コロナ五輪災害とショックドクトリン

18歳からの衆議院選挙

リアル医療崩壊

 バイト先と自宅、スーパーにしか出かけていないのに昨夜から咳と発熱。朝になっても咳と熱がおさまらない。バイトを休み近所のクリニックを受診しようとしても「発熱外来を受診してください」と断られる。発熱外来を開設している病院に電話すると「予約でいっぱいです」と保健所に電話するように言われる。そこで保健所に電話するが何回かけても話し中でつながらない。夜になり咳も熱もますますひどくなり息も苦しくなって119番に電話。「すぐ向かいます」と言われ一安心したけれど救急車は一向に来ない。実はそのころ管内の救急車の全部が出動していた。熱中症と感染拡大で出動すると患者を搬送する先が見つからず、中には搬送まで24時間以上を要するケースも出ており、多くの人が来ない救急車を待たされていた。3時間待っても救急車は来ない。食欲もなく朝から何も口にしていない。苦しくてぼんやりした頭に、つけっぱなしのTVから五輪閉会式が聞こえてくる。「感動をありがとう」とアナウンサーが日本のメダル数を嬉しそうに話している。
 こんな三流デストピア小説のような事態がすぐそこまできています。

新規感染者4千、
5千が見慣れた社会へ

 7月31日、東京での新型コロナウイルスの新規感染者は4058人、全国でも1万2341人と過去最高を記録しました。驚くべき数字ですが、効果のない緊急事態宣言の発令だけで実質的な感染封じ込め策を全く行わず、五輪開催を強行しているのですから当然の数字とも言えます。感染のピークはいまだ見えてはいません。したがって、この原稿が掲載される8月9日ころには、4千、5千という数字が見慣れたものになっているかもしれません。

パンデミック
と医療体制

 1日に4千人を超すような新規感染者が出ると、感染経路の特定や入院調整などの機能を担う保健所が機能不全になります。病院のほうもコロナ病床が一杯になり新規の患者を受け入れることができなくなります。7月31日現在、東京都のホームページによると、検査の陽性率が19・5%。検査人数は移動平均で1万877・3人、検査が圧倒的に足りていません。どこで感染したのかわからない「新規陽性者における接触歴等不明者」が1週間の移動平均で1921人、増加率228・5%。自宅療養を強制されている人が10392人、入院・療養等調整中といって自宅にいるべきではないのに行き場のない人が7960人います。病床使用率は軽症から中等症で54%、重症で24%。病床にはまだゆとりがあるように見えますが、今後は自宅療養中、調整中の人から悪化する人が増えます。都が確保したと発表している病床数には、実際には現在コロナ病床として稼働していない病床も含まれています。都内の病院では、コロナ病床の増床調整が行われています。しかしこれは容易なことではありません。なぜなら、日本の病院は病床の9割程度が常に稼働していないと赤字になってしまう制度の下で運営されています。
 ですから、一般病床をコロナ病床に転用するには、入院している患者を退院、転院させる必要があります。必要があって入院しているわけですから簡単に退院・転院できるわけではありません。病床を空にする調整には10日間程度かかります。それでも確保できる病床は新規感染者数に比べれば微々たるものになるでしょう。その間にも増え続ける患者で病床は埋まっていきます。3千人の新規感染者の2%が重症化すると約1週間後に60人程度が重症となります。これが毎日積み重なるのです。重症者病床は現在わずか392床しかないのです。ここが満床になると、人工呼吸器や膜型人工肺(エクモ)の治療が必要な重症患者が、治療を受けられないまま命を落とすことになります。重症者を一般病床で治療すると大きく人手が取られ一般病床も機能不全になります。そのため自宅やホテルで療養中に急激に病状が悪化しても、一般病床も空きがない、空きがあっても重症者に人手を取られ受け入れられないといった事態になり、どこにも入院できずに亡くなるといった事例が多発します。医療資源をコロナに集中すれば、問題はコロナだけにとどまりません。がんの診断を受けて手術を待っている人などの手術は軒並み延期されます。心筋梗塞、脳出血といった重篤な病気になっても入院先が見つけられずタイムリーに治療を開始できない、交通事故で大けがをしても受け入れ病院が見つからないといった事態が予想され、普段なら救える命をみすみす亡くすことになります。まさに医療崩壊です。そして、いったん医療崩壊になると負のスパイラルから抜け出せなくなります。

菅・小池の
責任追及を

 第5波で医療崩壊になることは、多くの専門家が予想していました。第4波の関西圏では医療崩壊により、自宅やホテルで大阪では19人、兵庫では15人が亡くなっています。今回の5波は確実にそれを超えるでしょう。6月21日に緊急事態を解除した時点で、すでに感染は拡大傾向にあり、デルタ株の国内感染が確認されていました。このまま緊急事態を解除して五輪を強行すればデルタ株による第5波が猛威を振るい医療崩壊に陥ることが確実視されていたのです。しかし菅首相も小池都知事も、それをわかっていて五輪を強行したのです。そして何もしてこなかったのです。PCR検査を大規模に実施し無症状の感染者をホテルなどに保護していく。地域毎に一般医療を計画的に縮小してコロナ病床を確保しておく。重症者病床を確保してそこで働くスタッフの訓練を行う。やるべきことはいくらでもありました。そして菅自公政権にいたっては、何もしないどころかコロナ感染が拡大している時に、消費税を財源に病床を1万床削減する法案を成立させたのです。
 2人が何もしてこなかったのは医療対策だけではありません。コロナ災害の不況で失業・自殺が増えています。この深刻な失業・貧困問題にも全く無策だったのです。毎週土曜日、都庁の下で支援団体が行っている食糧配布・相談会には300人を超える人たちが列をつくっているのです。
 以上のことからいえるのは、コロナ災害は菅首相や小池都知事のもたらした人災であり、2人はその責任を厳しく問われなければいけないということです。そして菅首相や小池都知事、そして全国でも菅・小池的政治家に政治を任せていては、私たちの命は守られないということです。
 菅・小池的政治家は、人々の命がどれほど失われても気にもしません。菅・小池的政治家が今考えていることは、第5波によるコロナ災害と五輪災害が社会に与えたショックが大きければ大きいほど、人々がショックから立ち直る前に「壊れた社会を再生するのはこの道しかない」とショックドクトリン(ショック療法)を押し付けることです。人々がコロナ災害で大事な人を亡くし、失業し家を失い呆然としている時に、東京都の財政が大変だと危機をあおり、今までできなかった規制緩和、民営化のドクトリンを強制するのです。
 コロナで医療が崩壊したのは日本では中小病院が多すぎるからだ、規制緩和で株式会社に病院経営を許可すれば大規模病院が地方でも整備できる、そうすれば医療崩壊にはならない。都立・公社病院も独法化ではなく、一部は民間企業に売却しよう。無観客で大赤字になった東京五輪。都財政再建とサステナビリティのために、都営地下鉄、水道を民間に売却しよう。このような世界中で破たんしてきた、使い古された民営化と公共サービス削減のリストが今準備されているはずです。それが実現された社会は、熱中症予防のための水が高くて買えない、救急車で搬送されても保険証がなければ受け入れを拒否する株式会社病院しかない、デストピアです。

社会のあり方
  を討論しよう


 新型コロナウイルス自体が、資本主義の無秩序な活動拡大により、野生動物との接触により生み出されたものです。そしてこの夏の異常な暑さも資本主義の無秩序な活動が大気に大量の二酸化炭素を吐き出してきたことが原因です。ウイルスと気候がもたらした災害は、自然現象のように見えるかもしれませんが、資本主義がもたらした禍、人災なのです。そしてこの人災は、人々を平等に襲わないということも共通しています。いつでも社会で一番弱い人が真っ先に被害にあうのです。今の政治は世界的大企業のための政治です。私たちがコロナや猛暑、五輪災害でどんなひどい目にあっても救済策は出てきません。むしろ傷が深ければ深いほど、その痛みを利用して、今よりももっと、人々の生活を苦しめ大企業を有利にする政策、ショックドクトリンが用意周到に持ち出されるのです。
 今すぐ五輪を中止させ、すべての資源をコロナ対策に集中させよう。菅首相・小池都知事の責任を徹底追及しよう。コロナ災害と五輪災害の負債を人々に押しつけるショックドクトリンに備え、新自由主義的解決策を拒否しよう。コロナ災害や異常気象をもたらした資本主義と決別するために、ともに運動でつながろう! 秋には総選挙がある。来るべき社会のありかたについて議論を始めよう。キーワードは、エコロジー、フェミニズム、社会主義!      
       (矢野薫)
 

広がる一方の「ノーオリンピック」の声は全く無視された(7.23)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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