7月参院選で何が問われているのか(2)

労働者・市民の生活と権利を守り発展させるために何が必要か

  1. 労働者に負担を押し付ける政策を拒否しよう

 バブル崩壊以降、30年以上にわたって継続する不況。この間労働者の賃金は下がり続けた。日本の賃金はG7の中で最下位であり、ОECDの中でも低水準グループとなっている。一方で社会保障費負担は上がり続けた。福祉のための財源にするとされた消費税は、今や10%となっているが、医療・介護などのサービス水準は下がり続けている。その結果としてコロナ禍は今まで綱渡りのような暮らしを強いられてきた人々の生活を破綻させた。なかでも非正規・不安定雇用が多い女性の自殺者は2年連続で増加し、昨年は7千人を超している。
 そこに今、急速に進む円安による物価の高騰が人々を襲っている。22年1月には1ドル114円だった相場は4月下旬にはあっさり130円台を突破した。原因は低金利を維持しようとするアベノミクスだ。日本は小麦、食用油など食品や、原油、天然ガスなどの多くを輸入に頼っている。そのため円安による輸入価格の上昇が続いている。日銀は、4月下旬時点で今後の物価の上昇を1・9%と予測している。物価高騰の痛みは平等に人々を襲うわけではない。所得の多くを身近な食料品や生活必需品に費やさざるを得ない低所得者ほど痛みは大きい。そして円安の恩恵を受けるのは一部の輸出大企業だけだ。
 コロナ危機で明らかになったアベノミクスの破綻をウクライナ危機が加速している。これが日本の現状だ。今後さらに貧困は深刻化し格差は拡大し、このままでは自殺や餓死としてさらに労働者の命を奪うだろう。
 私たちが生き延びるためには、今の政治を転換させるしかない。参院選をそのための契機にしよう。

2. 産業構造の転換で誰もが生活の安定を

 1円でも安く商品を作り欧米に売りさばくという日本の成長モデルは、すでに破綻していた。非正規雇用の低賃金で生産コストを抑え、円安を利用して海外に売る。本来ならば労働者の抵抗によりこのモデルは修正を余儀なくされるはずだった。ところが労働運動の弱体化に乗じて、どこまでも労働者に負担を押し付けることで資本は生き延びようとした。その結果、とにかくコストをカットすること、目先の利益を生まないものを切り捨てる風潮が日本を覆った。その行きついた果てが、JR西の福知山線の事故であり。3・11の原発事故であり、コロナ禍の医療崩壊であり、知床の観光船事故である。コストカットは短期的には収益をアップさせるかもしれないが、最終的には労働者や利用者の命をカットする。その結果、産業だけでなく、医療、教育など社会のすべてが、持続可能なものではなくなってしまった。
 この行き詰まりは、どのようにして解決できるのだろうか。まずは、労働者の賃上げが必要だ。働く者の生活が成り立たないような賃金では暮らしは改善しない。しかしここで考えなければいけないのが気候危機、環境破壊だ。今までのような、大量生産、大量消費で経済を回すことは、もはや地球環境が許さない。先進諸国や富裕層が大気にこれ以上の二酸化炭素を排出することは許されないし、プラスチックなど自然に還元されない商品を生産し続けることも同じく許されない。今、私たちに求められているのは、原子力発電はもとより産業構造の大きな転換だ。
 キーワードはケアだ。今までないがしろにされてきたケア産業を大きく育てていかなければいけない。医療、保育、教育、介護などケアが公共サービスとして充実され、そこに大きな雇用を生み出していくことが必要だ。良質なケアが提供され、誰もが安心して暮らしていける社会を実現しなければならない。しかもケア産業は低炭素だ。
 円安が暮らしを直撃している。その原因がカロリーベースで38%しかない食料自給率だ。急激な円安は食料品の高騰を招き低所得者の暮らしを直撃する。食料を他国から化石燃料を使った輸入に頼ることは地球環境の点からも許されない。また気候危機による飢饉が発生している時に、国内生産をないがしろにして輸入に頼ることは倫理的にも許されることではない。ここでもキーワードはケアだ。環境に負荷をかけない家族農業・漁業の保護と育成が早急に必要だ。

3. 科学的知見に基づいた新型コロナ対策を


 新型コロナウイルスによるパンデミックをどのように克服するのか。この問題は私たちの今後の暮らしのすべてに影響を与える。新型コロナウイルスは、まだ実態が解明されていない。感染しても軽い症状で経過した人が、重篤な後遺症に襲われることがある。だからこそ、感染を抑え込むことを基本に、対策は科学的知見に基づいた対策が必要である。
 また新型コロナの感染拡大は、保健所などの公衆衛生、そして医療体制の脆弱さを浮き彫りにした。保健所体制の強化、ICU病床の拡充など医療体制の強化が必要だ。

4. 早急に実施するべき政策

 1)電気・ガス価格の抑制、公共交通機関の拡充

 原油や天然ガスの輸入価格が上がるに任せて電気、ガス、灯油料金が値上げされたら暮らしはたちまち破綻する。夏の異常な高温時にクーラーを使用できない、冬の厳寒時期に暖房を使用できないことによる熱中症や低体温症による死亡を避けるためにもこれら料金は最低でも据え置かなければいけないし、引き下げなければいけない。また公共交通機関が廃止されてきた地方では自家用車がなければ生活できない。ガソリン価格の高騰は地方での生活を危機に陥れる。だからこそ、なにより公共交通機関の充実を実現する必要がある。そのうえで、ガソリン価格を抑制する必要がある。

 2)消費税の廃止、インボイス導入阻止、累進課税・法人税の強化

 賃金が上がらないままの物価の高騰から暮らしを守るためには、消費税を廃止するのが一番の近道だ。消費税は福祉のためと税率が上げられて来たが、実際は法人税減税の穴埋めにされてきた。消費税を廃止し法人税率と累進課税を強化しなければならない。また金融所得の課税を強化するべきだ。インボイス制度は、今まで消費税を払う必要がないとされてきた年間売り上げ1000万以下の零細業者、一人親方、フリーランスからも消費税分を、最悪二重取り出来る制度だ。先行して導入されたEUでは、中小零細業者がほぼ淘汰された。

 3)最低賃金を全国一律1500円以上、非正規雇用の原則廃止、労働者派遣の廃止、年金の拡充
 貧困を解決するには労働者の所得を直接に増やすことが必要だ。とりわけ低賃金に置かれているケア労働者の賃上げを。その効果は、良質なサービスとして私たちの暮らしを豊かなものにするだろう。

 4)生活を支える公共サービスの充実 無償の公立の住宅・医療・保育・教育・介護の充実

 貧困を解決するもう一つの方法が、無償の公共サービスを充実させることだ。お金がなくても人権を支える基本的なサービスが受けられる社会を目指さなければならない。憲法25条は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている。今こそ生存権を実態あるものとしなければならない。ましてや大阪のように、基本的な公衆衛生サービスの欠陥により新型コロナによる死亡率が高いなどというようなことがあってはいけない。

 5)科学的知見に基づくコロナ対策、保健所機能の強化、ICU病床拡充など医療の強化

 PCR検査の拡充による早期の感染者の保護・医療の提供。この体制を早急に確立することが必要であり、5類感染症への引き下げは、感染のまん延をもたらすだけである。
 医療体制を強化するためには、医療費削減政策を転換し、急性期病床の削減を中止し、医師、看護師養成数の増員、労働条件の改善が急務である。
       (矢野 薫)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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