2022年度政府予算案を批判する

貧困・生活破壊・軍拡促進の「新しい資本主義」を許さない

民衆の生活を破壊する

 岸田政権は12月24日、2022年度予算案を決定した。一般会計の総額は前年度当初予算と比べて9867億円増の107兆5964億円となり、10年連続で過去最大だ。同時に12月20日に成立した2021年度補正予算35兆9895億円と一体的に編成した「16カ月予算」とした。
 その実態は、各省庁の当初予算を抑えながら査定が甘くなる補正予算に巨額な事業を押し込む手法を強行し、歳出の増額を作り出している。岸田政権は、安倍政権以降の「補正回し」を踏襲し、民衆のための予算構成とはかけ離れたのが予算案だ。以下、主な今年度予算案の内容を点検し、民衆に敵対する予算実態を暴きだしていきたい。

大資本・富裕層優遇

 歳入は、法人税、所得税の増収を願望し、税収を21年度当初比で13・6%増の65兆2350億円と過去最高額を想定した。
 増収ならば民衆のために予算配分するのかというと全くそんな姿勢はない。例えば、財務省の法人企業統計では、2020年度末の企業の内部留保(金融・保険業のぞく)は前年度末に比べ、2・0%増の484兆3648億円と巨額なカネをため込んでいる。岸田政権は、資本の内部留保額を掌握しているにもかかわらず、「税制改正大綱」(12・24)では資本のために法人税の引上げをせず、内部留保課税を設定することもしない。富裕層に対する金融所得課税の見直しもなくなってしまった。あげくのはてに「法人税減税によって賃上げ効果」などと言っていたが、赤字企業、法人税未納企業にとっては資本防衛を優先し、労働者に対する賃上げなどはしない。
 そもそも低所得者ほど負担が重い逆進的な消費税に対する消費税減税要求は全く無視したままだ。結局、民衆から血税をむしり取りながら、主な財源として積み上げつつ、借金依存の体質から抜けるつもりもなく、国債の新規発行額は36兆9260億円と膨らみ、国債依存度は34・49%へと上がった。22年度末の国債残高は1243兆円に積み上がった。民衆1人当たりに換算すると800万円近くの借金を負担していることになる。だからこそ無駄な財政支出を許さず、民衆のための予算案へと組み換えさせなければならない。

格差拡大の予算配分


 社会保障費は、36兆27
35億円で自然増は440
0億円に圧縮した。あいかわらずの新自由主義路線による金儲け優先、貧富の格差拡大を前提にした政策を継承し、その実践として予算配分を貫徹した。
 その現れとして高齢者の医療機関「受診控え」の強要に向けて医療機関の診療報酬を0・94%削減、後期高齢者医療の窓口負担を年収200万円以上の人を対象に現行より2割に増やす制度改悪を強行する。
 コロナ対策には予備費(政府が国会の承認を得ずに使い道を決められる予備費の存在も、歳出増の主因の一つ)として5兆円を計上した。すでに2021年平均の完全失業率は、前年比横ばいの2・8%、完全失業者数は193万人(総務省)。生活保護を受給している世帯は全国で164万1917世帯(厚労省)。非正規雇用者の不当な解雇、大量解雇が発生している。だが経営危機の中小企業、個人事業者に対する持続化給付金、家賃支援給付金の再支給は盛り込まなかった。休業手当を部分的補填する雇用調整助成金(5843億円)、資本のための在籍出向費(450億円)など規模も小さく、かろうじて雇用対策として予算化したが、その先には雇用保険料率の引き上げを盛り込んだ雇用保険法の改悪も狙っている。本質的には経済的困窮者に対する切り捨てだ。
 新たな変異株「オミクロン株」によって新規感染者数が増加している。岸田政権は、コロナ禍に対して医療態勢の弱点、医療スタッフの増員、PCR検査、保健所の拡充などが求められていたにもかかわらず、楽観的な対応を続け、医療崩壊の再々現となりつつある。経営危機となっている医療・介護施設への減収補填は必要なのに盛り込まなかった。
 連動して保育士、介護職、看護師などの賃上げ・待遇改善歳出は約2600億円だけだ。本気でケア労働者の賃上げ、医療の脆弱性を克服する気があるのかと言える。医療提供体制をはじめ公衆衛生、介護などの人員確保、予算の拡充のために予算を増額しなければならない。公立・公的病院の統廃合計画を直ちに中止することは当然のことだ。

対中国シフトの軍事費

 軍事費は、583億円増の5兆4005億円が計上された。すでに国内総生産(GDP)比1%を超え、1・1%となった。しかも防衛省は「防衛力強化加速パッケージ」と称して21年度補正予算の7738億円とあわせて6兆1743億円に膨らんだ。
 岸田政権は、「敵基地攻撃」能力の保有の先取りとしてF35ステルス戦闘機増強(768億円)、「いずも」型護衛艦の空母化(改修費61億円)、長距離巡航ミサイルの開発(393億円)などの巨額な予算を計上した。
 さらに対中国シフトに向けた南西諸島の軍事配備高度化(678億円)、サイバー部隊の構築(102・5億円)、電磁波領域の能力強化(381・2億円)、宇宙戦能力などの研究開発費(790億円)など次々と戦争のための予算を計上した。
 日米両政府は2022年度から5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を、21年度比で約100億円の増額の総額1兆551億円とすることで合意している(22年12月)。林芳正外相は、米の一方的増額要求に対して全面受け入れという批判をかわすために「思いやり予算」という「俗称」から「通称」として「同盟強靭化予算」にすると言い出す始末だ。まさに墓穴掘りを自ら演じるほどだ。米軍を財政的にも支えきる狙いを許してはならない。
 さらに米国軍需産業に対して 高額装備品の購入費を複数年度に分割して支払う実質的なローン制度「後年度負担」の新規分は前年度比11・8%増の2兆9022億円を計上した。ローン残高は5兆8642億円におよんでいる。
 沖縄関係予算は2684
億円で辺野古新基地建設問題などで政府に抵抗する報復として本年度から11%、326億円の大幅減となった。だが岸田政府は、県知事選や参院選の与党優勢に向けて直接市町村に交付される特定事業推進費80億円を計上している。
 自衛隊の軍拡路線は、米軍と連動したグローバル戦争を担いきる実戦力の構築だ。戦争のための軍拡予算を許さず、軍事費をコロナ対策、医療・公衆衛生態勢の強化、民衆のための社会福祉予算に配分せよと迫っていこう。実質的な9条憲法改悪状況の既成事実化に抗議し、反撃していこう。

ゼネコン向けバラまき


 公共事業関係費の総額は、前年度から0・04%増の6兆0575億円。そのうち防災・減災、国土強靱化関連の予算額は3兆8736億円計上した。省庁ごとの公共事業関係費は、国土交通省が5兆2480億円(前年度比2201億円増)、農林水産省が6981億円(3億円増)、厚生労働省が172億円(1億円増)、経済産業省が21億円(増減無し)、環境省が495億円(同)、内閣府が423億円(同)だった。
 軒並みに予算額が増額されており、ゼネコン・土木資本関連を中心に配布しようとしている。主な事業として三大都市圏環状道路整備、高速道路整備に3585億円、整備新幹線整備に2400億円、羽田・成田両空港の機能強化に657億円を計上した。いずれも環境破壊、温暖化対策に敵対する開発プロジェクトでしかない。この予算配分もゼネコン─土木資本を柱とする参院選などの選挙集票マシーンとしての育成にあり、ばら撒き買収を先取的に展開しているのだ。

原発推進予算だ


 原発関連予算も経団連など原発推進派の要求を忠実に予算案に反映させた。
 経産省関連では原発立地地域の買収費である「電源立地地域対策交付金」が730・4億円、原子力発電施設等立地地域基盤整備事業補助金に83・2億円。しかも核燃料から取り出したプルトニウムを利用する「プルサーマル発電」に加担する道県に対して新たな交付金を支払う制度を策動している。すでに破綻した「プルサーマル発電」にしがみつきを許してはならない。
 さらに内閣府関連で原発推進キャンペーンなどのための原子力防災対策の充実・「強化費」に104・6億円、原子力利用に関する政策の検討及び適切な情報発信費として2億円。文科省関連で原子力分野の研究開発費に1471億円だ。
 脱炭素・気候危機対策と逆行する予算は、これだけではない。気候変動対策の国連の会議CОP26で石炭火力発電の廃止ではなく「石炭の段階的廃止を求める」妥協に便乗して石炭火力発電推進のために169・5億円と増額した。また、石炭火力発電の延命であるアンモニアと石炭の混合燃焼推進のために989億円を計上した。
 このように岸田政権の原発再稼働・推進派の人事配置でも明らかなように、予算案の配分からも原発推進シフトであることが明かだ。環境破壊、温暖化対策に敵対する原発関連予算を許さない。

「緊急事態条項」と連動

 デジタル庁関連予算は、4720億円を計上した。「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」を掲げて、大企業・IT産業に高額予算を配布しようとしている。マイナンバーカード取得者向け専用サイト「マイナポータル」などの整備・運用に990億円、各府省との共同で整備・運用で2280億円など巨額な予算を計上した。
 警察庁は、4月に新設するサイバー部隊設置に27億円を予算要求している。サイバー空間の脅威対処と称して、民衆管理と治安弾圧強化に向けてフル回転させようとしている。
 当面の獲得目標としてマイナンバーカードを通して、資産や健康など膨大な個人情報を国が一元管理し、監視社会を実現することだ。コロナ禍による民衆の不安状況を利用することを通して医療・教育・防災などのデジタル化、生体認証システムとの連携を推進する体制を一挙に構築していこうとする野望を暴露し、プライバシー保護、マイナンバーカード所持の強要や利用拡大に反対の声を強めていかなければならない。政府・支配者たちの野望を阻止し、民衆の人権防衛政策を優先させなければならない。人権侵害に満ちた緊急事態条項制定に向けた憲法改悪阻止へ。

民衆のための予算へ


 岸田政権と与党は、夏の参院選に向けて積極財政へと踏み込み歳出圧力を高め、様々な利権構造にカネをばら撒く、参院選事前運動に着手しているのだ。同様の性格として公明党の強い要求として18歳以下への10万円相当給付も行う。
 だから岸田は、「新しい資本主義」を掲げているが、制度や財政根拠、具体的な計画、政策などこれまでの資本主義とどう違うのかを明らかにすることができない。それでも居直り続け、この予算を「成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するための予算」などと言っている。だがその実態は、民衆の生命防衛のためにこれまでの医療態勢脆弱性を検証・総括したうえでの充実化計画もなく、医療・介護・保育労働者に対する待遇改善もアリバイ的な規模でしかない。要するにコロナ対策を優先した財政支出ではなく、コロナ禍状況に便乗して大資本を支える巨額な財政支出、ゼネコンのための乱開発、日米安保体制下の米軍と共にグローバル戦争を担いきる軍事費、原発再稼働・火力発電所建設など温暖化対策に逆行する予算をでっち上げたのである。
 財界やメディア・ブルジョアエコノミストらは、社会保障費に対して「過去最大の額」「切り込みがたりない」などと社会保障費削減を煽りたてている。同時にワンパターンで絶対に無駄な軍事費、ゼネコンのための巨大開発プロジェクト、原発再稼働・推進予算、IT産業へのばら撒き予算の削減を言わない。日本帝国主義防衛派としてそのことは触れないところが根本的な反民衆的スタンスなのである。民衆の生命・生活防衛のための予算増額は人権問題として当たり前のことだ。
 このような政府予算案に反対し、民衆のための予算案を要求していこう。
       (遠山裕樹)

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