日米首脳会談

平和憲法は「戦争への道」を抑止している

バイデンの「ショータイム」

 日米首脳会談を始めとした一連の演出(晩さん会、連邦議会での岸田演説など)は、11月に実施される米大統領選挙に向けたバイデンのバイデンによるバイデンのための「ショータイム」であった。国賓という名札を付けてもらい、すっかりお上りさん気分の岸田文雄はこの「ショータイム」を盛り立てるための単なる「応援団長」をやらされたのに過ぎなかったのである。
 一方、相変わらず能天気な岸田首相自身は、今回のパフォーマンスを足がかりにして9月の総裁選での再選に向けて鼻息を荒くしているのだから党内からしらけムードが漂うのもあたり前である。裏金問題の処分をめぐって、安倍派元幹部らからの不満もくすぶっている。16日に告示される衆院補選(28日投開票)も、自民党は島根1区のみの公認候補擁立で長崎3区、東京15区での不戦敗が確定している。派閥解散と有権者からの逆風で、自民党は選挙どころではない。そして岸田本人と言えば、相も変わらず「自分のこと」しか考えていないのである。

軍事をめぐる日米の対立点


 今回の一連の会談の中で注目しておかなければならないのは、日米が対立した点である。ひとつは自衛隊が24年度末までに「統合作戦司令部」を新設するが、これと時期を合わせて現在全く独自の権限を持たない在日米軍司令部にも指揮統制機能を持たせて、在日米軍(5万4000人)と自衛隊との統合強化を図ろうとする考え方の違いである。
 日本政府にしてみれば憲法上の制約もあり、自衛隊はあくまでも「専守防衛」の枠を出るわけにはいかないという考えだ。自衛隊自身もそのような任務のもとで作られてきた「軍隊」である。海外派兵などしようものなら、自衛隊員自身が持たないのである。03年から3年間、イラクPKO派遣で地上勤務を強いられた陸自隊員の29人が自殺し、過半が現在もPTSDを抱えているという。現在の日本政府の基本的立場は、自衛隊の「統合作戦司令部」が作られても、これまで通りの「専守防衛」を堅持し、在日米軍司令部と一体的なものではないというものだ。
 米国政府が考えてきたことは「どうすれば日本を戦闘に加わらせることができるのか」という問題設定であった。したがって指揮統制機能を持った在日米軍司令部と自衛隊の「統合作戦司令部」を速やかに一体化、一元化しようとしているのである。
 ふたつ目の対立点は、なぜ今回の首脳会談と合わせてフィリピンのマルコス大統領を加えての日米比3カ国首脳会談を設定したのかということにある。米国の狙いは自衛隊を南シナ海まで展開させて、中国艦船と直接対峙させようとするシナリオである。
 首脳会談に先立って比駐米大使は「日本の自衛隊をフィリピンへ定期的に一時派遣する『ローテーション展開』を検討している」と、先走りな発言を表明したのである。これに対して日本政府は即座にこれを否定している。

自公政府を打倒しよう

 岸田政権はこれまで安全保障関連法や敵基地攻撃能力の保有や九州から与那国までのミサイル・レーダー基地の配備など、米国の要請に従った軍事政策を着々と推し進めてきた。しかし今回の首脳会談で明らかになったことは、「専守防衛」という平和憲法・9条で定められたぎりぎりの枠を「勝手に突破すること」はできないということであった。
 現在自民党はガタガタになっているが、総選挙後にも9条改憲の動きが顕在化してくるかもしれない。しかし、そうなる前に次期総選挙で自公政府を打倒しなければならない。ねばり強く反戦・反基地運動を展開している沖縄民衆との新たな連帯闘争もそこからまた始まることになるだろう。
(高松竜二)

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