7月参院選で何が問われているのか③
軍拡と9条改憲を阻止しよう
ロシア軍のウクライナからの無条件全面撤退と停戦を!
戦争・差別・暴力のない社会へ
ウクライナ民衆
の抵抗闘争に連帯
「戦争をしてはならない。戦争をさせてはならない」ということを、ロシア軍によるウクライナへの侵略戦争は改めて私たちに突きつけた。ミサイルや砲弾などによって、ウクライナの町並みは次々に破壊されている。病院も学校も避難所も攻撃を受けている。そして子どもたちや女性、老人をはじめ非武装の市民も殺されている。さらにロシア軍兵士による、女性に対する性暴力、そして略奪行為が報告されている。
こうした戦争による凄惨な暴力と破壊は、ウクライナに限ったことではない。近年のアフガニスタン、イラク戦争、シリア内戦、イエメン内戦や、ユーゴスラビアやアフリカなどでの内戦でも、そして内戦状況になっているミャンマーでも、同様の行為が繰り返されてきたのである。しかし残念ながら、国際的な反戦運動を基礎とする、世界的な戦争抑止のための民衆的な力と秩序を構築することができていない。そうした中で、次々と新たな戦争と悲劇が繰り返される。それが今の世界の現実なのだ。
プーチンのロシアは、今回の侵略戦争で「非ナチ化」「非ウクライナ化」「ウクライナのロシア化」という言葉を多用している。これはプーチンの汎スラブ民族主義と大ロシア主義を根拠としている。プーチンは分離を含む自決権をソ連邦を構成する諸民族に認めたレーニンを糾弾している。プーチンにとってウクライナは、存在してはいけない「国家」なのである。だからウクライナの言語を始めとしたアイデンティティーを消し去ろうとしているのである。そしてそれに抵抗するウクライナ人も消し去ろうとしているのである。
そこにはかつて朝鮮に対しておこなった、日本帝国主義の植民地政策と重なるものがある。日本帝国主義は「朝鮮の日本化」のために神社を建て、日の丸を振らせて、朝鮮人から言語と名前を始めとしたアイデンティティーの一切を奪い取ろうとしたのであった。しかし「日本化」を進めたからといって、日本人と同等の権利や身分が朝鮮人に保障されたわけではなかった。強制連行や軍隊「慰安婦」などで明らかなように、「朝鮮の日本化」の実態は「朝鮮人の奴隷化」であった。プーチンはウクライナの人々に対して、これと同じようなことをおこなおうとしているのである。
ウクライナ民衆のロシア帝国主義による侵略戦争に対する闘いは、ウクライナの自決権をかけた抵抗闘争であり、私たちはその闘いを支持し、連帯する。ウクライナの人々は軍事的な抗戦だけではなく、ロシア占領軍に対する抵抗運動、「難民」となった人々への物的・精神的支援など、あらゆる領域で抵抗闘争を展開している。ロシア軍のウクライナからの無条件全面撤退と、停戦を要求しなければならない。
世界的な不平等・搾取・
抑圧を終わらせよう!
ウクライナ危機に便乗して、安倍晋三元首相や自民党安全保障調査会長である小野寺五典元防衛相らが、日本の軍拡を主張する声を高めている。安倍はロシア軍によるウクライナ侵略戦争が開始される以前から、「台湾有事は日本有事だ」と発言していた。要するに「米日が中国と戦争することになる」と、危機を煽ることで「敵基地攻撃能力」の保有を求めたのである。
ウクライナ危機の直後、次に安倍が考えたことは、非核三原則を放棄して米軍の核を日本に配備するなどして、日米で核を共有しようというドイツ方式だった。中国を米軍の核で威嚇すればよいというわけだ。
米国の年間軍事予算は約80兆円である。これは日本の防衛費の約15倍であり、世界で断トツである。米軍は世界中に基地を保有し展開しており、NATOの軍事費の70%は米国が支出している。日本でもざっと上げるだけでも、三沢、横田、横須賀、厚木、座間、岩国、佐世保、そして嘉手納など沖縄にも多数の基地を保有してきた。同時に米国は軍需産業を巨大化させてきた。
軍事同盟諸国に対して、軍事予算を少なくとも「2%まで上げろ」と要求したのはトランプだった。それは「米国の軍事費に頼るな」ということであり、また「米国の武器を買え」ということでもあった。またトランプは、ドイツのメルケルに対して「ロシアにガス代を支払うカネがあるのなら、軍事予算を上げろ」と注文を付けている。同じ極右仲間としてプーチンに応援されていたトランプは、プーチンの思惑をよく理解していたのかもしれない。現在、米国軍需産業の最大の「顧客」は、イランと対立しオイルマネーで稼いでいるサウジアラビアと、言い値で買い取ってくれる日本である。
米国は「冷戦の勝者」であり、その後のグローバル資本主義の下で、情報通信産業への産業再編競争の勝者となったのも米国であった。中国はそうした状況のなかで「世界の工場」という位置を獲得することで、資本主義的な飛躍を実現させたのである。しかし昨年8月のアフガニスタンからの米軍の撤退は、米国による一強支配の時代の終焉を象徴するものとなった。米国は2001年9・11同時多発テロを契機に開始した「テロとの戦争」に勝利することができなかったのである。
しかし、世界にとんでもないほどの格差と貧困、差別と不平等、民主主義のかけらもない抑圧があり続ける限り、民衆の生存と民主主義のための闘いは続き、また「テロリスト」も際限なく再生産されるのである。電気自動車企業テスラのCEOであるマスクの資産が27兆円だということが明らかになった。一方で、飲まず食わずの世界の難民は約3000万人と言われている。強者と富者のやりたい放題のグローバル資本主義を終わらせて、世界的な不平等をできうる限りなくしていく社会を実現しない限り、戦争も「テロ」もない世界を築き上げることはできないのだ。
日米安保を破棄し、
在日米軍基地の撤去を!
日本国内に展開する、とりわけ沖縄に集中する米軍基地と米軍部隊は、明らかに中国に対する軍事的対抗を意図したものである。その米軍部隊と日本自衛隊の一体的運用、「有事」における米軍指揮下での自衛隊の出動は、憲法9条を無視する形で法制化され、実戦力化されてきた。そして「中国の軍事力強化」を口実として、米軍基地の強化と自衛隊の南西諸島、沖縄への展開が加速している。
先月、共産党の志位委員長は党の会合で「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する」と発言している。日本の再軍備とセットで実施されたレッドパージは、思想に対する弾圧であり、明確な憲法違反であった。その弾圧を一身に受けたのは当時の共産党であった。そうした歴史をもつ共産党の委員長が、このような発言をするとは信じがたいことだが、ウクライナ侵攻をめぐる軍拡・改憲論者の主張に半ば屈服するものとして、厳しく批判されなければならない。自衛隊は「国民」を守るために作られたのではない。
自衛隊は「共産主義」から日本を守るために、そして他国にとって最大の脅威である在日米軍とその基地を守るために作られたのである。秋田と山口に配備されようとしていたイージス・アショアは、そうした米国の思惑を鮮明にさせた。朝鮮民主主義人民共和国のミサイルから、ハワイとグァムの米軍基地を日本の自衛隊に防衛させようとしていたのである。
こうして見てくると、日本の平和にとって米軍基地と米軍部隊の存在が、大きな脅威となっていることがわかる。そして「戦争をしてはならない」もうひとつの問題は、原子力発電所の存在である。狭い日本の国土に50基以上の原発が存在する。その内の3~4基でも破壊されれば、日本全土が放射能によって汚染されて、生活できない場所となってしまうのである。福島原発事故をはるかに上回る、大惨事に見舞われることになる。ウクライナに対するロシアの侵略は、この原発と戦争の問題を私たちの前にリアルに突きつけたのである。
敵基地を攻撃できる「反撃能力」を保有することや、米国と核を共有することや、軍事費をGDPの2%に引き上げることで、日本の平和を守れるわけではない。近隣諸国に脅威を与えてきた米軍基地と米軍部隊の存在は、東アジアにおいて、非核・平和のための包括的システムを具体的に構築するための最大の障害に他ならない。
私たちが実現しなければならないことは、日米安保を破棄し、すべての在日米軍基地を撤去すること、非核3原則を保持し、核兵器禁止条約を即座に批准することである。そして在日米軍を守るために作られた憲法違反の自衛隊の合憲化に反対して、9条改憲を阻止することである。
(高松竜二)
THE YOUTH FRONT(青年戦線)
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