者国家と帝国主義国家の対立の中に釣魚台があることを無視する。彼らは、かって釣魚台が日本のものであるがゆえに、これからも日本のものであるべきであると主張する。これは帝国主義者の立場である。
彼らにはアメリカ帝国主義、日本帝国主義と労働者国家・中国、労働者国家・ソ連との本質的な対立の関係はなく、同じ次元における対立の関係でしかとらえられない。それゆえ日本共産党は小ブルジョワ的な「反ソ、反中国」主義者と自らを区別する原則をもたない。釣魚台において彼らは日本帝国主義と社会民主主義と自らを区別する何らの原則的態度をも打ちだしていない。
前記のレーニンの引用文を被抑圧民族と労働者国家、抑圧民族と帝国主義国家との関係としてとらえることはレーニンの原則をそこなうものではないであろう。このようにいしてレーニンのつぎの立場を読めば事態はよりいっそう明確であろう。
「共産党は、ブルジョワジーの束縛を脱するためのプロレタリアートの闘争を意識的に表現するものとして、ブルジョワ民主主義とたたかい、そのうそと偽善をばくろすることを基本的任務とするものであるが、党はこの任務にかんがみ、民族問題においても、抽象的な、形式的な原則重視すべきではなくて、第一に、歴史的=具体的情勢、とりわけ経済情勢を性格に検討しなければならない。第二に、被抑圧階級、勤労者、被搾取者の利害を、国民全体の利害という、じつは支配階級の利害を意味する一般的概念からはっきりとわけなければならない。第三に、もっとも富裕なごく少数の先進資本主義国が地球上の大部分の住民を植民地・金融的に隷属させているのが金融資本と帝国主義の時代の特質であるのに、ブルジョワ民主主義的なうそがこの隷属をぼかしているのに対抗して、抑圧され従属している、平等の権利を持たない民族と、抑圧し搾取している完全な権利をもった民族とを、同じようにはっきり区別しなければならない」(レーニン・民族および植民地問題にかんするテーゼ原案)
レーニンの原則によって、日本共産党が苦心して釣魚台が日本領土であることをしめす「事実」をひとつひとつ粉砕することは可能である。しかしそれは時間の無駄というものであろう。釣魚台も世界帝国主義の地球分割競争の帰結として日本帝国主義にかって帰属した「事実」がいくつか指摘できるであろう。しかしだからといって、労働者国家・中国が釣魚台の領有を主張することが根拠のまったくないものだという日本共産党の主張はこの党がいまやプロレタリア階級闘争の原則をまったく放棄したことを証明するものにほかならない。
われわれは中核派のように、釣魚台が「中国固有の領土」であるから「日本の領土」だという日本共産党は排外主義であるという批判の仕方はプロレタリア的原則からみてはなはだズレているといわなければならない。
もちろんわれわれは日本共産党(=社会党も)が苦心のすえ、釣魚台が日本の領土であることを証明する「事実」をとりあげ、これを大衆に説明していることにたいしてわれわれはこれが完全な排外主義であり、日本帝国主義を助け日本帝国主義の走狗の役割を果たしていることを全人民の前に暴露しなければならないのである。しかし、よりいっそう重要なことはわれわれは彼らが釣魚台が「日本の領土」であると主張するならば、彼らにたいしてつぎのように要求しなければならないことである。
社会党や共産党が釣魚台が「日本の領土」であると判断するならば、日本帝国主義にたいしてその領有や帰属の権利を放棄、断念せよ、と要求すべきである。これを要求しない釣魚台の「日本領土」論は完全な帝国主義的排外主義、ブルジョア民族主義そのものであることを、われわれは全大衆にあきらかにすべきであろう。われわれにとって主要な任務は社会民主主義者やスターリン主義者の一国主義と闘争し全大衆にわれわれの原則を訴えることによって、彼らの過ちを大衆の前であきらかにすることである。
(4)
中核派が釣魚台の日帝略奪阻止を闘うとするならば、労働者国家擁護の原則とともに、「北方領土」問題にたいしても明確な態度をとるべきであろう。北方諸島にたいしては大陸棚という領土帰属の自然的・地理的条件は成立しないであろう。この場合中核派は明確に、政治的・階級的立場から、「北方領土」にたいする態度表明を要求されるのである。われわれは北方領土においても、プロレタリア国際主義、極東帝国主義への革命的敗北主義、労働者国家擁護の原則にたつのである。
日本共産党の釣魚台への態度は、千島列島を日本の領土と主張する立場からの必然的帰結である。それゆえ、釣魚台にたいする態度と北方諸島にたいする態度とはひとつのものであって、この両者について、われわれは原則を貫徹しなければならないのである。
革マル派は釣魚台について今日まで何ら明確な態度表明をもしていない。社青同解放派も同様である。われわれはこれが、彼らの政治的破産のもうひとつの確認であると判断する。この問題は沈黙することが、社会党・共産党による帝国主義的排外主義への屈服であり、客観的には彼らを力づけるものであると断定しなければならない。彼らが政治的党派であると自覚するならば、全人民の前に釣魚台にたいする自己の見解をあきらかにすべきである。
(1972年4月)
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