ロシアによるウクライナ 4州併合は歴史的暴挙だ
不屈に戦うウクライナ人民との連帯を!
プーチンの「軍事作戦」は失敗した
プーチンは9月30日、上下両院議員とロシア軍が軍事占領しているウクライナ4州の傀儡的な親ロシア派代表らを前にして、4州で9月23~27日に強行された「まやかしの住民投票」を根拠に、ウクライナ4州を「ロシア領に編入する」と宣言した。全世界の労働者人民は、独裁者プーチンによるこの歴史的な暴挙を絶対に許してはならない。同時に、民族の自決と主権を守り抜き、そして取り戻すために、女も男も命がけで戦い続けてきたウクライナ人民のロシアに対する抵抗と防衛のための戦いは、ロシア軍をウクライナの地からひとり残らず叩き出す日まで擁護されなければならない。
またプーチンは「宣言」と合わせて、ウクライナ政府に対して「即時の戦闘の中止と、交渉再開」を訴えた。しかしこれは、まったくのまやかしである。プーチンの狙いは、現在まともに戦闘を継続できない状況にあるロシア軍立て直しのための時間稼ぎに過ぎない。ロシア軍は2月のウクライナ軍事侵攻開始直後から、予想をはるかに上回るウクライナ軍の反撃によって、甚大な人的・物理的な被害を受けてきた。米国防総省の8月の発表では、ロシア軍の死傷者は7~8万人と予想され、これは前線に投入された部隊の半分を失った可能性があるとしている。また兵器もイランや朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に注文要請しなければならないほど不足している(朝鮮は注文要請を拒否している)。
こうした事態にあせっているプーチンは、これまで市民からの反発が出るだろうと控えていた招集動員令を9月21日に発動した。そしてこれに反対・抗議する行動は、全国40の都市で巻き起こり多数の拘束者を出している。また「プーチンの戦争」で犬死するのはまっぴらごめんだと、成年男性のパニック的な国外脱出ラッシュが続いている。ロシア国内にある徴兵事務所の20カ所も火炎ビンで放火されている。
ロシア軍招集対象者は「捨て駒」
ロシアの独立系メディアは、ロシア国防相は召集対象を当初、予備役から約30万人としていたが、最大120万人の召集を検討していると報道している。併合されたウクライナの4州では、正式に併合される前から東部のルガンスク州では18歳以上の男性全員に召集令状が渡された地域もあり、また南部のザボロジエ州とへルソン州でも、数千人分のリストが作成されているという。
恥知らずの大ロシア主義者プーチンは、ウクライナ人同士を戦わせて、捨て駒にしようとしているのだ。またクリミア半島では、召集令状の9割が先住民のクリミア・タタール人に渡されたという。こうした卑劣なやり方に対してウクライナのゼレンスキーは、「動員に応じるな!逃げろ!投降してウクライナの捕虜になれ!」と呼びかけている。
ウクライナ軍事侵攻当初から、前線に送られてきた兵士は少数民族出身の貧しい農村の若者が多く、ヨーロッパロシアの都市部に住むスラブ系の若者のほとんどは前線での犠牲者にはなっていない。これまで死亡が確認されているロシア軍の出身地の1位は南部のダゲスタンであり、2位はモンゴル系のブリヤートであり死者数はモスクワの10倍超である。すでに3月にはダゲスタン人兵士300人が命令を拒否して帰還する事態が発生しており、7月にもブリヤート兵士150人が軍との契約を破棄して帰還している。現在ダゲスタンでは軍への召集をめぐって、住民と警察が衝突しており、また道路を遮断するなどして招集妨害行動も展開されている。
ロシア軍の深刻な兵員不足は、民間軍事会社であるワグネルによる勧誘活動にもよく表れている。ワグネルは中央アジアのキルギスやカザフスタンまで出かけて行って、「企業警備員」求人を装って、半年間の契約兵の勧誘を行っている。そして軍に応募すれば、50万の月給とロシア国籍の取得も可能だと。だが両国政府は自国住民に対して、ウクライナ戦争に参加しないようにと呼びかけている。またワグネルの経営者がロシア国内の刑務所を訪問して、受刑者に対して「半年間兵役に就けば釈放される」と呼びかけているという。これはもう法治国家の上に君臨する独裁者プーチンによる、受刑者に対する死刑執行以外の何物でもない。こうした呼びかけに乗ってくる受刑者は皆無だという。
「核で脅す」ことしかできないプーチン
独立系の世論調査会社が6月に実施した調査によると、プーチンの軍事作戦への支持は75%であった。同月に実施された政府系の非公開の世論調査では、軍事活動の継続が44%で、和平交渉をするが44%だった。この結果は「反対」とは言えないが、もう終結させてもよいのではないかという世論が半数だということだ。そもそもロシア市民の多くは、ここまで戦争が長引くとは考えてこなかったであろう。また招集動員令の発動後では、世論もかなり変化していると思われる。
しかし「戦争反対」を公然と叫べば瞬く間に拘束される。それでも勇気あるロシア人のプーチンに対する抵抗が続けられている。7月8日のモスクワ市議会では、議員が「戦争をやめるよう」訴えて、禁固7年の実刑判決を受けた。9月7日にはサンクトペテルブルクの地区評議会で、プーチンの「特別軍事作戦」に反対する決議案が提出された。そしてそのなかで、連邦議会下院に対して「プーチンの弾劾」を要求したのである。しかし決議案に賛成した評議員はその後、ロシア軍への「名誉き損」だとして11万円ほどの罰金刑を受けている。また同様の動きは、モスクワの地区評議会でもあった。
プーチンが「特別軍事作戦」というウクライナへの侵略戦争作戦は失敗した。現在のロシア軍には戦争を継続する能力はない。ウクライナ軍の反転攻勢が続いている。ウクライナ4州の併合という「成果」を宣言して、一日も早く「停戦」に漕ぎつけたいのはプーチンの側である。そしてプーチンをここまで追い詰めたのは、数万人の死傷者を出しながらも不屈な抵抗闘争を戦い続けたウクライナ人民であり、それと連帯してきたロシア・ベラルーシを始めとした様々な支援活動に関わってきた国際的な連帯闘争である。
プーチンは併合したウクライナ「4州への攻撃は、自国への攻撃とみなす」と警告し、開戦時と同様に再び戦術核の使用をちらつかせている。現在のプーチンは「核で脅す」ことしかできないところにまで追い詰められているのである。ロシア軍は兵士も武器も著しく不足している。招集されたロシア人は、ほとんどまともな訓練も受けられないままに、ライフル銃一丁だけ担いで前線に送られている。これでは完全な捨て駒である。ロシア人とロシア軍は「プーチンのために死ぬこと」を拒否せよ。大ロシア主義の妄想者であり殺人鬼であるプーチンと、その後ろ盾となってきた連邦保安庁(FSB)の支配体制を打倒せよ。
全世界の労働者人民は、プーチンの奴隷となることを拒否して、民族の自決と主権をかけて命がけで不屈に戦うウクライナ人民と連帯しょう。ウクライナの地からロシア軍が完全撤退するその日まで、強固な連帯のスクラムを組み続けよう。
(高松竜二/ 10月2日)
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