軍事クーデターへの抗議・抵抗・民主化運動に連帯を

かけはし 第2653号 2021年2月15日

ミャンマー ロヒンギャへのジェノサイドをやめよ

各地で抵抗が広がる

 ミャンマー(ビルマ)で2月1日に起こった軍によるクーデターに対して、最大都市のヤンゴンをはじめ各地で抗議と抵抗の運動が始まっている。
 同3日から公立病院の医師によるストライキや、夜間に一斉に鍋などで音を鳴らして抗議の意思を表す運動、SNSを通じた署名運動などが始まっており、同5日にはヤンゴンの大学などで教員や学生ら250人以上がクーデターに抗議し、軍側に拘束されたアウンサンスーチー国家顧問の解放を求めるデモを行った。
 日本でも同1日に東京の国連大学前に在住ミャンマー人たち約1000人、同3日に外務省前に約3000人が集まり、アウンサンスーチーの釈放を要求した。
同6日にはヤンゴン中心部でクーデターに反対して約1500人がデモに参加した。軍は同日、国内のインターネットを遮断し、抗議活動を封じ込めようとした。
 2月1日のクーデターの経緯と、ミャンマーの反軍政・民主化の運動の活動家たちの基本的な主張については、別掲の東南アジア地域の市民団体・NGOの共同声明(2月1日付)を参考にされたい。この共同声明はASEAN諸国人権議員団(APHR)のウエブ等に掲載されている。APHRは東南アジア地域の進歩的国会議員のネットワークとして2013年に結成され、人権擁護の立場からこの地域における国境を超えた連帯を呼びかけている。

民主化立ち止まりの背景


今回のクーデターは昨年11月の総選挙でアウンサンスーチーが率いる国民民主連盟(NLD)が大勝した時点で、すでに想定されていたと考えられる。軍および軍と連携するUSDP(連邦団結発展党)は、選挙は不正だったと主張し、結果を受け入れないことを表明していた。
ミャンマーでは1990年代から2000年代にかけての民主化運動の高まりと軍政の国際的孤立、経済的行き詰まりを背景に民政移管のプロセスが始まった。しかしこのプロセスは2008年の新憲法によってあらかじめ軍政の継続がビルトインされており、軍は政治的にも経済的にも権益を維持・拡大してきた。アウンサンスーチーは政治的安定を維持するために軍に対して融和的な姿勢を維持した。特に、ロヒンギャ問題で軍による暴力的な追放政策を容認したことで、民主化のシンボルとしての期待を裏切り、民主化を支持してきた多くの人たちを当惑させた。
民政移管のプロセスが始まり、国際的な経済制裁が解除されて以降、ミャンマーはグローバル市場に参入し、新自由主義の「最後のフロンティア」として注目されてきた。
しかし、2010年代に顕在化したグローバル資本主義の危機の中で、民主化への国際的な関心が後退し、むしろ国際的競争力において強権化を通じた政治的安定がプラス要因になる状況さえ生まれてきた。軍にとって民主化を妨げることによって西側諸国からの批判が高まり、投資が停滞するリスクは、アウンサンスーチーをシンボルとする民主化運動が徐々に軍の政治的権力と経済的権益を脅かすリスクと比べて、重要でなくなっていたのである。
東南アジアでは1980年代に経済的躍進に伴って民主化と社会運動の前進が注目されたが、この流れは1997~8年のアジア通貨危機以降後退を続けてきた。ミャンマーでは20年遅れでこのプロセスが始まろうとしていたが、民主化を推進する社会的・階級的勢力が未成熟だった。そのため、民主化は強大な軍の影響力の前に立ち止まってきた。

ロヒンギャを虐殺

 ミャンマーの民主化プロセスが決定的に躓いたのはロヒンギャ問題をはじめとする民族問題である。いずれも過去の植民地時代から独立の過程にまで遡る複雑な問題であるが、ラカイン州のロヒンギャへの迫害は大量の難民を生み出し、同州や隣国バングラデシュの難民キャンプで数十万人が絶望的な困窮状態に置かれている。さらに、北部の中国・雲南省との国境に接しているカチン州でカチン人(多数がキリスト教徒)の自治権や土地・資源をめぐる問題で、東部のシャン州では最大の少数民族であるシャン人の自治権やこの地域における麻薬取引あるいは取り締まりをめぐって、軍との暴力的衝突が繰り返されており、南東部のカイン州でも自治権を求める武装闘争勢力が存在する。
アウンサンスーチーとNLDが多数民族であるビルマ人による他民族への抑圧、民族的権利や人権の侵害を容認してきた結果、軍はロヒンギャに対するジェノサイドを何の躊躇もなく進めている。
軍部のクーデターを非難することは、アウンサンスーチーとNLDが軍による人権侵害・ジェノサイドを容認してきたことに沈黙することを意味しない。

民衆のアジアのために


ミャンマーの民主化プロセスを妨げるもう一つの要因は中国のこの地域に対する戦略である。中国はASEANへの経済的影響力を背景に、この地域への政治的影響力、さらには軍事的影響力を拡大しようとしてきた。中国の対外投資や経済協力のやり方は、欧米諸国や日本の帝国主義的なやり方と全く変わらない。それは投資先や協力先の国や地域の資源を奪い、安い労働力を搾取し、環境を破壊し、その利益は自国に還元される。クーデターの首謀者たちは、中国政府や共産党がクーデターを支持しないまでも、制裁を主張する西側諸国と一線を画して、政治的中立を装うことをあてにしているに違いない。そうなれば西側諸国も、中国がミャンマーの市場で有利な立場に立つことを恐れて、制裁を手控えするだろう。
米国のバイデン政権はオバマ政権・トランプ政権を継承して「米中冷戦」の道へ大きく踏み出そうとしている。こうした国家の思惑を超えて、アジアの民衆同士の連帯で、民族の自治権・自決権、労働者・農民の権利、女性の権利をベースとした民主主義に向かって進むことが求められている。軍や強権的政府の圧政を終わらせるために、ミャンマーの国内および国外でクーデターに抗議・抵抗する人々と共に闘おう。
(小林秀史)

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