若者たちの参議院議員選挙

各政党に求めた気候変動・エネルギー政策
社会を変えていく闘いだ
声を上げた人を孤立させない

eシフトの要望書

 4月26日、eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)と Fridays for Future(FFF)の8つの地域グループは、7月の参院選を前に各政党に「気候変動・エネルギー政策に関する要望書」を提出。要望書の内容をもとに各党との意見交換を実施した。
 eシフトは福島第一原発事故後に結成した、環境問題や脱原発に取り組んできた市民団体や地域グループと個人のネットワークだ。FFFは、2018年に当時15歳のグレタ・トゥーンベリが、気候変動に対する行動の欠如に抗議するために、1人でスウェーデン国会前に座り込みをしたことをきっかけに始まった運動で、今回の行動には札幌、福島、埼玉、東京、横浜、横須賀、滋賀、大宰府の8つの地域グループが参加している。
 福島事故後11年が経過し、eシフトでは特に気候正義の行動やキャンペーンを続けてきた国際環境NGO FoE Japanなどが主導し、これらの行動などに参加してきた地域のFFFが共同して実現した。両グループは、昨年グラスゴーで開催されたCOP26でも行動をともにした。日本各地で開催されてきた報告会でグラスゴー報告を行っている。本紙では、さようなら原発実行委員会の集会報告として、中高生や大学生が集うFFF活動家が直面した親との関係を報じた(2690号)。中高年男性が主な読者であるだろう左翼系雑誌がインタビュー記事などで「ジェネレーション・レフト」などの特集を組んだことも紹介した(2695号)。わたしたちや読者層の子や孫の世代に社会運動を最低限知らせ続けなければ途切れてしまうとの危機感があったからだ。
 5月21日に東京で開催された ATTAC Japan首都圏の「2022年度総会講演会〜気候正義と気候危機〜」では、FоE Japanスタッフの深草亜悠美さんが講師をつとめ、運動の課題のひとつとして「家父長制の克服」を重要なテーマとしてとりあげた。
 5月25日発行の「ふぇみん(婦人民主新聞)」を開くと4面に「我慢しない、声を上げた人を孤立させない」という記事が掲載されていた。執筆者が地元の反原発運動に参加したら「年長者たちに外見を揶揄されるのだ」などの自身の経験、「市民運動内ハラスメント、もうやめよう」というビラを作成し、運動グループ内で配布して読んだ人の感想などが書かれていた。この記事を読み終え、1面に目を通すと最終段落「運動をしている中で性差別的な経験をしたこともある」と書かれている。1面の筆者は旧優生保護法問題や気候変動問題でも活動する大学4年生だ。
 三里塚闘争のなかで起こした「ABCD問題」や第4インター日本支部としての「組織内女性差別問題」が現代に起こしていたら、そのように「かけはし」紙上で伝えただろうか。そう考えながらも若者たちの行動の紹介にもどる。いずれもeシフトのホームページでの報告の紹介だ。http://e-shift.org/

気候変動・エネルギー政策に関する要望書

 要望書のうちの要望内容をそのまま列記する。
(1)老朽原発を含め全ての原発を停止し、再稼働はしない。核のごみを増やさない。新増設・リプレース計画および次世代炉の開発を中止する。原発事故被害者の生活再建の施策を具体化する。東電福島第一原発の「中長期ロードマップ」を早急に見直して「廃炉」の姿を明確にし、地下水流入を止め、放射能汚染水の「海洋放出」を中止する。
(2)石炭火力発電は例外なくすべてを2030年までにフェーズアウト(廃止)し、新設・リプレースは認めない。アンモニア・水素はその製造や輸送に多大なコストがかかり、CO2削減効果も限られている。火力発電の脱炭素化ではなく、脱却を目指すべき。
(3)エネルギー効率の向上、住宅・建築物のZEH/ZEB化(省エネ率7割以上および太陽光発電)、交通部門の脱炭素化(コンパクトシティ、ZEV化)などの施策を大きく進め、2030年までに最終エネルギー消費を半減、2050年までに7割削減する。2030年までの温室効果ガス削減目標を2013年度比で少なくとも60%以上とする。
(4)送配電網の運用ルールなどの問題を解決し、2030年の再エネ導入目標を少なくとも70%以上(電源)に引き上げる。電源の再生可能エネルギー100%を実現する時期を明記し、2050年に向けてエネルギー全体でも再エネ100%を目指す。
(5)エネルギー政策関連の審議会委員の多様性を確保する。またパブリックコメントだけでなく市民参加の機会を複数設定する。

8党の政策の違いは何か


 8政党の順は、意見交換した日にち順(5月12日から31日)とした。N党は「連絡先が明記されていない」ため、要望書は提出していない。筆者の主観でeシフトの報告を要約した。
 社会民主党、服部良一幹事長が対応。マニフェストは作成中で、地球環境と人間の共生を掲げる政策を5項目で書いている。石炭火力は2030年ゼロ、水素活用については、議論中。全体としてグリーンニューディール、グリーンリカバリーを打ち出している。脱原発と地域経済、再生可能エネルギー活性化などを進めていく。地域分散型のエネルギーをつくっていく必要がある、という認識。
 自由民主党、秋本真利衆院議員が対応。党の政調には伝える。。実際政権与党は自民党・公明党で構成されているので、与党に届けることが重要。できる限りみなさんの声に近くなるように努力する。水素・アンモニア、CCS(二酸化炭素回収・貯留)、原発は将来、コストが合わないのであれば、なぜ導入するのか説明が必要で確実な技術導入が現実的だというのが秋本の考え。
 国民民主党、対応は浅野哲衆院議員。国民生活を支えるための安定供給の確保に重心を置いた議論が進んでいる。原子力はピュアなカーボンニュートラル電源ではないが、既存の化石燃料に比べれば排出量は少ない。選択肢から即座に排除されるものではない。石炭火力は2030年までに廃止となると産業界がそれでもつのか、という懸念がある。
 立憲民主党は山崎誠衆院議員、田嶋要衆院議員、近藤昭一衆院議員らが対応。大きな方向性としては、原発・化石燃料から再エネ省エネへ。水素・アンモニアは実現できていないしコストが合わない。2030年度、再エネ50%・LNG50%の組み合わせで安定供給可能。「未来世代法」を検討、国会という意思決定の枠組みに、若者の声を入れていくことを考えていきたい。
 日本共産党は笠井亮衆院議員、岩渕友参院議員、武田良介参院議員らが対応。気候危機を打開する2030年戦略を昨年9月1日に発表、2010年比で50~60%の排出削減。100%国産の再エネへ、原発ゼロ、石炭火力ゼロ。国民的な課題で、社会システムを大きく変えることなしにはできない。アンモニア混焼は石炭火力延命策ともいえ懸念。原発では汚染水海洋放出も選挙の大きな争点にしていきたい。
 公明党、角田秀穂衆院議員が対応。原発は建て替え・新設には反対。再稼働は地元の同意が得られたものについて、再エネが安定するまでの稼働はやむを得ない。廃棄物処理の技術開発が必要。水素・アンモニアは見極めが大事。政府としてカーボンニュートラルは昨年言い始めたばかり。今後10年で150兆円の投資が必要という数字もでた。民間と国で投資する。
 日本維新の会、対応は小野泰輔衆院議員。原発は基準をクリアしたものについては再稼働すべき。前回衆院選から転換。新設はロシアと中国しか継続しておらず、自由主義陣営において技術を持ち、なんとかすべき。再エネは蓄電池の普及が重要、国家戦略とすべき。規制緩和を行い、再エネが導入されやすい環境を作る。
 れいわ新選組、櫛渕万里衆院議員が対応。脱原発・グリーンニューディールに200兆円規模の財源確保。廃炉ニューディールで地域の経済と雇用を守る。積極財政で景気をあげる。CCSとアンモニアはやるべきではない。環境政策に資する公共事業をしっかりやる。投資しながら雇用と地域活性化を進める。送電網を国が買い上げ、託送料金や空き容量の規制を取っ払っていく。エネルギー自給率の低さは災害、戦争時に脆弱、自国の自然エネルギーでエネルギー自給率を高める。

シングルイシューから複合した課題解決へ


 前田俊彦さんと高木仁三郎さんは共著の『森と里の思想』(1986年10月/七ツ森書館)の中で、シングルイシューの運動の利点を語り合った。都市の周縁地域(森と里)では一つの課題をとことん話し合う空間や時間の余裕があり、強靭な運動体をつくる環境がある。三里塚や反原発現地闘争の経験からふたりが考えついた〝都市型運動には弱点がある〟という指摘でもあったのだろう。
 ふたりが語り合った囲炉裏端のような環境から一転し、通信手段の劇的変化で運動スタイル、ひとつの運動が解決する課題の範囲も激変しているのは事実だ。だが、時代の変化ばかりではなく、過去からひきつぎ解決できなかった課題に新しい課題が加わっているのではないか。
 先述したように、気候正義の闘いを続ける若い世代は、家父長制や運動内のパワハラや性差別といった交差した課題での闘いも背負っている。気候危機の問題と同じく、家の中や運動内だけでは解決できる問題ではなく、社会を変えなければならない運動として闘われていることを理解し、参議院選に向かおう。
    (6月3日 KJ)

ZEH/ZEB(net Zero Energy House/Building)とは消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した住宅/建物。
ZEV(Zero Emission Vehicle)は排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車。

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