大軍拡に反対の声を上げよう!9条改憲を阻止しよう!

「台湾危機」のフェイクにだまされるな

差別・貧困を強制する新自由主義と決別しアジア民衆の連帯貫こう!

対中国・アジア基軸の
「バイデン・ドクトリン」

 8月のペロシ米下院議長の訪台をひとつの契機として、米国内では対中強硬派が鼻息を荒くしている。8月に訪台している共和党のブラックバーン上院議員は「台湾の独立と自由の維持」への支持を表明した。また米国のブリッケン国務長官は中国による台湾の統一は「かなり早い」、ギルディ米海軍作戦部長も「2022年か23年の可能性もある」と、両者ともに何らの具体的な根拠も示すことなく発言している。
 9月の上院外交委員会では、台湾を「同盟国と同等に扱う」と明記する台湾政策法案が可決された。さらに11月に行われた米国議会の超党派諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」(USCC)は、2022年は米国の対中政策の分岐点だとして「中国の台湾侵攻を想定した体制」を整備するようバイデン政権に提言した。その具体的な内容は①台湾防衛のために複数年にわたる相当な規模の軍事支援の実施②経済制裁など対抗措置の検討③低関税などの最恵国待遇の停止や最先端半導体の輸出規制などだ。
 また1949年の中国革命時以来の「台湾ドクトリン」を復活させようとする動きも活発化している。台湾の防衛を明確化させて「米軍を台湾に大規模駐留させる」といった提案も出されている。こうした動きに対してバイデンは「防衛義務が伴う同盟化には反対」という立場を主張している。この立場は現在ロシアの軍事侵略を受けているウクライナ事態の教訓化にほかならないし、中東とアフガニスタンで軍事政策を失敗させた米帝国主義が、もはや完全に世界の警察の座から降りているのだということを表明していることを意味している。
 まさにウクライナの事態は米国との同盟国も含めて「米国は同盟国を守ってくれるのだろうか」というこれまでの疑問が「米国は同盟国を無条件には守ってくれない」という現実を明らかにしたのである。「自国の防衛は米軍の血によってではなくウクライナのように自国民の血で行え」というのが米帝国主義の回答である。
 10月12日バイデン政権は外交・安全保障政策の指針である「国家安全保障戦略(バイデン・ドクトリン)」を公表した。そのなかで中国に対しては「国際秩序を変える意図と能力を備えた唯一の競争相手」だとしている。実際に中国は2030年代に米国のGDPを超えて世界第1位になると予想されている。だが米帝国主義との決定的な違いは、米軍が全世界に200近い軍事基地を確保しているが中国はアフリカ大陸東部のジブチの一カ所だけだということである。これは現在までの中国の軍事力はあくまでも自国防衛のためだったからにほかならない。
 バイデン政権はロシアに対しては「自由で開かれた国際システムに対する直接的な脅威」だと非難を浴びせて、その上で中国とロシアがそれぞれのやり方で「国際秩序を作り替えようとしている」として警戒し、こうした動きに対抗する必要性をアピールした。そして現在の米国にとって最も重要で戦略的な資産であり、不可欠な要素として挙げられているのが日・豪・NATOなどとの同盟関係である。具体的には日米豪印4カ国の「クアッド」と米英豪3カ国の「オーカス」の重要性を指摘している。その他にもウクライナ支援の継続と朝鮮半島の完全な非核化を打ち出している。さらに中国に対しては米国として「一つの中国」という現状政策を維持しつつも、台湾への威圧や直接武力行使に対抗する能力の保持を明らかにしている。こうして「バイデン・ドクトリン」が明らかにしていることは、米帝国主義の軍事戦略が完全に対中・アジアが基軸になっているということである。

中国の台湾侵攻はほぼゼロ

 コロナ感染症政策の影響で2年8カ月間にわたって国内にとどまっていた習近平は、9月にウズベキスタンで開催された上海協力機構(SCO)に参加した。SCOは中露印をはじめ中央アジア諸国など10カ国が加盟し、オブザーバーとしてサウジ、エジプト、カタールが参加している。「一帯一路」戦略を掲げる中国にとってSCOは決定的に重要なものとなっている。中国の西には中央アジアそしてパキスタン以西にイスラム諸国が連なり、トルコとヨーロッパへの道につながり、またアフリカ大陸への道が切り開かれることになる。
 さらにこの間中国にとって好材料となっているのがロシアによるウクライナ侵略をめぐって、カザフスタンをはじめとして中央アジア諸国の対露関係が悪化していることだ。ウクライナへの派兵要請を拒否してロシアの侵略を公然と批判している。またバイデン政権の「人権外交」に反発するアラブ諸国でも米国一辺倒からの脱却が進んでいる。サウジ、エジプト、UAEはこれまで米国兵器購入のお得意様であったが、契約先を中国や欧州に切り替え始めている。
 こうして見てみると中国にとって国内のイスラム教徒であるウイグル族対策が非常に重要でデリケートな問題だということがわかる。香港のように弾圧だけで「解決」することができないのである。中国のウイグル族政策は、56の民族共同体の一員としてウイグル族である前に「中国人」であることを徹底的に「再教育」することである。中国語教育を普及させて愛国意識を注入し、一方では綿花生産の機械化推進や生活水準の引き上げなどを実施する。それでも抵抗する者は徹底的に潰す。こうした方法はウイグル族に限られた政策ではない。中国共産党の一党支配体制にたてつく者は誰であれ叩き潰すというのが基本政策だからだ。
 10月16日から始まった中国共産党大会で台湾に関わる習近平の活動報告は実に穏やかなものであった。「台湾同胞を尊重し思いやり、かれらに幸福をもたらし、両岸の経済文化の交流と協力を引き続き促進する」という内容だ。中国は武力による統一という選択肢を放棄していないが、基本路線はあくまでも平和的な統一である。ちなみに7~8月に実施された台湾での世論調査によると「1国2制度」での統一には85%が反対している。また「独立、統一のどちらを望むか」という質問では「独立」が30・3%、「統一」が6・5%、「現状維持」が56・9%だった。
 半導体などをめぐって中国に対する米国のデカップリング(切り離し)圧力が強まってはいるが、中台の経済活動は良好であり、台湾の若者の中国への進学や就職に対する優遇措置なども継続されている。世界の工場となってきた中国に台湾から大量の半導体が輸出され、そして中国で製品化されて全世界に輸出されるという関係がつくられてきた。2022年1~8月の台湾半導体の輸出先は、58・4%が中国向けであった。中国は過去30年間をかけて新自由主義的資本主義のサプライチェーンに完全に組み込まれることで政治・経済的な今日的位置を築いてきたのであり、それらすべてを投げ捨てて台湾を武力侵略する可能性はほぼゼロに近いと言わなければならない。
 しかし中国の経済事情は、ゼロコロナ政策の失敗や不動産バブルの崩壊さらには少子高齢化と人口減少問題などを抱えていて深刻である。2022年の経済成長率はコロナで深刻な影響を受けた2020年の2・2%に次ぐ3%台にまで低下するだろうと予測されている。格差の拡大や若者の失業の拡大(15~24歳で20%)に対する大衆の不満は、ゼロコロナ政策による抑圧への反発も加わって、中国全土のあちこちで警官隊との衝突となって表れた。
 中国共産党大会で3期目の総書記としてほぼ体制を固めた習近平は、コロナ対策と経済活動を両立させた再スタートに全力で乗り出すことで、大衆の中にうっ積されてきた政府に対する不満と反発を払拭しなければならない重大な局面に立たされている。ありもしない「台湾危機」を演出して中国への挑発を繰り返すバイデン政権に付き合っている余裕などないのである。

巡航ミサイル「トマホーク」配備

 米国バイデン政権は中国を「国際秩序を変える意図と能力を備えた唯一の競争相手」だと位置づけて、政治・軍事的にも経済的にも締め上げたいと考えている。しかしなぜ見え透いた「台湾危機」を煽っているのだろうか。
 軍事的な理由は明確である。米軍は数年前から日本・台湾・フィリピンなどを候補地として、約900発保有しているとされている中国の中距離弾道ミサイル(射程1000~5500㎞)に対抗する中距離弾道ミサイルの地上配備計画を模索していた。そして2月のロシア軍によるウクライナ侵略の衝撃は「台湾危機」演出のための絶好の機会を日米軍事同盟に提供したのである。日米両政府は日本の「敵基地攻撃能力」保有のために、フェイクを駆使してこの好機を徹底的に利用したのである。
 すでに明らかにされている自衛隊の中距離ミサイル配備計画によると、第1段階として射程1000㎞程度の12式地対艦誘導弾改良型(現在配備されているのは射程約200㎞)を沖縄南西諸島に配備し、2026年の運用開始としている。台湾と上海も射程内となる。第2段階として高速滑空弾を含む射程2000㎞超を富士駐屯地に配備する。台湾と北京も射程内となる。そして第3段階として3000㎞程度の極超音速(音速の5倍以上)誘導弾を北海道に配備し、2030年代半ばまでの運用開始をめざすとしている。ここでも台湾が射程内である。
 だが12月16日に公表された「国家安全保障戦略」によると、この配備計画は若干変更される可能性が出てきた。巡航ミサイル「トマホーク」の導入が決定されたからである。12式改良型よりも早期に配備可能となるからだ。しかも自衛隊のイージス艦や潜水艦からも発射することが可能で、1発の値段が1~2億円と安価であり射程は1600㎞以上とされている。日本は安倍政権時代の2013年に当時のオバマ政権によって供与を断られていて、現在保有しているのは米英の2国であり、2021年にはオーストラリアへの供与が決定されている。ちなみに現在イージス艦に搭載されている迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の値段は1発40億円である。

最先端半導体からの中国外し

 中国に対する露骨な経済的締め付けを開始したのはトランプ政権であった。「アメリカンファースト」を掲げるトランプの標的は中国ばかりではなかったが、特に中国に対しては「貿易不均衡」を理由に3弾にわたって日用品を含むありとあらゆる中国からの輸入品に最大25%の関税をかけた。また現在バイデン政権が推し進めている半導体先端技術からの中国排除政策を始めたのもトランプ政権だった。バイデン政権は関税措置期限の4年を迎えた2022年から、足元の高インフレという状況に押されて一部日用品などの関税措置を解除しているようだが、基本路線はトランプ政権の対中政策を継承している。
 現在半導体は「産業のコメ」から戦略物質へと格上げされた。そんななか米国はTSMCなど世界最先端の半導体を製造する台湾があまりにも地政学的に中国に近すぎることに危機感を持ち、TSMCが確立している3~5ナノ(1ナノは10億分の1m)半導体の米国内への工場誘致を進めている。また韓国のサムスン電子も米国内での工場建設を進めている。米国はこの地政学的な問題を逆手にとって「台湾有事」を煽ることで対中経済対立に諸国を巻き込もうとしているのだ。
 米連邦議会は8月、米国の半導体企業に対して巨額の補助金で支援する「CHIPS科学法」を可決した。この法律には「中国への新規投資を禁止する」条項も含まれていて、さらに10月に米商務省は、中国への最先端半導体技術の輸出と米国人の移動を厳しく規制する新たな措置を発表した。こうした米国の手法に対して中国は世界貿易機関(WTO)に提訴しているが、WTOの審査機関は米国のボイコットによってまともに機能していないのである。
 中国は2015年に発表した「中国製造2025」で、半導体の国内自給率を2020年に40%、25年には70%にまで引き上げる目標を示していたが、21年の国内自給率は16・7%ほどにとどまっている。中国の半導体輸入は21年に4000億ドルまで拡大しているが、その拡大に対して国内生産がまったく追いついていないのである。そこには技術問題だけではなく、汚職問題も絡んでいるようだ。
 米国は最先端半導体を中国を外した米台韓日の「チップ4」として囲い込んで、新たなサプライチェーンの創設をめざしている。しかし現在でもほとんどの電子機器や自動車、家電などには数世代前の20ナノより大きい半導体が使用され続けている。米国による中国に対するデカップリングはごく限られた分野で推し進められているだけであり、技術問題もそのうち中国はクリアするであろう。

電気自動車は環境を破壊する


 また電気自動車(EV)に搭載する電池の生産は、中国と韓国が世界シェアの80%弱を占めており、中国企業はフォードに供給するために米国工場建設の計画を立てている。電池生産に欠かせないリチウムを含む世界レアメタル生産の6割を中国が独占しており、米中経済対決は最先端半導体関連だけで決着がつくものではないのである。しかしEVの他にも太陽光発電や風力発電にも欠かせないレアメタルの精錬による環境破壊が大きな問題となっている。
 リチウムは南米のアンデス山脈地域の塩湖に集中しており、この地域の埋蔵量だけで世界の6割超になるだろうと推定されている。リチウムの精錬には大量の水が使用されるために、地域の農業用水や生活用水が不足するという事態を招きかねない。また大量の硫酸が使用されるために、硫化ナトリウムなどの汚染物質が大量に発生するだけでなく、炭酸塩と硫酸との化学反応によって大量のCO2も排出されるのである。レアメタル生産が中国に集中しているのは、こうした環境負荷を無視して生産されてきたからにほかならない。
 今後EVの普及によってリチウムの生産は爆発的に拡大するだろう。中国ばかりではなく、世界中の貧しい国の人々が電池生産という大資本の利益のために環境が破壊され、新たな犠牲者にされようとしている。EVはガソリン車に替わる環境と温暖化の「救世主」になることはできないのである。唯一の答えは、自動車文明から脱却し、グリーン電力とグリーン水素を燃料とする公共交通システムの拡充をめざすことだ。

自衛隊を攻撃型軍隊に改編

 12月16日に安保関連の3文書が公表された。「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」(防衛大綱)「防衛力整備計画」(中期防)である。あわせてこれまでGDPの1%程度とされてきた防衛費を、2023年から27年までの5年間で2%に引き上げることも閣議決定された。
 安保関連3文書の検討は、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有をめぐる議論が中心的なテーマとなった。前述したようにこれは、米国の要請を受けて、中国が保有する中距離弾道ミサイルに対抗する中距離弾道ミサイルを日本に配備するのか否かということであった。このテーマに関しては、2月のロシア軍によるウクライナ侵略を受けて開かれた5月の日米首脳会談で、岸田首相がバイデン大統領に「自衛隊の役割拡大と軍拡方針」を伝えていた。そしてその直後から政府と自民党が「敵基地攻撃能力」という用語を使用しながら、その実現と具体化のための検討に入っている。そして与党である公明党との合意の上で今回公表されたのである。
 そうした検討のなかで最大の課題となったのは、これまでの「専守防衛」という考え方と「敵基地攻撃能力」との整合性であった。自民党は当初「ミサイル基地に限定せず、指揮統制機能等も含む」「相手国が撃つ前に」と、攻撃目標の拡大と国際法が禁じている先制攻撃まで主張していたのである。
 公表された「国家安全保障戦略」のなかでは「専守防衛に徹し…非核三原則を堅持する」「自ら先に攻撃する先制攻撃は許されない」としながらも、「2027年度までに日本への侵攻が起きた場合、日本が主たる責任を持って対処。10年後までにより早期かつ遠方で日本への侵攻を阻止・排除できるようにする」としている。またこの部分と関連して「国家防衛戦略」のなかでは「わが国への侵攻が生起した場合は、主たる責任を持って対処し、同盟国などの支援を受けつつ、これを阻止・排除する。核兵器の脅威に対しては、核抑止を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」とした上で「侵攻を抑止する上で鍵となるのは反撃能力である」「わが国への侵攻が生起した場合は、日米共同対処により阻止する」とした。
 このなかでキーワードとなっているのが、日本が「主たる責任を持って対処」するという部分である。日本が中距離弾道ミサイルや巡航ミサイル「トマホーク」を保有・配備することで、これまでの日米の役割分担が変容するということである。さらに「早期かつ遠方で」という表記は、米軍の要請があった場合、2015年に成立した安全保障関連法(戦争法)に基づいて、敵基地を含む敵戦闘力への攻撃を集団的自衛権の行使として実行することもありうるということを明らかにしているのに他ならない。
 軍事費の倍増をテコに、自衛隊を戦争のできる攻撃型の軍隊へと改編しようとする岸田政権による大軍拡に反対し、全力でこれを阻止しなければならない。

民衆連帯によるアジアの平和を


 以下、安保関連3文書に関連する日本をめぐる今日的な軍事状況について明らかにしたい。
 米日豪印の4カ国によって作られる「クワッド」だが、バイデン政権は最初からインドのモディ政権を全くあてにはしていない。インドは国境問題をめぐって中国と対立しているが、その中国が主導する上海協力機構にも加わっていることもある。米国にとって重要なのは日本とオーストラリアとの軍事的な共同関係の構築である。
 日豪は2022年の1月に共同軍事訓練拡大のための「円滑化協定(RAA)」を結んでいる(それまでは米国とのみ)。そして10月に日豪は「新安全保障協力」の共同宣言に署名した。これによって日豪は共同訓練・情報収集・警戒監視・サイバー防衛・経済安保の分野で連携することになった。事実上の軍事的な「準同盟国」となったのである。中国はキリバスなど太平洋島しょ国との関係を強化しているし、日本もオーストラリアの地下資源や食糧輸入に大きく依存しているという状況も背景にはある。こうして自衛隊の行動範囲は豪州周辺海域ばかりではなく、太平洋島しょ国周辺まで拡大したのである。
 次に指摘しておかなければならないのは、防衛装備(武器)輸出ルール緩和の動きである。現行の3原則は2014年に閣議決定されたもので、①安保理決議や条約に違反する輸出、紛争当事国への輸出はしない②輸出は平和貢献や日本の安全保障に資する場合などに限る③相手国には目的外使用などについて日本との事前同意を義務づけるとし、ここには殺傷能力の高い武器は含まれていない。
 しかし「国家安全保障戦略」では「国際法に違反する侵略や武力の行使または武力による威嚇を受けている国への支援」として、殺傷能力の高い武器も含めて輸出できるように検討することを明らかにしている。2倍に跳ね上がる軍事費を当て込んで、軍需品の開発と国産化と合わせて東南アジアなどへの武器輸出を考えているようだ。すでにF2の退役後のFXについては、英国とイタリアとの共同開発をめざすことで先行している。日本は90機程度を導入する予定だ。
 次に「自衛隊と海上保安庁との連携、協力を不断に強化する」ということに関してである。これは主に、日本が2012年9月に野田民主党政権の時に国有化した尖閣諸島周辺海域の警備を意識したものなのであろうが、日中両国間で突発的な事態が起きないように2018年から「海洋連絡メカニズム」が運用されている。また中国海警の海域航行の常態化の背景には、保守右翼が石垣島から漁船を出港させて尖閣諸島周辺海域を航行させるという日常的な挑発行為がある。尖閣諸島をめぐる「緊張」は完全に保守右翼の演出によって作られているのである。
 また海上保安庁法25条は非軍事性を定めており、自衛隊との協力関係の構築という発想は、海上警察としての海保の独自的な活動を無視するものだ。
 「防衛力整備計画」には、自爆型無人機の導入や主要司令部の地下化など数多くの批判点はあるが、最後に辺野古新基地反対運動をはじめとし、基地反対運動がねばり強く展開されている沖縄をめぐる状況について触れておきたい。
 安保関連3文書では「特に南西地域における空港・港湾施設などを整備・強化」する、「島しょ部への部隊展開を迅速に行うため、機動・展開能力を強化する」ことを明らかにしている。また「沖縄県の防衛、警備を担当する陸自第15旅団を師団に改編する」として、陸自の人員拡大を宣言している。
 11月には自衛隊2万60
00人と米軍1万人が参加する日米共同統合演習「キーン・ソード23」が実施されて、日本の最西端に位置する与那国駐屯地でも離島防衛作戦など初の日米共同訓練が展開された。しかし基地機能強化の動きは沖縄・琉球列島に限ったことではない。
 2014年から佐賀空港へのオスプレイ配備に反対してきた佐賀県有明海漁協が県の要請を受け入れたことで、陸自のオスプレイ17機の配備が可能になった。オスプレイは島しょ部への部隊移動に使われることになる。また種子島の西に位置する無人小島の馬毛島では、自衛隊の軍事拠点化をめざして3月にも着工されようとしている。馬毛島は現在硫黄島で実施されている岩国基地の米空母艦載機の離着陸訓練の移転先としてまず滑走路が整備されるが、将来的には横風用を含む滑走路2本、格納庫、訓練施設、揚陸施設などを備えた一大軍事拠点として整備されようとしている。
 こうして岩国、九州から、馬毛島、奄美、沖縄本島、宮古、石垣、与那国までの対中国の前線基地が構築されようとしているのである。しかし軍拡によって「平和」が守られる保障はどこにもない。軍拡はさらなる軍拡を加速させて軍事的な緊張を高めるだけだ。ありもしない「台湾危機」を煽る軍拡の狙いは、憲法9条の平和主義を完全に骨抜きにするために、戦争のできる軍隊として自衛隊を改編することである。
 沖縄の反基地運動と連帯して、岸田政権の大軍拡に立ち向かう闘いを開始しよう。東北の復興を犠牲にする所得税の「軍拡増税」に反対の声を上げよう。民衆の信頼と尊厳に基づいて連帯するアジアの平和を構築しよう。 (高松竜二)
 

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社