「ハシブトのボス」

コラム「架橋」

 マンションの各ベランダではドバトのフン対策が続いている。だからと言って洗濯物や布団にフンがかけられるわけでもない。私はフンをシャベルで集めて、サボテンの肥料にしている。5月にはオレンジ色のたくさんの花をつけた。
 ある日、ベランダの排水口わきにカラスがフンをした。洗濯機の排水とブラシを使えば簡単に掃除はできてしまうのだが、フンの量はハトの比ではない。そしてそれが何度か続いたのである。
 対策をしなければならないと、細く引き裂いたビニールひもをベランダの上に張りめぐらした。足に絡みつくのを嫌がるだろうと考えたのである。それから2日後の朝、隣のベランダの上にカラスがとまっている。「どうしたものか」と困っているようだ。
 来ていたカラスは私が予想していたとおりの「ハシブトのボス」だった。近辺にいるカラスの中では一番の大柄のオスで、私を威嚇しようとしたことがあったのでカサで追い回したことがあったからだ。
 しかしこれで私が勝利したわけではなかった。それから数日後に、またしても排水口わきにフンを落とされた。それで今度はベランダの上にとまれなくするために、1センチ間隔でガビョを差し込んだガムテープを張り付けた。しかしそれも数日で突破されてしまう。隣との目隠しバーの上からフンを落としてきたのである。ならばとそこにもガビョを張り付けた。
 それからしばらくはカラスのフンを目にすることはなかったが、デイサービスに行く叔母を見送って自宅に戻ると、ベランダの物干しざおにとまってる「ボス」が網戸越しに私を見ながら「カア、カア、カア」と鳴くのである。「もしや」と思い排水口を見てみるとフンがあるではないか。今度は目隠し板の上からフンを落としたのである。
 「完全に遊ばれてるな」!仕返しや嫌がらせだとしたら、ベランダのあちこちにフンをすればいいわけだが「ボス」は排水口の脇にしかフンを落とさないのである。「もう遊びは終わりにしよう」!ビニールひももガビョも近々、撤去する予定だ。Game is over!     (星)
 

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