いやなニュース(9月20日発行)
コラム「架橋」
最近、いやなニュースが多い。港区で起きた硫酸かけ事件、20代の夫婦による女子高生殺害事件。どう考えても被害者にとって理不尽極まりない事件だ。後者の事件はまたもSNSが事件にからんでいる。
そして、驚かされるのは事件が起きてすぐに容疑者が特定され、逮捕されたことだ。警察にしてみれば、日本の治安当局の優秀さを立証することで鼻高々だろう。今や日本中の至る所で監視カメラによって、個人のプライバシーが奪われて、監視されていることを証明している。そして、市民たちはそれを許容してしまっている。
数カ月前になるが、NHKのBS放送で『中国 デジタル統治の内側で〜潜入・新疆ウイグル自治区〜』を見た。NHKの宣伝文句。「大勢のイスラム系少数民族ウイグル族が中国政府によって収容施設に拘束されているとされる新疆ウイグル自治区。潜入取材により、その実態を明らかにする。
新疆ウイグル自治区での中国政府のウイグル族への締め付けについては、住民を拘束し、収容施設で厳しい規律のもと徹底した思想教育が行われていると国際社会から批判を浴びている。数週間にわたる現地潜入取材、拘束経験者や失踪者家族の証言から、その実態を明らかにする。2020年国際エミー賞最優秀時事番組」。
中国政府に見つからずによく作ることが出来たという感想を持った。監視社会・中国の実態をえぐり出すものだった。
自治区首府のウルムチで、中国政府はハーベイの5Gを使って、街中の監視カメラによって、ひとりひとりのウイグル人の行動を特定していた。ちょっとでも反政府行動を取ろうものなら、すぐに特定され拘束されてしまう。
完璧な監視社会が出来上がっている。ハーベイなどの企業はこの技術を中国国内だけで活用するのではなく、海外で監視社会が必要な国家への輸出を試みている。
新疆ウイグルでの「成果」を、われわれが考えるような人権侵害として捉えるのではなく、あくまでビジネスの成功例として売り出すというのだ。
この番組を見たとき、中国の監視社会のすごさを知り恐怖を覚えた。しかし、今回の日本の出来事を見ても分かるように、中国だけが抜きんでているわけではなく、日本や米国、ヨーロッパなどでも同じような監視・管理社会になっている。
個人情報を国家が治安対策のために管理する。「テロとの戦争」を名目に急速に進められている。日本では住民台帳から金融資産の管理などの個人情報をデジタル庁を発足させることにより、その領域にも管理の手を伸ばそうとしている。
9月3日、菅首相の突然の自民党総裁選断念の報道。人々の要求に応えられない政府の末路はあっけないものだ。政治をいかに変えるか。難題への挑戦だ。 (滝)