大阪府知事選・大阪市長選で維新を敗北させよう

維新による民主主義破壊、住民分断の政治に終止符を

日本革命的共産主義者同盟(JRCL)関西地方委員会

大阪府知事選・大阪市長選で何が問われているのか

 大阪府知事選・大阪市長選は大阪における維新支配を継続させるのか否かを問う選挙として、4月の統一自治体選挙の大きな焦点の一つとなっている。
 大阪においては、2008年に橋下徹が大阪府知事に初当選(その後、2010年4月に「大阪維新の会」を結成)し、さらに2011年に大阪市長に鞍替えして、松井一郎が大阪府知事に当選して以来、大阪府・大阪市ともに維新公認の首長が続いてきた。その間に、維新は大阪府議会で単独過半数を占めるとともに、大阪市議会においても過半数をわずかに切る多数を占め、さらに大阪府下では政令指定都市の堺市をはじめ17市町の市長・町長を擁するに至っている。国政選挙でも、衆議院議員の圧倒的多数、参議院議員の半数が維新所属である。
 しかし、その一方で、維新の一枚看板の政策であった「大阪都構想」は、その実現をめざした住民投票で2015年、2020年の2回にわたって僅差ながら敗北を喫することで挫折を余儀なくされ、橋下・松井の政界引退の引き金となった。また、現在の看板政策と言える「IR・カジノ誘致による大阪経済の成長」に対しても、根強いカジノ反対の世論が存在し、昨年に展開された「カジノ誘致の是非を問う住民投票」条例の制定を求める署名運動には大きな支持が集まり、法定数を超える署名を集めて府議会に提出された。条例案は維新・公明の反対で即日否決されたが、今回の大阪府知事選・大阪市長選においても、カジノ誘致の是非が最大の争点となっている。
 しかし、今回の選挙は、カジノ以外にも、ここ10数年におよぶ維新によるトップダウンの権威主義的行政や、それによって地域の民主主義的な自治のあり方が破壊されている状況をどうするのか、言い換えれば大阪において草の根からの民主主義を復権させるにはどうするのかを問う選挙でもある。

維新による大阪支配がもたらしたもの
 大阪維新の会の看板政策はなんといっても「大阪都構想」であった。「二重行政の解消」という名目で、大阪市を廃止し、大阪市の資産・財源を大阪府に移して、一元化された行政のもとで新自由主義的な都市開発をすすめようとするものだった。しかし、2回にわたる住民投票の結果は周知の通りで、それぞれ1万票強の差で「都構想」は否決され、大阪市の存続が決まった。しかし、維新は大阪市が権限を持っていた成長戦略、大規模開発、高速道路など都市計画の権限を大阪府に移す「広域行政一元化条例」を大阪府・大阪市の双方で成立させ、大阪市の行政を事実上大阪府の下請け的なものにしたのである。
 維新による公共サービス切り捨ての問題点がもっとも露呈したのが、新型コロナウイルスのパンデミックにおける大阪の死亡者数の突出した多さだった。保健所職員の削減、公立病院の統廃合などを進めた結果が大阪での医療崩壊の一因となっていたことは、それを進めた橋下自らが認めていることだ。コロナ病床数を十分に確保しなかったことが、高齢者施設での「療養」という名の事実上の「医療放置」を招き、多くの高齢者が亡くなったことの責任の多くが維新政治にあることは明らかである。
 にもかかわらず、維新は引き続き公共サービスの民営化、民間委託、縮小などの切り捨て政策をすすめ、その一方で大規模開発や「万博」「IR・カジノ」の誘致による「福祉なき成長」路線をとり続けている。
 またもう一つの大きな問題は、維新によるトップダウン型の権威主義的行政によって、地域から民主主義的な自治を作り出すことが否定され、民主主義の破壊が進行していったことである。そして、大阪市に典型的に見られるように「職員基本条例」などによって職場での労働組合活動を解体し、自治体職員を「首長の意向を具体化するだけ」の存在へと貶めているのである。
 教育においても、国旗国歌条例や教育長通達を通じた「日の丸・君が代」の徹底した強制、それに異論を持つ教員に対する処分攻撃による排除から始まって、首長→教育委員会→校長→教職員というトップダウンの管理体制の構築、「チャレンジテスト」などによるテスト至上主義のもとでの生徒・保護者の分断、アニメ『めぐみ』の上映強制による拉致問題の学校教育への持ち込みなど教育内容への露骨な介入を展開してきた。
 こうした住民分断と民主主義の破壊を徹底して推し進めることにより、コアな支持層を中心とした各種選挙での勝利を積み重ねて、大阪における維新支配を固めてきたのである。しかし、「都構想」住民投票のプロセスと結果に見られるように、草の根からの住民のとりくみが発展したことによって投票率が高くなると、維新支配も盤石ではないことも明らかとなっている。

府知事選・市長選の構図と公約
 知事選・市長選の構図を見ると、大阪維新の会は、知事選には吉村洋文知事を、大阪市長選には松井市長の引退を受け、立候補者の公募によって選ばれた横山英幸府議を公認候補者として擁立した。これに対して、共産党は1月6日の「新春の集い」で知事選・市長選に候補者を擁立することを明らかにし、7日には「明るい民主大阪府政をつくる会」が、たつみコータローさん(元参議院議員)の無所属での府知事選立候補を発表した。その一方で、「アップデートおおさか」(連合などがつくる「リアルオーサカ」を前身として1月31日に結成された非維新の政治団体)は、知事選に谷口真由美さん(法学者)、市長選に北野妙子さん(大阪市議)を擁立した(北野さんは自民党を離党して無所属で立候補)。大阪市長選について、共産党は北野さんの立候補を受けて、候補者擁立を見送ることを明らかにした。しかし、北野さんを「自主的支援」することはしないとの立場である。これ以外にも、参政党と政治家女子48党(旧NHK党)がそれぞれ知事選に立候補者を公認している。
 各陣営の選挙公約において、「高校教育までの無償化」や「0~2歳児の保育料の無償化」などは共通しているが、大きく異なるのはIR・カジノの誘致をめぐる立場である。IR・カジノ誘致を推進してきた大阪維新の会は、今回の選挙では「すでに決定済み」として意識的に争点から外しながら、「大阪の副首都化」推進、万博への民間企業参加促進など都市開発や大規模イベントを通じた成長戦略を前面に打ち出している。一方、「アップデートおおさか」は、「IR誘致の是非は住民投票の結果で判断」「(予定地・夢洲の)活用法を定める『ゆめしまビジョン』の策定」を掲げ、「チャレンジテストの廃止」なども公約としている。共産党が支持するたつみ候補は「カジノ誘致中止」を明確に打ち出し、万博についても「夢洲以外の場所での開催」を提案している。
 また、昨年の参議院選挙で一定の支持を集めた参政党は、排外主義、ナショナリズムを根底に据えながら左派の主張を取り入れるというヨーロッパの極右に近い主張を展開している。

反維新候補の統一を訴えた市民の動き
 反維新の立場で運動を継続させてきた市民運動の流れは、昨年の条例制定署名運動の成功をふまえて、知事選・市長選での反維新候補の一本化にむけてさまざまなとりくみを展開してきた。とりわけ松井市長が政界引退を表明して、新たな候補者が出馬する大阪市長選に焦点を当てていた。昨年10月には、「大阪市・市民連合」が結成され、市民の側から市長選の統一候補擁立の機運を盛り上げるために、「どないネット」や「大阪・市民交流会」なども含めて集会や街頭宣伝などが展開された。その中では、カジノ誘致を選挙の中心的な争点にしていくこととともに、「都構想」住民投票の2回の勝利を生み出した草の根からの運動を展開することが一致した主張となっていた。結果として、府知事選では反維新のたつみ候補と非維新の谷口候補が立候補することになったが、大阪市長選においては、「都構想」住民投票で反対運動の先頭に立ち、カジノに対しても反対の姿勢を明らかにしている(政策としては「住民投票で是非を決める」)北野候補と維新候補との一騎打ちの形となった。

われわれの立場
  維新候補の敗北のために全力を尽くそう

 われわれは、2015年および2019年の知事選・市長選に際して、関西地方委の声明を発表し、自らの基本的立場を以下のようにまとめた。
 保守をも含めた反維新の共闘は運動の拡がりを示すものだが、われわれも含めた左翼の弱さ、特に維新が進めてきた一連の新自由主義的改革に対する労働組合からの抵抗の弱さの表現でもある。保守を含む共闘を否定するものではないが、左翼の弱さによって余儀なくされた選択でもあることを意識しておくべきであり、これを一般化・固定化するべきではない。われわれは、労働者の闘いを基礎として、労働者民衆の要求実現のために闘う候補者を持っていないという状況を前提として、維新候補を落選させるために全力を尽くすことを呼びかける。しかし、このことは維新に対抗する候補者の政策を無批判に受け入れることを意味しない。政策に対する原則的な批判をおこないつつ、大阪へのカジノ誘致・夢洲での万博開催、リニア新幹線をはじめとした大規模開発に反対し、公共サービスの切り捨て、福祉・医療・教育における住民分断を許さない大衆運動を構築していく立場を堅持する。
 われわれは、この基本的立場について、大きく変更する必要はないと考える。しかし、維新による民主主義・住民自治破壊、住民分断は、前回選挙以降の4年間においてさらに深刻化し、コロナ問題でさらに露呈した。その間に2020年に実施された2回目の「都構想」住民投票での勝利や2022年の「カジノ住民投票条例」制定署名運動の成功などはあったものの、こうした維新支配を終わらせるだけの力関係の転換はいまだ実現できていない。
 そうした状況をふまえて、今回の大阪府知事選・大阪市長選において、維新の民主主義・住民自治破壊を許さず、その新自由主義的政策と対決して、維新の敗北のために戦うことを呼びかける。
 また、同時におこなわれる大阪府議選・大阪市議選・堺市議選、および後半の市町議選において、改憲反対・辺野古への新基地建設反対・脱原発・カジノ誘致反対などの大衆運動をともに闘ってきた、共産党・社民党・新社会党・無所属などの候補者への投票を呼びかける。維新政治に終止符を打つために、ともに闘おう。

維新の政策批判を訴える街頭宣伝

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