自民党総裁選と総選挙情勢 ⑤ 最終回(10月18日発行)

比例区は共産・社民に、選挙区は野党統一候補と共産党に投票を
安倍もろとも岸田自公政権を葬り去ろう

世論は岸田政権を拒否した

 10月4日、岸田自公政権が成立した。翌日に実施された世論調査では、内閣支持率は49%で不支持は40%だった(毎日新聞)。過去20年間に生まれた10政権の発足直後の内閣支持率と比較してみると、支持率は08年の麻生政権の45%に次ぐ低さであり、不支持率は20年の菅義偉政権の27%を大きく上回るものだった。支持率のなかには漠然とした期待感を込めた「御祝儀」も加わっているので、実態的な支持率は30%そこそこだと見ていいだろう。
 世論は岸田政権の発足と同時に、この政権を拒否したのである。9月29日の自民党総裁選挙までの2週間にわたった総裁選挙ショーを見せつけられたあげく、「自民党は変わるかもしれない」「変わってほしい」という一般世論と自民党党内世論を覆して、党内の派閥力学による権力争いの結果として誕生したのが岸田新総裁であった。そしてその裏で言わば公然と糸を引き、また圧力をかけていたのは安倍晋三であり麻生太郎とその取り巻きであった。安倍が岸田に直言していた人事案は、安倍の子飼いである高市早苗幹事長と萩生田光一官房長官というものだった。安倍が狙っていたのは幹事長で党人事を支配し、官房長官で霞が関の官僚体制を支配しようとする安倍晋三による完全な「裏方独裁」であった。しかし、さすがの岸田もこの案を飲むことはできなかった。
 また総選挙の日程を一週間前倒ししたのも、御祝儀が逃げる前に、スキャンダルなどのボロが出る前に、小池都知事が率いる都民ファーストの会に邪魔される前に、そして皇族の眞子結婚式(26日)直後の「祝賀ムード」の余韻が残っているうちにといった見え透いた思惑があるからに他ならない。世論から見捨てられた自民党のこうしたあがきを許さず、総選挙で自民党を惨敗の崖っぷちに追い詰めよう。

総選挙に向けた私たちの政策

 9月8日、市民連合と4野党(立憲・共産・社民・れいわ)は「衆議院選挙における野党共通政策の提言(命を守るために政治の転換を)」で合意している。以下、提言にある6つの項目に沿って私たちの政策を主張したい。

① 憲法に基づく政治の回復

 安保法制、特定秘密保護法、共謀罪などの戦争と治安弾圧のための法律を廃止すること。デジタル庁の設置に反対する。自民党の改憲草案に反対し、現憲法の主権在民、生存権、基本的人権保障、平和主義などからなる民主主義的な精神を支持し、9条をはじめとした改憲に反対する。天皇制を廃止する。
 アジアにおける平和の創出のためには、まず日米安全保障条約を破棄する。米日豪印4カ国の軍事共闘であるクアッドから脱退する。アジアにおける戦争の危機を作り出しているのは米軍の存在が最大の原因である。米軍をアジアから叩き出すために、すべてのアジアの人々と連帯して闘う。軍隊としての自衛隊を解体する。
 全世界から核兵器を一掃することを無条件で要求する。日本の核武装に反対し、核兵器禁止条約を速やかに批准する。沖縄の辺野古新基地建設をただちに中止して、自然環境を元に戻すために努めること。米軍は沖縄から撤退すること。馬毛島から与那国に至る対中国の軍事基地化に反対する。

②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化


 コロナの保健・医療対策で明らかになった日本の保健・医療体制の脆弱性を克服するために、特に公的な医療・公衆衛生と感染症対策を充実させることが重要である。現在、東京都が推し進めている都立8病院、都保健医療公社6病院と都がん検診センターの独立行政法人「都立病院機構」への移行に反対する。
 大学医学部定員の拡充などで感染医療、超高齢化社会に対応できる態勢を強化し、研修生の無給労働を廃止するなどして、医療従事者の待遇を改善する。医学部入学審査での女性・浪人差別を禁止する。
 コロナの影響で解雇され失業した労働者、学生などの生存権はあらん限り保障されなければならない。あわせて雇用保障と感染症対策に努めた企業にも財政支援を実施する。
 ワクチン接種の拡大と不織布マスク着用による感染症対策を継続する。コロナ感染者への差別と、ワクチン非接種者やマスク非着用者への差別・敵対に反対する。

③ 格差と貧困を是正する


 最低賃金を全国一律で時給1500円とする。非正規雇用の労働者が正規職雇用を希望すればそれを受け入れなければならない。失業や生活難への保障を充実する。外国人移住労働者の権利を保証する。入管体制を解体する。大学授業料を無償化する。
 大都市部への人口集中を抑制する。無政府的な都市部の乱開発に反対する。雇用と生活の場を計画的に全国に分散させて、持続可能な完全電化の低価で快適な公的住宅、教育、医療、保育、介護を拡充させる。老若男女だれもが安心して暮らせる社会を実現する。公務員を拡充する。
 消費税を廃止するなど不公正税制を抜本的に見直す。所得税、法人税の累進率を引き上げて、金融所得も所得税並みの累進率にする。タックスヘイブンを含む脱税行為に対しては、その全額を国家が没収する。税金の使われ方を行政と市民が監視し、タックスイーターと政治家らの不正を許さない。

④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型システムへの移行

 気候危機に対処するために、化石燃料から持続可能なエネルギーへの転換が求められている。同時に地震の巣の上に作られてきた原発を今すぐに停止して、廃炉としなければならない。原発は持続可能ではない。第2の福島は日本を滅亡させる。被害を受けた福島の人々の命と健康、生活は全面的に補償されなければならない。
 エネルギー転換は巨額の投資に群がる電力独占や大企業に丸投げするのではなく、各自治体を中心とする地域住民が十分にかかわっていけるものとする必要がある。何よりもまず省エネを徹底して、現在の利益を生み出す手段としてのエネルギー浪費社会を終わらせること。そして食糧生産と消費や輸送ロスの問題、交通など移動手段の問題、超リサイクル社会構築の問題、住宅の耐用年数の問題、仕事の転換と雇用問題、気候難民受け入れの問題、エコ教育の問題など課題は山ほどある。リニア計画を白紙撤回する。
 地震・津波、台風、豪雨などの自然災害への対策は、急を要する課題ではあるが多額の資金と時間がかかる問題だ。優先されるべきなのは何よりも命を守るということ。確実な避難場所の確保と整備、自治体と住民による避難体制の確立から始めること。
 農林水産業への支援は、現在40%以下にまで落ち込んでいる食料自給率を上げ、自然環境の保全と治水事業などにとっても重要な課題だ。農村の過疎化と高齢化の克服、米食需要の減少、家畜の飼育やオーガニック食品、廃材を利用したバイオマスとしてのペレットの利用、乱獲と海水面温度上昇による不漁と異変、養殖をめぐる問題など課題は多い。三里塚空港を廃港にして、緑の大地を取り戻す。

⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現

 人種、民族、国籍、女性、性的少数者、障がい者、被差別部落などに対するあらゆる差別と排外主義を許さない。極右勢力らによる敵対攻撃を退けて、共に団結して差別のない平等な社会を実現しよう。選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などを成立させ、性暴力根絶のために闘う。
 ジェンダー平等の立場から、家族制度や雇用制度、学校入学制度などに関する法律と慣習の見直し。家事、育児、介護など、とかく女性に負担が押し付けられているケア労働の性平等化と社会化をめざす。
 国会議員に限らずすべての自治体で、議員間男女同数化(パリテ)を義務付ける。

⑥権力の私物化を許さず公平で透明な行政を実現

 森友・加計問題、桜を見る会など、安倍政権で権力私物化によって引き起こされた疑惑の真相究明を徹底的に行う。
 日本学術会議で菅義偉首相によって任命を拒否された6人を任命する。
 官邸と行政による独裁政治の温床である内閣人事局を解体する。

エコ社会主義・フェミニズム社会主義を

 東京第5検察審査会は、桜を見る会前日の夕食会費補てん問題で「一般常識として領収書を会計責任者に相談せず自己の判断で処分するとは考えられず、さらに捜査をつくすべきだ」と指摘して、10月6日までに「元公設第一秘書ら2人の不起訴の一部を不当」と議決した。安倍晋三の尻に火がついている。野党共闘をテコに、労働者と市民は総力で安倍晋三もろとも岸田自公政権を葬り去ろう。
 比例区は共産・社民に、選挙区は野党共闘の統一候補と、共産党に投票しよう。エコ社会主義・フェミニズム社会主義のために、共に闘いを推し進めよう。

       (高松竜二)
 
 
 
 

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