ロシア軍はウクライナから撤退せよ

ロシア軍のウクライナ軍事侵攻について

世界中で上が
る反戦の声
 2月24日ウクライナ時間の未明、ロシア正規軍によるウクライナへの軍事攻撃が開始された。それはプーチンによる「特別な軍事作戦」の開始宣言発表の直後であり、ウクライナ国内11カ所の飛行場を始めとするウクライナ軍施設に対する弾道ミサイル、巡航ミサイルと戦闘機による空爆から始まった。またロシア軍はロシア東部、クリミア半島、ベラルーシから戦車部隊を始めとした数万の地上軍による軍事侵攻を開始するのと同時に、攻撃用ヘリによる攻撃も行っている。プーチンは民間施設は攻撃対象としないとしてきたが、誤爆も含めて、民間施設と民間人に対する攻撃も行われている。ウクライナ軍ばかりでなく、すでに多くの一般市民も犠牲になっている。
 プーチンは「レッドラインを超えた」などと今回の侵攻の理由を上げ連ねているが、それらはウクライナを軍事力でもってねじ伏せることを正当化させようとする御託を並べているに過ぎない。ウクライナ人民の主権を踏みつぶし、ウクライナの人々を血の海に沈めようとする独裁的殺人者プーチンは徹底的に糾弾されなければならない。ロシア軍はただちにウクライナから全面撤退せよ。
 すでに全世界でプーチンの暴挙に対する抗議の声が上がっている。ロシアでも軍事侵攻当日の24日だけでも、全国50以上の都市で抗議デモが敢行された。モスクワでは若者を中心に「戦争やめろ」とシュプレヒコールを上げながらデモ行進が行われた。そして1600人以上が警官隊の弾圧によって拘束されている。各国のデモにはウクライナ人ばかりでなく、多くのロシア人も加わっている。「ロシア人として恥ずかしい」「ロシア人は皆がプーチンと同じ考えではない」と、やるせない思いと怒りを口々にしている。
 国連の席だけでなく、プーチンは全世界の人々から糾弾され、完全に孤立化した独裁者に成り下がった。大義なき軍事侵攻に駆り出されたロシア軍兵士の士気も決して高くはないだろう。ロシア軍のウクライナ侵攻を「核の脅威」を振りかざしてまで実行した、プーチン独裁の終わりの始まりとしなければならない。あわせて大統領選で敗北しながらも、ぬくぬくと居座り続けているベラルーシのルカシェンコの独裁も終わらせなければならない。ウクライナに平和と民主主義を、ロシアに民主主義を、ベラルーシに民主主義を。全世界の人々が連帯してその手助けをしよう。

侵攻は阻止で
きなかったのか
 今回の軍事侵攻に先がけて2月21日プーチンは、親ロシア派が実効支配してきたウクライナ東部2州の一部を「ドネツク人民共和国」、「ルガンスク人民共和国」としてそれぞれ独立国として承認している。そしてそこで暮らすロシア国籍を取得する住民の「保護」を軍事侵攻のための大義としてでっち上げたのであった。しかしウクライナの人々を戦禍に落とし込まないために、あくまでも外交で侵攻を阻止することは不可能だったのだろうか。
 プーチンの最大の要求は、NATOとして「ウクライナを加盟させないことを確約」することであった。この要求をバイデンは直ちに拒否して、ロシアに対する経済制裁圧力一辺倒の外交路線で対抗した。しかしNATOとしてその要求を確約することが難しいのであれば、「東部で民族紛争を抱えている」ことを理由に、現状では加盟させることはできないことを認めるべきであった。あるいはウクライナに対して、NATOへの非加盟を確約させるということも、ロシアに対する外交的「譲歩」として可能だったのではないだろうか。
 NATO主要国は、この後者の確約をゼレンスキーに対して要求していたようだ。しかしウクライナ民族主義ポピュリズムのゼレンスキーがこれを飲むということは、たとえロシア軍の軍事侵攻を阻止できたとしても、政権自身の政治的な「死」を確約することと同様であった。ゼレンスキーはこの要求を拒否したのである。バイデンが「プーチンは本気だ」「明日にでも侵攻する」と連日のように危機をアピールしていたが、それは情報の「開示による抑止」ばかりではなく、ゼレンスキーに対する忠告でもあった。
 ゼレンスキーはロシア軍侵攻の前日まで、米国政府からの情報を知りながら「市民のみなさん大丈夫です」とうそぶいていたのである。結果としてゼレンスキーはウクライナ市民をロシア軍に対する「盾」にしたのである。侵攻後の大混乱も緩和することができたであろう。その一方で、ウクライナ経済を牛耳る財閥オーナー集団「オリザルヒ」ファミリーは、相当早い時期に国外退避している。

侵攻の長期化と
ロシア世論
 G7を中心にしてロシアに対する経済制裁が次々に打ち出されている。国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの排除は棚上げにされたが、各国が金融・半導体などの輸出・個人資産の凍結などの制裁を発表している。しかし経済制裁によって直ちに効果が出るわけではないし、侵攻をくい止められるわけでもない。そしてそれらが実施されれば、当然ロシアも報復制裁措置をとってくる。
 岸田政権はこれまでの親ロシア派地域との貿易の禁止、ロシア国債の取引禁止に追加して、3銀行の資産凍結、軍事関連の半導体輸出規制などを明らかにしている。現在ロシアに進出している日系企業は347社で、その4割強が製造業だ。日本の天然ガス輸入に占めるロシア産の割合は1割弱だ。しかし大規模LNG事業である「サハリン2」には三井物産と三菱商事が、東シベリアでは伊藤忠商事が石油開発に関わっている。自動車もトヨタをはじめ日産、三菱、マツダも現地生産している。またその他の資源や小麦の輸入などにも影響してくるだろうと言われている。
 いずれにせよ現在プーチンが憂慮していることは、ウクライナ軍と市民の命がけの抵抗によって侵攻が予定していた以上に長期化することである。部隊の3分の2は国境線に待機させているとされるが、「スラブ人同士の戦争」でロシア軍兵士の士気の低下も十分に予想される。またもうひとつは、ロシア国内の「戦争反対」の世論の高まりである。
 「反戦・平和」という問題だけではなしに、ロシアの今年1月の物価上昇率は8・7%で、経済制裁の影響で通貨が下落し、インフレが加速する可能性が高い。ロシアの格差社会は日本の比ではない。生存権を脅かされる広範な人々が、プーチン政権を揺さぶっていく可能性もある。ロシア軍は撤退せよ!殺人者プーチンは退陣せよ!
(2月26日 高松竜二)
 
 
 
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