7月参院選で何が問われているのか(1)

気候危機と真正面から闘い脱炭素・脱原発社会を本気で実現する政治潮流と運動を!

エコ社会主義に向けた挑戦を

 参院選に向けた政策提言を今後、「かけはし」紙上で公表する。第1回目は「気候危機をどのように克服するか」。(編集部)

 今年7月におこなわれる予定の参院選は、さまざまな点で決定的な選挙となるだろう。そのうちの一つが気候危機をどのように克服するのか、そのための道筋をどのようにつけていくのかという緊急の課題である。
 私たちは、3年前の参院選にあたって、「気候変動阻止、二酸化炭素排出ゼロ社会の実現、原発全廃を掲げる候補の当選を!」という主張を掲げた。しかし、気候危機をめぐる状況は、そのときと比べても悪化の一途をたどっている。

ますます深まる気候危機とエコロジー危機

 IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)第3作業部会の第6次報告書が最近公開された。それによると、パリ協定で目標とされた産業革命前からの気温上昇幅を「1・5度」に抑えるためには、遅くとも2025年までに世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにする必要があるだけでなく、2030年までに排出量を19年比で43%削減、50年までに同84%削減しなければならないとされる。また、報告書は、石炭火力発電を含む化石燃料関連のインフラについては、既設や現在計画中の設備を耐用年数まで使い続けると、1・5度に抑えるために許容される累積CO2排出量を超えると警告している(『毎日新聞』4月5日電子版)。
 昨年11月にスコットランドのグラスゴーで開かれたCOP26は、「1・5度」に抑えるための道筋を確定させることに失敗した。COP26に提出された各国の削減目標(NDC)をそのまま実現させたとしても、2030年の温室効果ガスの総排出量は2010年よりも13・7%増加することになり、今世紀末の気温上昇が「1・5度」どころか2度を優に超えるという見通しである。
 「グリーン資本主義」の旗印のもとで、盛んに喧伝されているいわゆる「ネットゼロ」(排出量実質ゼロ)は、排出枠取引によるカーボンオフセット(排出量相殺)とCCS(CO2回収・貯留技術)に依存している。CCSはまだ未完成の技術であり、大きな危険をともなう。水素やアンモニアの利用も現段階では排出量の絶対的削減にはつながらない。われわれが目標とすべきなのは、ネットゼロではなく、排出の絶対量を削減する「リアルゼロ」でなければならない。
 また、資本主義システムのもとでの資源略奪主義と工業的農業・漁業は、グローバルサウスの生態系を破壊し続けている。アマゾンの熱帯雨林破壊はその典型である。加えて「グリーン資本主義」に必要なレアメタルの採掘量は膨大なものとなり、エコロジー危機を加速していくことになる。

選挙の争点としての「気候危機」「温暖化対策」


 3年前の参院選で、私たちが「気候危機」にどのようにとりくむのかを選挙の大きな争点として提起したのは、グレタ・トゥーンベリさんによる「気候危機は危機として扱わなければならない! 気候問題は選挙の最大の争点である!」という呼びかけに応えてのことだった。
 グレタさんは、気候の問題を本気でとりくもうとしない政治に対して、2018年8月から毎週金曜日に学校を休み、スウェーデン国会前で政治家がもっと気候変動を食い止める政策を実行するように訴えた。この一人から始めた運動が、「フライデー・フォー・フューチャー」として知られる世界的な学校ストライキと若者たちの気候正義を求める運動へと発展したのである。
 この運動は、新型コロナウイルスのパンデミック(これ自身が気候危機や生態系の破壊の一つの結果だった!)によって、持続して発展することを妨げられたが、まさに、グレタさんが言うように「気候問題は選挙の最大の争点」であり続けているし、そうでなければならない。
 昨年の衆院選では、ようやくいくつかの政党が「気候」問題を自らの選挙政策の中で大きく取り上げた。共産党は、選挙戦での中心的な訴えである「4つのチェンジ」の中に、「暮らし」「平和」「ジェンダー」とともに「気候」を加え、はっきりと争点の一つとした。社民党も、6項目の重点政策の3番目に「地球環境と人間の共生」を掲げ、「2050年までに自然エネルギーへの完全転換や温室効果ガス排出ゼロを達成します」とうたっている。立憲民主党は、7項目の政権政策の3番目に「原発に依存しないカーボンニュートラル」を掲げた。
 しかし、この問題が衆院選の争点として大きく浮上し、「気候」危機に対する政策によって投票行動が左右するという状況にまでは到底至らなかった。来るべき参院選においては、まさにそのような状況を作り出せるかどうかが問われている。

問題の真の解決はエコ社会主義社会の実現に

 「気候」危機を選挙戦の争点にする上で、私たちの立場として明確にすべきことは、既存の資本主義システムの中では決して「気候」危機の解決があり得ないということである。
 すでに気候正義(クライメート・ジャスティス)を求める世界的な運動の場においては、「システムを変えよう!」というスローガンが一般的になっている。このシステムとは、資本主義の生産・消費・分配のシステムであり、資本の蓄積と利益を至上命令とする資本主義のもとでは、人間と地球の生き残りでさえも脇に追いやられるのだ。資本主義は、人間の滅亡と地球の破壊のその瞬間まで利益追求をやめないのである。「グリーン資本主義」という旗印は、そのことを覆い隠すための仮面でしかない。
 したがって、社会のシステム全体の転換、つまりエコ社会主義社会の実現に向けて戦うことが重要であることを明確にした上で、どのような政策とスローガンを提起していけるのかが問われているのである。

排出量の削減に責任を持つべきなの
は富裕層と巨大多国籍企業である

 しかも、現在の温室効果ガスの排出について言えば、その排出の圧倒的部分が富裕層と巨大多国籍企業によっておこなわれている。「世界人口のうちもっとも金持ちの1%に属する人々が排出するCO2量は、もっとも貧しい50%の人々が排出するCO2量の約2倍に相当する」「1%の世界排出量のシェアは、1990年の13%から2015年には15%に上昇し、2030年には16%に達する見込みである。それは1990年比で25%も増加し、世界平均よりも16倍も高い」(「公正な脱成長というエコ社会主義綱領」、本紙4月4日号)。
 その結果、所得が大きければ大きいほど、削減しなければならない排出量はその分多くなければならない。「1・5℃以下に抑えるということは、2030年に人類が1人当たり平均2・3トン/年のCO2を排出することを意味する。・・・(それを)達成するためには、1%に属する人は排出量を30分の1にする必要があり、最貧困層の50%の人は3倍にすることができる」(同上)。つまり、「気候のための闘いはもっとも直接的な意味での階級闘争、富裕層と貧困層との間の闘い」(同上)なのである。
 つまり、温室効果ガスの排出にもっとも大きな責任を持つのは富裕層であり、さらに言えば、現在の資本主義システムの中枢に位置するエネルギー、運輸、アグリビジネスなどをはじめとする巨大多国籍企業なのである。

原発は気候危機の解決策ではない


 加えて明らかにしなければならないのは、原発は決して気候危機の解決策にはならないし、脱炭素と脱原発は不可分の課題として追求しなければならないということである。原発は、最終処分できない膨大な放射性廃棄物の蓄積によって、環境破壊の可能性と膨大な管理コストを次世代にツケとして先送りし、原子炉事故の危険性(自然災害や戦争はその可能性を増大させる)を常に抱え、その結果は破滅的であるという意味で、人類と地球の未来にとっての災厄以外の何物でもない。
 原発の運転停止や石炭火力発電の廃止によってエネルギー供給の不足が生じるならば、それは原則として、有害な生産(武器がその典型)あるいは不必要な生産(基本的な生活ニーズを満足させる以外の商品生産、大規模な工業的農業を含む)を停止、縮小させることによって対応すべきである。現状のように、湯水のごとくエネルギー消費を続けることは、もはや人類と地球にとって持続不可能だからである。

気候危機と闘い、脱炭素・脱原発社会を実現する政治潮流と運動を構築していこう

 気候危機への対処よりも経済活動を優先する(つまり、大企業の利益を優先するということだ)自民党、公明党、日本維新の会などに対しては、はっきりと「ノー!」を突きつけなければならない。
 と同時に、気候危機に積極的にとりくむことを政策の中で明らかにしている立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組などに対しては、その本気度が試されていることを強く迫っていく必要がある。そして、参院選を通じて、気候危機と真正面から戦い、脱炭素・脱原発社会を本気で実現する政治潮流と運動を作り出すために、私たち自身もさまざまな関わりの中で引き続き奮闘していかなければならない。    (大森)

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