自民党総裁選と総選挙情勢 ④(10月11日発行)

岸田自公政権にNO!を
労働者と市民は野党共闘テコに民衆のための政権をつくろう!

世論に逆行する岸田の選出

 自民党は岸田文雄を新総裁として選択した。新執行部を発足させて、10月4日の臨時国会の召集と首相指名選挙で岸田自公政権が誕生することになる。その後の政治日程は、組閣後の8日に所信表明演説を行い、11~13日に代表質問を実施し、14日の衆院本会議で解散・総選挙となり、総選挙は19日の公示で、10月31日投開票となりそうだ。
 今回実施された自民党総裁選挙は、第1回目の投票で勝ち抜こうとする河野に対して、「河野を絶対に勝たせない」連合による権力闘争だったと言えるだろう。党内リベラル票を河野に行かせないために、告示日前日になってようやく20人の推薦人を揃えて野田を立候補させたのも、そうした力学が働いていたからである。野田の推薦人は二階派8人、竹下派3人、石原派1人、無派閥8人だった。
 安倍晋三が河野支持票をはぎ取るために国会議員に恫喝をかけまくったという報道もされてはいるし、河野陣営もはぎ取られたことをアピールしているが、はたして河野太郎は1回目の投票で勝ち抜くことが可能だったのだろうか。そのためには党員票の6割(230)と国会議員票の4割(153)以上が必要だったのである。しかし1回目の投票結果は、党員票44%(169)、国会議員票23%(86)で全体票の33%の獲得にとどまったのであった。それでも47都道府県中、37都道府県で河野が第1位であった(岸田8、高市1、野田1)。
 9月18日と9月25日に、毎日新聞などによって実施された世論調査結果は実に興味深い。18日の調査では「総裁になってほしい候補」は河野43%(高市15%、岸田13%、野田6%)で、25日の調査では河野45%(岸田・高市ともに18%、野田7%)だった。ここでの河野支持率はおもしろいことに、総裁選での党員票の44%とぴたりと重なるのである。すなわち全有権者の1%にも満たない自民党員数ではあるが、そこにおもしろいように世論が反映されているのである。岸田の選出は、間違いなくこの世論に逆行している。飯島勲内閣官房参与が9月16日の講演で「地方票1位の候補者の当選が望ましい」「決選投票で地方票の結果が覆されれば『党員の意思を無視した自民党』として衆院選で大打撃を受ける」と語っている。

「選挙不敗神話」に賭ける安倍

 自民党新執行部など重要ポストの人事は、露骨なまでに3A(安倍・麻生・甘利)の主導で進められている。幹事長には甘利(麻生派)が抜擢されて、その甘利が主導した新4役には総務会長に福田達夫(細田派・福田家の3代目)、政調会長に高市早苗(細田派出身で無派閥)、選対委員長に遠藤利明(谷垣グループ・岸田とは盟友)を起用している。その他にも副総裁に麻生太郎、国対委員長に高木毅(細田派)、そして官房長官には松野博一(細田派)が起用される。一方で総裁選で敗れた河野太郎(麻生派)は広報本部長に左遷され、総裁選で自主投票としていた二階派や石原派、河野を支持した石破派は党人事で処遇されることなく徹底的に干されている。
 今後、組閣人事で党内の派閥バランスをどのようにとろうとするのかは不明だが、主要ポスト人事だけ見てみると、今回の自民党総裁選で勝利を手にしたのは岸田本人ではなく「安倍と麻生」だったのではないかと思えるくらいだ。そしてこの布陣で1カ月後に控えた総選挙を、本気で勝ち切れると思っているのだろうかという素朴な疑問がある。
 総裁選で安倍は、若手の国会議員が河野に流れることに危機感を抱いて、高市陣営の先頭に立って自民党内の右翼が一堂に会することで、力を見せつけようとした。9月17日の高市の出陣式には、自民党国会議員の4分の1にあたる93人が参加している。しかし安倍がどう動こうが、現在の自民党派閥構造のなかでは河野がどれだけがんばっても、1回目の投票で勝ち抜くことは不可能であった。そして河野には世論の6割を獲得する能力も力量も無かったのである。それでも安倍と麻生が恩着せがましく岸田に迫るのには、それなりの理由があるからだ。
 安倍も麻生も「頼りない岸田」で選挙を戦えるとは考えていない。河野を阻止するために岸田を総裁にしたのであり、岸田でも高市でも党の顔として「戦える」とは考えていない。安倍は執権8年間の「選挙不敗神話」に賭けて、「安倍の見える選挙」として11月の総選挙に挑もうとしている。「河野人気」ではなく「安倍人気」で勝負しようとしているのだ。
 しかし世論は安倍や麻生が考えているほど甘くはないはずだ。昨年の9月にコロナ危機のただなかで政権を投げ捨てた安倍。自分で引っ張ってきた東京オリ・パラも、デルタ株の猛威のなかで知らん顔を通して菅義偉政権にやらせた安倍。そしてすべての責任を菅義偉に背負わせて退陣させた安倍。オリ・パラも終わり、コロナの第5波も終息し始めるや、ひょっこりと浮上してきた安倍。しかし人々はコロナの大波のなかで、そうした姑息なふるまいをする安倍をよく見てきたはずである。3Aによるおごり政治に支配される自民党は、11月の総選挙で7月に実施された東京都議会議員選挙に匹敵する大打撃を受けることになるだろう。

自滅の坂を転がり落ちる自民党


 岸田政権発足後にも各報道機関による世論調査が実施されることになるだろうが、岸田内閣の支持率は惨たんたるものになるだろう。退陣を表明した時に25%まで支持率を低下させていた菅義偉内閣も、就任当初は60%を超える支持を受けていた。しかし岸田内閣の支持率は、御祝儀もほぼゼロの30%台にとどまるだろう。
 9月18日と9月25日に実施された世論調査では、菅義偉内閣の支持率がそれぞれ37%、36%であり、これは8月の調査から約10%プラスになっているのである。野党各政党の支持率は前月からほぼ横ばいのなかで、プラスになっている要因は「支持政党なし」の無党派層が支持率を高めたためだ。事実として無党派は約10%減少しているのである。これは間違いなく「空気が動いた」からだ。
 ワクチン接種の拡大とコロナ感染者の激減による安心感も、内閣支持率を上げた要因の一部にはなっているのであろうが、最大の要因は「河野太郎新政権への期待」である。「政治を変えてくれるかもしれない」といった期待感が反映されているのだ。43~45%が河野を支持することで空気を動かしたのである。岸田と高市の支持率を合計しても28~36%にとどまる。3Aをはじめ岸田本人も世論調査での内閣支持率の結果を目にして茫然自失状態におちいることになるだろう。しかし、すでに遅しなのだ。河野太郎を引きずり落した自民党は、3Aの呪縛から逃れきれないまま、自滅へ向かう坂を転がり落ちて行くことになるだろう。
 しかし問題なのは野党共闘の側だ。4野党の支持率を合計しても20%にも届かないのである。結局は無党派票をどれだけ獲得できるのかという、旧態依然の選挙戦という構造から脱し切れていないのである。しかも東京都議選と違って、総選挙は289の小選挙区で勝ち切らなければならない(定数は465)。自民党は30%台の支持率でも公明党票を加えれば、十分に勝ち切れると考えてくるだろう。まさに「政権交代」を実現するためには、このつばぜり合いの戦いに勝ち切らなければならないのである。現在、立憲と共産党は小選挙区で競合している70選挙区での一本化のための調整を進めているようだが、問題はそうした小手先の調整を超えて、来るべき総選挙で鮮明で分かりやすい、どのような政策内容の「旗」を打ち立てるのかと言うことである。

日本資本主義をぶっ壊せ

 09年に旧民主党が自民党から政権を奪取した時、民主党が掲げていた「旗」は「コンクリートから人」のための政治だった。そして多くの人々がその政治に期待を込めた。その政治への転換は霞が関官僚との対立やサボタージュ、そして民主党内部での路線対立などに直面しながら結果的には破綻してしまうのだが、沖縄の辺野古新基地建設に対しては「最低でも県外」を打ち出した。しかしこれは日米安保の壁の前にとん挫するのだが、沖縄の人々からすれば「国がこんなこと言ってもいいんだ」と、その後の島ぐるみ反対運動の広がりに貢献したのは確かである。
 11年の東日本大震災による福島原発の過酷事故は、反・脱原発運動となって全国的に燃え広がった。当時の民主党は「原発の輸出」を政策方針としていたし、党内部でも電力総連など「連合」からの圧力があり、脱原発への方針転換に慎重であった。しかし反・脱原発を叫んで首相官邸前に押しよせた20万人のデモは、「民主党政権なら脱原発に舵を切るかもしれない」と大いなる期待をかけて声を上げたのであった。しかし民主党はその期待を見事に裏切ったのである。そして最後にもはや風前の灯火となっていた内閣支持率のなかで、自公への置き土産として「消費税の増税(5%から8%)」まで決めたのであった。まさにこの失政こそが、人々に巨大な挫折感を与え、その後の安倍長期政権の政治的な土台をつくることになったのである。
 立憲民主党はこの1カ月間で政権公約を小出ししているが、これといって響くものは皆無である。何故か。権力奪取にビビっているからである。「今の自分たちは旧民主党を超えられるのか」「荒波を立てずに、もっとやんわりと賢くやれる手はないのか」と縮こまっているのである。誰も立憲に「反資本主義」を期待しているわけではない。しかしアベノミクスの問題点を学習したのであれば、ゼロ金利とゼロ成長とゼロ賃金上昇といったアベノミクスが作り出した「蟻地獄」から脱出するためには、今の「日本資本主義をぶっ壊す」決意を持つことが大前提だということは明らかなのである。立憲民主党にその気がないのであれば、立憲は自民党の一分派として軍門に下ることになるだろう。
 今の「日本資本主義をぶっ壊す」。そしてその廃墟から、それぞれが望む「生まれ変わろうとする新たな日本を構築していく」。そこで様々な勢力が、命がけでせめぎ合う社会を、来るべき総選挙後に作り出さなければならない。野党共闘と労働者・市民、そして社会的弱者は、自らの未来を切り開くために総力で権力を奪取せよ。 (高松竜二)


 
 

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