総選挙結果をどう考えるか? 分析のための視点(中)

右翼ポピュリストをはね返そう
維新との闘いを進めるために
大森敏三

大阪における維新の完勝が意味するもの

➀分断を肥やしにした維新

 日本維新の会は、大阪府の19小選挙区のうち、立候補した15選挙区で当選を果たし、圧倒的な得票を獲得した。各選挙区で次点となった候補は、大阪10区の辻元清美さん(立憲民主党)を除けばすべて自民党公認候補だったが、その得票差を見ると、1万票以内の接戦となった小選挙区は一つもなかった。選挙前に「小選挙区で落とすとしたら10区だと思っていた」と維新幹部が語っていた大阪10区でさえ、約1万4千票の差をつけて、維新の新人候補(元府会議員)が辻元さんを破った。
 辻元さんは落選後のインタビューで「私が悪い。おごりと過信があったから」と語っていた。「衆院が解散した10月14日、維新について記者団に問われ、つい口を滑らせた。『これは国政選挙。維新はローカル、眼中にない』。相手陣営のプライドを傷つけ、猛反撃を招くことになる」。そして、自民党の山崎拓元副総裁が応援演説に来たことが、「この件では、本当に党派を超えて働いてきたんやな、と肩をたたく人もいれば、『自民党とつながっている』と維新陣営からの攻撃材料になったのも事実でした」と辻元さんが述べたように、維新は徹底的にこの点をついてきた(引用はいずれも『毎日新聞』より)。この「野合批判」は、維新の得意技であり、これまでの大阪府知事選や市長選、さらには都構想をめぐる住民投票でも再三再四繰り返されてきた。大阪では、維新が自治体首長選挙に立候補する際には、ほぼ必ず維新公認という形をとり、その多くで当選させてきたことがその背景にある。今回も、野党共闘が成立した小選挙区では、「政策がまったく違うのに議席欲しさで野合している」との批判を野党統一候補に浴びせていた。自民党に対しても、「特定の企業・団体に支えられた既得権サイド」(吉村知事)との批判をおこない、大阪での「改革」の実績を強調した。
 そもそも維新の出発点は、大阪における「オール与党」体制という閉塞した政治状況への反発であり、東京一極集中による大阪経済の地盤沈下への不安を根拠にした一点突破型のリーダーシップへの期待だった。維新は、大阪を自らの新自由主義政策の実験場として位置付け、深刻な格差・貧困という状況を改善するのではなく、むしろ社会的弱者に対して徹底して「冷淡な」姿勢をとることで、民衆内部の分断状況を作り出し、それを強化することで、自らの支持基盤を固めてきたのである。

②地方議員を軸にした徹底した組織戦


 大阪での小選挙区の完勝について、毎日新聞は「維新は、候補を立てた府内15の選挙区ごとに、地元の府議・市議らを責任者や事務長として配置。計約260人に上る府内の首長と所属議員を実動部隊として総動員するピラミッド型の態勢を党本部主導で構築した。街頭演説やチラシ配りだけでなく、期日前投票所の前に議員を張り付け、投票する直前の有権者に支持を呼びかける人海戦術を展開。接戦が伝えられた選挙区には、担当する選挙区に関係なく、所属議員を一運動員として集中投入した。自民市議も、『維新の選挙はすごかった』と舌を巻くほどの組織戦で圧倒した」(11月2日朝刊)と伝えている。
 私の居住する自治体でも、維新の議員は公示前からスーパー前や住宅地の交差点などに立ち、「維新」ののぼりやバナーを置いて支持を訴えていた。選挙戦に入ると、それに加えて、駅頭での連日の朝立ちもおこない、フル回転状態だった。維新の首長も、候補者の宣伝カーに乗って選挙活動に加わっていた(地元議員にとっても、小選挙区での圧勝は「予想を超えていた」ことのようだったが)。このように、大阪においては、維新は強固な議員団に支えられた組織政党となっており、党員や支持者の高齢化で活動量を減らしている自民・共産(今回は必死に活動していたが、公明も含まれるだろう)とは対照的な組織的勢いが感じられた。
 しかも、昨年の都構想住民投票で、維新は僅差で2度目の敗北を喫したにもかかわらず、その後の大阪府下での自治体議会選挙では、当選者を増やしたり、上位当選を果たしたりしていた。たとえば、総選挙の直前にあった豊能町議会選挙では、定数12人のところで従来の2人から4人へと当選者を倍増させた。さらに、維新公認で当選した前市長が、「庁舎内に私的にサウナを設置した」などという「不祥事」で辞任したあとの池田市長選挙でも、新人候補を維新公認で当選させていたのである。
 比例得票数でも大阪で171万票以上をとり、それは投票者数の40%以上を占めた。この票数は、前回総選挙の93万票の倍近いものであり、維新のコアな支持層だけでなく、前回述べたような、その周りにあるフワッとした支持層が大挙して投票した結果だろう。

比例急増と維新の政策的位置


 もともと総選挙での維新の議席の増減は、大阪での小選挙区における当選者数に左右されてきた。前回の総選挙では、維新は小選挙区で3議席しか得ることができず、その結果、大阪府内の候補者の多くが比例復活の形で当選する形となり、全体で11議席にとどまった。今回は、大阪の小選挙区だけで12議席増となり、結果として近畿の他府県での比例重複立候補者が当選して議席増の基礎となった。しかし、それを上回る大幅な議席増となった要因は、比例票の大幅な増加によるものである。これについては、マスメディアやネット上でさまざまな分析がおこなわれている。
 たとえば、「右傾化した与党・自民党と左傾化した立憲民主党の間に空いた中道右派的ポジションを維新が取りに行った」という分析をする人もいる。こうした分析は、維新を国民民主党とあわせて「中道右派」として位置付けている。総選挙後の維新と国民民主との「連携強化」の動きは、この分析を裏付けているかのように見える。しかし、立憲民主の「左傾化」という分析は、ある意味では、共産党などとの選挙協力を見直して、より「中道」的なスタンスをとるように立憲民主に圧力をかけるという狙いも見え隠れしているので、注意する必要がある(野党共闘の問題については後述)。
 あるいは、選挙前から「政権との対決姿勢」を明らかにして「与党の補完戦力」からの脱皮を図ったことで、「改革」政党として一定の認知を得たからだと分析する人もいる。岸田政権の発足とともに、維新の自公政権に対するスタンスが大きく変化したのは事実で、「(10月)12日の衆院代表質問では、維新の馬場伸幸幹事長が岸田首相に迫った。『総理は抽象的なキャッチフレーズを並べるが、具体的な改革パッケージは見えず刹那的なものばかりだ』。しかし、約1年前にあった菅首相への代表質問は、今とは全く異なるものだった。『改革メニューが矢継ぎ早に打ち出され、維新の改革に対する視線は総理と重なる』。前首相を持ち上げていた当時のスタンスは、首相交代を経て様変わりした」(『毎日新聞』10月18日)のである。
 総選挙に臨む維新の政策は、「維新八策2021」と公表されていた。その内容は、新自由主義的規制緩和と「福祉国家」的政策、そして憲法改正を含む国家主義的「国家改造」策が入り混じったものである。長く府政・市政を掌握してきた大阪において、維新は、徹底した新自由主義的「行財政改革」(社会的・文化的公共財の切り捨て、社会保障・医療への支出削減、自治体業務の民営化・外注化、公務員削減・賃金切り下げなど)によって生み出された「財源」で、私立高校の授業料無償化、保育料の一部無償化、地下鉄の初乗り運賃引き下げなどの「改革」をおこなってきたことを自慢している。これを国政レベルに拡大していくというのが「維新八策」の基本的な方向である。その中では、もともと左派が主張してきた政策を取り込み、それと自らの新自由主義的政策と巧みに組み合わせている。これはヨーロッパの極右政党との共通点を感じさせる点である。
 たとえば、「最低所得を保障すること(給付付き税額控除またはベーシックインカムの導入)で雇用の流動化とチャレンジを支援し、賃金水準の向上を実現」(維新のチラシ)を掲げているが、これは「解雇ルールの明確化」「解雇紛争の金銭解決を可能にするなど労働契約に関する規制改革」「労働市場の流動化・活性化」「年金等を含めた社会保障全体の改革」のためであるとする。ここでは、ベーシックインカム導入が、解雇の自由化、年金切り下げ(ないしは廃止)と結びつけられている。その一方で、「教育の全過程について完全無償化」「選択制夫婦別姓制度の創設」「同性婚の容認」などの政策も提唱しているが、日本で働く外国人の人権保障、労働権などは無視している。また、「憲法改正に正面から挑む」「防衛費のGDP1%枠の撤廃、テロやサイバー・宇宙空間への防衛体制の強化」「海洋国家ネットワークによる防衛力の強化」などの国家主義的政策も盛り込まれている。大阪9区で当選した足立やすし議員は、公示前に配布した「議員活動報告書」の中で、「自らを保守と名乗る自民党議員に限って、格好だけの保守気取りに過ぎないケースが少なくない」として、「殉職自衛隊員の国家追悼」の実現を求め、その「最も相応しい場所は靖国神社」と公言していた。

ヨーロッパにおける極右の台頭と維新の位置

➀ヨーロッパ極右台頭の要因


 前項で示したような維新の政策を見ると、維新を日本の政治スペクトラムのどこに位置づけるのか、またよく言われるような右派ポピュリスト政党と考えるべきなのか、などなかなか一筋縄ではいかないことがわかる。分析の前提として、維新的な政治、政党の台頭は、決して日本に特有の現象ではなく、世界的に見られる問題であることを考慮に入れる必要がある。ヨーロッパにおける極右政党の台頭はその一つの例であるが、それ以外の諸国でも、権威主義的な政権の登場がアジア、ラテンアメリカ、アフリカで多く目撃されている。ヨーロッパ、北アメリカでも、一部の国で極右勢力が政権を掌握したり、政権を支えたりしている(トランプ政権もその一つ)。こうした世界的な流れを分析することなく、維新の「躍進」を含む日本の政治状況を理解することは難しいと思われる。
 ここでは、そのうち、ヨーロッパにおける極右の台頭について、その政治的位置をまず考えてみたい。ウォルデン・ベロー(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス元代表)は、2019年に出版された著書『反革命:極右の世界的台頭』(未邦訳)の中で、ヨーロッパ・アメリカにおける極右勢力の台頭について、次の4点を指摘している。
 「第一に、極右運動は、今日の『北』で最もダイナミックな政治勢力である。彼らは、スタイルはポピュリストであるが、その綱領的内容はポピュリストではない。厳密に言えばファシストではないが、彼らのレトリックと実践は、極端な二極化を抑制してきた自由民主主義の伝統的な実践の多くをむしばんでいる」。
 「第二に、こうした運動の成功の一因は、もともと独立左派が主張していた反グローバリゼーション・反新自由主義のアジェンダを奪い取ることができたことにある」。反グローバリゼーション運動は、自らの主張を極右に「横領」されてしまったのである。「対照的に、極右は、労働者階級に大衆的基盤を拡大するために、もともとの小ブルジョア的基盤の反税・反福祉国家の主張を抑えて、福祉国家を受け入れ、グローバリゼーションに反対することをいとわなかった」。
 「第三に、右派が成功したもう一つの重要な理由は、反EUの旗を掲げ、超国家的な侵略に対して国家主権を、テクノクラートによる独裁に対して民主主義を唱えたことである。中道左派も中道右派も、EUの民主主義的欠陥に大きな異議を唱えることができなかった。というのも、彼らはEUの主要なテクノクラート機関、すなわち欧州委員会と欧州中央銀行の設立に深く関わっていたからだ。この2つの機関は、たとえばギリシャが民主的国民投票によっておこなったように、緊縮政策を拒否した国々に独裁的に緊縮政策を強制しているとみなされた」。
 「第四に、極右が掲げた中心的な問題は、移民反対だった。ヨーロッパの支配エリートとアメリカのリベラル・エリートが共謀して、自国に非白人の移民をあふれさせ、多数派の社会から仕事や社会サービスを奪うと描いた彼らの物語に、労働者階級のかなりの部分が賛同した」。
 そして、極右運動は「自らの大衆的基盤である人々が感じているような多種多様な脅威に対する原理主義的かつ包括的な政治的反応」であり、その起源と原動力で最も重要なものは「人種的・民族的・文化的・宗教的な観点から、多数派のコミュニティが圧倒されてしまうのではないかという不安」であると指摘する。

②「ヨーロッパ極右と維新との共通点と違い」

 このウォルデン・ベローの指摘は、いくつかの点で維新にも共通するものである。「維新版ベーシックインカム」による社会保障制度の再構築、大阪を拠点とする「反中央政府」的な姿勢、議員歳費カットの主張に端的な既存権力の「特権」批判、「中堅サラリーマン層・自営上層の『勝ち組』的気分感情をポピュリスト的にあおる」という分断的発想などがそれである。また、「移民反対」についても、政策には外国人労働者問題が「書かれていない」という消極的な形でしか表現されていないが、維新は日本で働く外国人の問題にはきわめて「冷淡」な態度をとってきた。また、慰安婦像の設置をめぐって、大阪市とサンフランシスコ市との友好都市関係を解消したこと、少女像の展示を含む「表現の不自由展かんさい」への会場使用許可取り消しを主導したことなどで明らかなように、維新指導部の排外主義的姿勢は明らかである。そして、足立やすし議員がSNSや「活動報告書」の中で、社民党や大椿ゆうこ候補が「関生支部」を支持し、その支援を受けていることについて、口汚く誹謗中傷しているように、労働運動や社会運動への敵視も維新の特徴の一つである。
 このように考えると、移民問題が顕在化していない日本社会の状況(その中には、社会運動、労働運動の沈滞状況も含まれる)を反映して、その点ではヨーロッパ極右勢力とは一線を画しているように見えるが、実は大きな共通点を有していることがわかる。言い換えれば、維新の「躍進」を可能にした社会状況は、ヨーロッパと多くの共通点を持っているのである。この意味では、「右派ポピュリスト的スタイル」を持った政治勢力として定着する可能性があり、十分に警戒する必要があるとともに、大阪における反維新の運動のあり方や進め方を更新していく必要がある。
        (つづく)
 

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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