コラム「架橋」
ポケトーク
先月ソースネクスト社のAI通訳機「ポケトーク」を購入した。昨年早々にも購入するつもりだったのだが、新型コロナパンデミックによって実質的に海外渡航ができなくなったということもあったために購入する時期を引き延ばしていた。とりあえず在日ミャンマー人の若い人たちと話をしてみたいというのが、今回購入することにした直接的な動機であった。値段は2年間の通信使用料(1万1000円)込みで2万5000円ほどだった。
この名刺サイズほどの通訳機なのだが、衛星に搭載しているコンピューターを介して70~80の言語に対応できる。なかにはアムハラ語、カンナダ語、マラヤーラム語など聞いたこともない言語も含まれている。また英語は米・英・インド・豪・フィリピン対応もでき、スペイン語も米・アルゼンチン・コロンビアに、フランス語もカナダに、中国語も北京・広東にセットすればそれぞれに対応することができる。
例えば日本語と英語(米)での会話にセットして、ボタンを押しながら日本語を話すと、本機の画面には、話した日本語とその英訳文が掲載されるのと同時に、即座に女性の声で流暢な英語の音声が流れるのである(音量は0から大まで調整可能)。そして画面をワンタッチして話し手をチェンジすれば、同様に今度は流暢な日本語が返ってくるのである。ただし例えばitの使われ方などの文法上の差異は、日本語を英語に訳す際に微妙であり、直訳的になっているのかもしれない。それでもAIは学習するようなので、使えば使うほど良くはなっていくのだろう。
さて在日ミャンマー人の集会で使用してみたことについて報告しなければならない。外での集会ということもあって雑音が多く、ハンドマイクの声は遠くからは拾うことができなかった。30代より上の世代は滞在歴も長く、日本語での会話ができるのでポケトークは不要だった。それで留学生なのか労働者なのかは分からないが、若い人の塊のなかに分け入って「日本語は話せますか」と質問すると首を横に振ったので「よし!」とばかりに通訳機に日本語で「これは自動通訳機で、ミャンマー語も通訳できます」と話すと、機械的ではあるが女性の声で流暢なミャンマー語が周りに流れた。そしてその声に反応するかのように、周りにいた若者たちが「何だ何だ」と押し寄せたためにまともに話ができないのであった。集会場で渡された紙に印刷されたミャンマー語を指さして「これは何と書いてあるのですか」とポケトークで質問すると、同じ紙に印刷されている日本語を指さして「同じ同じ」と日本語で返してきたのであった。
ポケトークは会話の他にはインタビューでも使えそうだ。ぶっ通しで4~5時間は使えるようだし、内容は外国語と日本語の双方の文字としてすべて保存される。テープ起こしは不要ということになる。正しく発音できれば外国語を日本語に、日本語を外国語に翻訳することもできる。その後者ならば、よほど方言が強くない限り誰でも可能である。その他にも写真機能や会話練習機能などもあるようだ。皆で有効に使えればと思っている。
(星)