18歳からの衆議院選挙

未来を見出すための政権交代
第5波医療崩壊の教訓と第6波への備え

 医療崩壊をもたらしたコロナパンデミックの第5波は急速に収束しています。しかし東京では、未だに500人を超える新規感染者が出ています。このまま感染が収束に向かうのか予断を許しません。とりわけ10代の感染が急拡大していることが懸念されます。6波はかならずやってくるでしょう。医療崩壊を防ぐためにどのような対策をとるべきなのかが、次の衆議院選挙の大きな争点になります。

次の事態に備えよう


 6波は必ず来ると考えて対策をとる必要があります。11月に予定されている衆議院選挙に対して、9月8日に、“安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合”(市民連合)と立憲民主党、日本共産党、社会民主党、令和新選組との間で共通政策「衆議院総選挙における野党共通政策の提言―命を守るための政治の転換を」を合意しました。(以下政策合意)そこでは「⒉科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化」として「従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の整備を迅速に進める。医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの待遇改善を急ぐ。コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援を行う」3点にわたる政策の方向性が述べられています。
 アベノマスクやGO TO政策、オリ・パラ強行開催のような思い付きで、事態の過小評価・過度の楽観論からは決別して「科学的知見に基づき」政策を進めるという、ある意味あたり前なことが宣言されています。この政策合意を力にして政権交代を実現させること。そしてその後も、この合意の方向性をもとに豊かな政策がきめ細かく実施されるよう運動を強めていくことを目指す。これが次期衆議院選挙に対する私たちの基本的立場です。

第5波で起きたこと

 政策合意は、政策の方向性だけで具体的政策までは示されていません。「医療・公衆衛生の整備」とは、具体的にどのような政策が展望されるべきなのでしょうか。第5波で何が起きたのかを振り返る中で考えてみたいと思います。
 第5波は、全国で医療崩壊を引き起こしました。国は、全国で3万7千のコロナ病床を確保したといっていましたが、実際に稼働した病床は2万4千程度でした。このような脆弱な医療体制では、連日2万人を超す新規感染者を受け止めきれるわけがありません。菅政権は医療崩壊をごまかそうと「原則自宅療養」という棄民政策を打ち出しました。そのためピーク時には13万5千人もの人が自宅療養を強制されました。しかし結局は救急医療体制が麻痺的状況となり、コロナ以外の病気の緊急搬送にも支障をきたしました。8月18日には千葉県で、自宅療養中の妊婦が入院先を確保できずに自宅で出産、新生児が亡くなるという痛ましい事件が起きました。8月以降、東京だけで44人が自宅で亡くなりました。皆保険制度の下で医療につながることなくこれだけの人が命を落とす、まさにコロナ災害という事態でした。菅政権は、すべてをデルタ株のせいにしています。すべてをデルタ株のせいにしてしまい何の対策も取られなければ、今後デルタ株よりも感染力が強い変異株が現れた場合、日本はなすすべもなく再び医療崩壊に至るということになります。ですから私たちは、第5波の経験から教訓を引き出し6波に備える必要があります。
 5波のピーク時に「野戦病院型施設」を作れという意見が出ました。医療にかかることができない人が多数出ているのだから臨時の医療施設が必要だというわけです。災害時にテントを立てて傷病者の治療に当たるのと同じです。では、6波に備えて臨時医療施設を準備しておくべきなのでしょうか。それを検討する前に、第5波を振り返ってみましょう。
 国は全国で3万7千床のコロナ病床を確保したと公表していました。しかし実際稼働したのは2万4千床余りだったことは先ほど触れました。この1万3千床の差は何なのでしょうか。これは、国に「コロナ病床を設置した」と届けたのだけれど、準備が整わず受け入れられなかった病床数です。その典型的な例が、尾身会長が理事長を務める地域医療推進機構傘下の都内にある公的5病院です。これらの病院は183床のコロナ病床を届けていましたが、5波のさなか30~50%が空床だったのです。都内で入院できない人が2万人を超えていた時に前述の5病院では最大50%の病床が患者を受け入れることができていませんでした。

看護師の確保が急務


 この原因は看護師不足です。当初は全国から看護師を都内の病院に派遣してしのいでいましたが、感染が全国に広まる中でそれが困難になったのです。市民連合との政策合意の中で「従来の医療費削減政策を転換し」と書かれていました。医療費削減政策のため日本の医療は、医師・看護師などの医療労働者の数が極端に低く抑えられてきました。そのためパンデミックのような災害的事態になると、設備はあるけれど働く人がいないという事態に容易に陥ります。とりわけ深刻なのが医師不足です。OECDによると、人口1000人当たりの医師数は、日本2・5人、それに対し1位オーストリア5・4人、次いでノルウェー5・1人、リトアニア4・6人です。5波のピーク時に臨時医療施設を作れという意見が出ていました。ですが最大の問題は、そこで働く医師・看護師をどのように確保するかなのです。。
 これもOECDのデータですが、人口1000人当たりの病床数は、日本が13・0床でトップです。もともと日本はOECD諸国に比べて病床数が非常に多いのです。ところが今回、あっけなく医療崩壊に至りました。
 その原因は病床の構成にあります。日本の医療の特徴は、中小民間病院が非常に多いことです。コロナ患者を受け入れるためには患者を隔離し看護師を集中させる必要があります。ところが中小病院では隔離と看護師を集中させることが困難なのです。ですから今回コロナ患者の受け入れは、ある程度の病床規模を持つ公立・公的病院が中心になりました。3波までのデータですが、急性期病床を持つ400床以下の病院のうちコロナ患者を受け入れた民間病院は2773病院中594病院、わずかに21%です。同規模で公立病院は53%、公的病院69%が受け入れています。400床以上になると民間病院でも81%が受け入れていますが、公立病院は97%、公的病院は95%が受け入れていました。
 以上により6波に備え医療崩壊を防ぐには、まず看護師を確保すること。公立、公的病院の医療体制を充実させ、コロナ患者受け入れ病床を拡充することが早急に必要なことがわかります。

人と予算を現場に


 医師、看護師などを要請するには一定の年月がかかります。ですから今現在、働いている人たちが燃え尽きて辞めてしまうような事態を回避することが重要になります。第4波のさなか、毎日新聞が都内でコロナ患者を受け入れている都立駒込病院の感染症科医師の超過勤務時間が過労死基準の4倍にもなっていたことを報道しました。「原則自宅療養」を棄民政策と批判しましたが、医療労働者も使い捨て状態です。労働条件改善、とりわけ長時間労働の規制が必要です。このままでは過労死する医師・看護師が出てくるでしょう。長期的には医師・看護師の養成数を増やしていくことが必要です。
 国は地域医療構想と新公立病院改革ガイドラインに基づき、公立病院の再編・統合を行い公立病院を廃止しようとしています。まずこの無謀な病床削減計画を中止させる必要があります。とりわけ国は独法化して補助金繰り入れをやめてしまった国立病院を、再度国立病院として整備・充実させるべきです。各地方自治体も公立病院の独法化・指定管理化した病院を直営に戻す、移行を検討している場合は即刻中止するべきです。そして再度公立病院として整備・充実させるべきで、国はそのための財政援助を自治体に行うべきなのです。そして各地域において公立・公的病院と民間病院の役割分担を検討し、パンデミック期に、どのように一般医療を確保しながら感染症病床を拡大するのか地域ごとに計画を立てておく必要があります。
 立憲民主党は「新型コロナウイルス対応調整室」を設置すると公約しています。しかし上記の日本の医療の問題点を踏まえればこれだけでは不十分です。この案は、司令塔だけを作り実施は民間に投げるという新自由主義的発想と手法から、立憲民主党がどれだけ決別できているのか疑問を感じます。医療費抑制から転換し、人と予算を医療現場に集中させることが必要なのです。
 私たちは、政策合意を力に、より細やかで豊かな政策に向けて地域で、SNSで声を上げていきましょう。コロナ対策と同じく深刻な温暖化対策です。温暖化を止めるために残された時間はわずか10年ほどです。まず次の選挙で政権交代を目指すことが必要です。そのために力を合わせましょう。   (矢野薫)

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