警察法改悪に抗議する!改憲・監視国家化を阻止しよう

国家警察復活
を許さない!
 岸田政権は、3月30日、国家公安委員会の任務・所掌事務として犯罪捜査を認め、警察庁の内部部局としてサイバー警察局の設置、サイバー特別捜査隊の発足に向けた警察法の改悪を参議院本会議で強行し、制定した。
 すでに22年予算では警察法改悪ありきで警視庁サイバー部隊設置に27億円を予算化しサイバー空間の脅威対処と称して、民衆管理と治安弾圧を強化しようとしている。さらにデジタル監視社会化の一環としてデジタル庁関連予算4720億円を計上し「デジタル田園都市国家構想」、日米安保体制下の米日共同軍事作戦態勢を土台とした「国家総動員法」とも言える経済安保推進法の制定を押し進めようとしている。必然的に国益防衛と称して、すでに特定秘密保護法、共謀罪を駆使して研究者、関連産業企業の労働者、留学生への監視に着手している。
 サイバー警察局の構築は、これまで都道府県が担っていた犯罪捜査に対して、国家公安委員会及び警察庁が「警察庁が当該活動を行う場合における広域組織犯罪等に対処するための措置に関する規定を整備する」「国際共同捜査」という日本帝国主義を支えぬく任務を強調し、基本的人権を軽視して強引に捜査権限をもってサイバー犯罪に対応すると宣言している。サイバー事案に対して生活安全局、警備局、情報通信局がそれぞれ対処していたがサイバー警察局に一元化し、サイバー企画課(情報の収集・分析)、サイバー捜査課(捜査指揮、海外治安機関との連絡)、情報技術解析課(データ解析)を設置する。
 セットでサイバー特捜隊(表向きでは約200人体制でスタート。全国を管轄し、国際共同捜査というスパイ捜査も含めて参加する)を発足させた。特捜隊は、捜査着手の基準として①国や地方公共団体、重要インフラに重大な支障が生じる場合②ウイルスなどの対処に高度な技術が必要な場合③海外のサイバー攻撃集団が関与したケースなどをあげて「重大サイバー事案」に限って捜査するとしている。いずれも多種多様なケース事例を想定しているはずだが不明のまま、誰が、どのような判断基準で発動するのかは捜査上の秘密を前面に出し厚いベールを張り巡らしている。
 戦前・戦中、内務省警保局下に特高警察を配置し、治安維持法によって民衆弾圧をやりたい放題やってきたが、戦後、治安弾圧法は廃止され、内務省、同警保局は解体し、国家警察から自治体警察へと再編され、1954年の警察法で警察庁─都道府県警察制度によって日本帝国主義国家を防衛してきた。また警察庁には捜査の指揮監督権限もなかったが、警察法改悪によってその権限を取り戻したことになる。まさに戦後の自治体警察制度の大改悪であり、中央集権に貫かれ、権限拡大へと暴走していく国家警察の復活だ。

人びとの日常
が脅かされる
 サイバー空間は表現の自由、通信の秘密など基本的人権が保障されなければならない。だがサイバー警察局は民衆のコミュニケーションに対して「合法」的に監視・介入し、手前勝手に事件化し、弾圧を広げていくことを狙っている。国家権力の権限強化につながるのだが、当然、それらを危険視する意見を踏まえて、二之湯智国家公安委員長は衆院内閣委員会で「現時点において、国の組織による捜査を重大サイバー事案以外の分野に拡大することは考えていない」などと答弁している。わざわざ身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」対策などに取り組みを強化するなどとコマーシャルし、存在意義を押し出す始末だ。
 さらに公安政治警察は、経済安保推進法(①特定重要物資の安定的な供給〈サプライチェーン〉の強化、② 外部からの攻撃に備えた基幹インフラ役務の重要設備の導入・維持管理等の委託の事前審査③先端的な重要技術の研究開発の官民協力④原子力や高度な武器に関する技術の特許非公開)の制定を前提に、連動して「経済安全保障戦略会議」を立ち上げ、早速、企業に対して「過去に摘発した産業スパイやサイバー攻撃による情報窃取の手口を伝えるなどとして警戒を促す取り組みを広げる。警察の情報を積極的に活用し、民間の対策に生かす」(日経21・12・1)ための工作を開始し、他国協力者の事前摘発も射程にして弾圧態勢を築こうとしている。このシステムにサイバー警察局を組み入れフル回転させようとしている。
 公安政治警察の経済安保推進法に傾斜した「活躍」は、すでに数々の冤罪事件を発生させている。例えば、警視庁公安部は、機械メーカー・大川原化工機の社長・幹部3人を外為法違反容疑(不正輸出)で逮捕した(20・3)。容疑は生物兵器の製造に転用できる噴霧乾燥機を、ドイツ企業傘下の中国の子会社に無許可で輸出したとでっち上げた。社長らは11カ月も不当に勾留され、1人は勾留停止中の入院先で、ガンで死去している。
 ところが2021年7月、突然、東京地検は「兵器転用可能な技術か疑義が生じた」「起訴時点の証拠では軍事転用可能な技術と判断したが、結果的に疑義が生じ、反省すべき点があった」とふざけたコメントを出して起訴を取り下げた。東京地裁は8月2日に公訴棄却を決定した。
 そもそも噴霧乾燥器の規制要件のひとつは「定置した状態で内部の滅菌又は殺菌をすることができるもの」(大川原化工機国賠訴訟弁護団)だから「結果的に殺せる菌が1つでもあればよいのだ」と殺菌理論を作り上げて実験を繰り返したが、結果的に「完全な殺菌はできない」ことが判明していた。地検はこれらの証拠が公判に提出されたら公判維持ができないと判断せざるをえなかった。
 まさに経済安保で「活躍」する公安警察を押し出すために、その生贄として大川原化工機をセレクトし、見せしめの打撃を与えたのである。当時の安倍政権は、「世界最先端IT国家創造宣言」をぶち上げ、「世界最高水準のIT利活用社会を実現する」成長戦略をアピールしていた。この流れに公安政治警察は便乗し、権限と利権拡大に向けた手柄をあげ、組み込んでいくための好都合な事件としてでっち上げたのである。

監視社会化に
反対の声を!
 大川原化工機は、公安の不当性を糾弾する国賠訴訟を東京地裁に提訴した(2021年9月8日)。また、刑事補償請求では、東京地裁が長期の勾留に対し計1130万円の支払いを決定した(21・12・7)。
 大川原化工機事件の詳細と公安の「活躍」については、『世界 2022・3月号』(町工場 vs 公安警察─ルポ 大川原化工機事件/青木 理(ジャーナリスト))でレポートされている。このようなでっち上げ事件は、経済安保推進法の制定後、多発化する可能性がある。公安政治警察は、証拠と称して企業間のメールのやり取りも含めて事前に収集し、摘発し、事件化していく危険性が強まっていく。
 小林鷹之・経済安全保障担当相は、セキュリティクリアランス(SC制度/情報を扱う人の適格性、個人情報調査)の導入が検討課題と強調し、「民間の方でも国家公務員と同じ守秘義務が課せられるようになり、その分深い連携ができるようになります。これは罰則付きで、違反すれば1年以下の懲役、50万円以下の罰金となります」(「正論」2022・5月号)と明らかにしている。経済安保推進法が治安弾圧体制の強化とセットであり、その中軸システムとしてサイバー警察局を組み込み、サイバー犯罪対策(不正アクセス行為、コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する犯罪、ネットワーク経由の公序良俗に反する行為)を宣伝しながらサイバー監視
・検閲を拡大させ、労働者・市民の集会、結社、言論など表現の自由を弾圧するために広く網をかけていくことは必然だ。
 市民に対する日常的監視、人権侵害につながる警察法改悪を糾弾する! 警察監視国家化、憲法九条改悪を通したグローバル戦争国家体制作りを許さず、社会的に暴露し、抗議していこう。    (遠山裕樹)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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