9条改憲とセットの攻撃的軍事政策

先制的攻撃に踏み込む自衛隊

全力をあげて阻止しよう

「専守防衛」か
らの転換だ!

 いま岸田自民党政権の下で、「憲法9条改悪」を先取りする形で、歴代自民党政権の安保・軍事政策をも先行的に変質させる攻撃的軍拡政策へ大きく舵が切られている。そのあり方は5月16日以後、予算国会閉会まで毎週月曜日の夜に「総がかり行動実行委」が行った首相官邸前行動の呼びかけでもリアルな危機感をもって示されていた。
 この行動への呼びかけ文は次のように述べている。
「岸田内閣は従来の政府の路線を大きく転換するために、年内に防衛3文書(『国家安全保障戦略』、『防衛大綱』、『中期防衛力整備計画』の改定を企てている。自民党の『提言』はその転換を主導する狙いがある」「従来日本政府がとってきた『専守防衛』では、相手から武力攻撃を受けた場合に、初めて防衛力を行使するものであり、それは『必要最小限の行使』であり、言い訳ではあるにしても、装備も『必要最小限』のものに限っていた。……これに対して今回の提言の『反撃能力』はそうではなく、従来の専守防衛とは異なり、『敵の第一撃』を甘受することは想定していない」。
 つまり「敵の第一撃」を甘受せず、「敵」に対する「先制攻撃」の可能性を米国と共有する、すなわち「やられる前にやる」という侵略の論理を正当化するところにまで踏み込んだ、ということをハッキリと語っているのだ。
 4回にわたったこの行動は首相官邸前に毎回150人前後と、多くの人びとが参加したとは言えないものがあったが、次につなぐための必要な一歩という役割を果たしたというべきだろう。しかし、政権の側の「戦争国家」シフトのスピードアップに比べて、全体としての反戦・護憲の運動が充分に対応できていない、という現実があることは確かだ。
 われわれは当然にも憲法9条改悪に反対の闘いを進めていく。しかし同時に改憲勢力は正面からの9条改憲が困難な場合でも、さまざまな水路から「戦争国家」体制のさらなる現実化を進めていることも確かだ。今後のためにもこのテーマについて活動家どうしの討論を進めていくことが、これまでにも増して重要であることはあらためて確認すべきだろう。

脅威対抗型
防衛戦略

 雑誌「世界」(岩波書店発行)の7月号は「軍拡が平和をもたらすのか」という特集を組んだ。その中で軍事ジャーナリストの前田哲男は「自民党安保提言批判」として次のように述べている。
 「四月二六日、自民党の政務調査会と安全保障調査会の名前で公表された『新たな国家安全保障戦略の策定に向けた提言』を一読して、この『提言』はメディアがつけた見出し――『GDP2%防衛費』の提議――にとどまるものでなく、もっと遠いところ、たとえば『憲法改正後の自衛隊と日米同盟』の未来形について、思う存分意見を述べ、網羅的に展望した構想として読むべき、という感想をもった。それほど多岐、詳細にわたり、かつ憲法を超える次元で安全保障と自衛隊のあり方が開陳されている。そこから参議院選挙後に本格化するであろう『改憲論議』を見越した問題の投げかけ、と理解するほうが内容にふさわしい読み方といえる。もとより『ウクライナ事態』に順風を得た所産であることもたしかだ」。
 すなわち、今、われわれが直面しているのは朝鮮戦争・ベトナム戦争以来の旧来的な東アジアの新たな関係を超えたところで進行している緊張関係をどのように捉えるべきなのか、というテーマである。
 そのキーワードは「脅威対抗型防衛戦略」という規定である。「脅威対抗型防衛力」とは前田によれば「想定敵国の軍備に応じてこちらも戦力レベルを増強していく防衛構想だから、『専守防衛』と対極をなす防衛概念である」。

「東のNATO」
目指す実戦化


 前田は自民党の「提言」について「『提言』文書は中・朝・ロをはっきり『想定敵国』とみなし、それらに『脅威対抗型の防衛戦略』を構えようと呼びかける。『専守防衛』と逆方向であるのはむろんだが、歴史的に見ると、一九三〇年代に帝国陸海軍が想定した『中・ソ・米 三国標準主義』の復活ともいえる。多正面戦略のすえに帝国日本は敗北したのだが、またぞろ台湾をめぐり中国と戦い、西方では北朝鮮を敵とし、さらに北方ロシアと対峙する『三国標準主義構想』がよみがえっている。そうなると防衛関連費が天井知らずになるのも無理はない」。
 同文書は「NATO諸国の国防予算のGDP比目標(2%以上)も念頭に、わが国としても、5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指すこととする。……令和5年度予算においても上記の趣旨を踏まえ、必要な経費を確保するものとする」
―すなわちGDP2%防衛費の即時達成を主張している。
 前田は、自民党安保調査会によるこの提言について次のように述べる。
 「とても『敵基地反撃能力』や『GDP2%防衛費』の枠内におさまるものではない。改憲後に向けた軍拡論の草案と見なすべきもの、と受け止めなければならない。そうした圧力が年内に発表される『防衛3文書』に反映され、また『次期ガイドライン(防衛協力指針)』に書き込まれて、“現実の規範”となろうとしているのである」と。
 「同時に、それは『アジア版NATO』への道でもある。『提言』中にも『バイ・トライ・マルチ』の枠組みとして明記している。……そこでは、バイ=二国間=日米同盟を、トライ=三国間=日・米・韓、マルチ=多国間=豪・英・ASEAN諸国の枠組みへと拡大していく展望が、『共同訓練』や『円滑化協定』による実行過程とともに描かれている。『拡大された日米同盟』を“東のNATO”にしたいのであろう。バイデン政権の『中国包囲網』を下支えする集団防衛機構として位置づけられているにちがいない。一九五〇年代に米政権が構想した『太平洋条約機構』の復活といえる」と性格づけている。
 なお前田のこの論文は、「結節点としての『南西諸島』」という節で締めくくられている。
 なぜだろうか。いま構想されている沖縄米軍基地の「米軍・自衛隊共同使用計画」に前田は注目している。そこでは「台湾有事」をも想定した、対中国の政治・軍事戦略がからんでいる、とされる。いずれにせよこうした国際レベルの政治的・軍事的緊張関係の中で、問題が提起される可能性に注目する必要があるだろう。       (純)

陸上自衛隊練馬駐屯地抗議行動(6.6)

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