小さな林と原っぱで

コラム「架橋」

 60人ほどの小学生の一団が手に真新しい虫捕り網をもってワイワイガヤガヤと舗装道を歩いていく。この辺は大きな原っぱもなく、小さな植え込みでコオロギが鳴くぐらいの地域だ。そう言えば投書欄で「最近、蛙が鳴かなくなった」「蛙の姿が見えない」「雀がいなくなった」「トンボが来なくなった」等の声が寄せられている。
 先日友人から恒例の「ハゼ釣り」についての電話があった。魚の育ちが悪く10センチに満たない小さいのしか釣れないと言う。船頭の話でも「産卵期に入って岩場に集まるネウ(魚名)が見えね。1日釣って船1艘で5匹しか取れないし卵も持っていない」。「海が温かい」からだと言う。秋サケの不漁、秋の味覚・庶民の魚の代表格「三陸のサンマ」も絶望的な不漁で、比較的良型に「一匹300円」の値段がついていた。
 友人から酢橘を頂いたので、サンマの塩焼きにタップリかけて喰おうと思い、脂の乗りがイマイチだが細身のサンマを買って食べた…? いつもは、市場に豊富に出回る天然のキノコも全くと言ってよいほど出回っていない。その理由は少雨。生活の隅々から見えてくる地球温暖化の影響。
 「岸田首相!話を聞いてください」「岸田首相…‼」と首相に呼びかける若者の声。SP、側近の防御のなかで全く呼びかけに反応しない。グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)のテレビニュースの一コマ。
 「聞く力」を売り物にしている岸田首相の姿に心底驚いた。「蛙の歌が聞こえてくるよ♪♪ ゲゲゲ♫ げろげろげろげろ ゲゲゲ♫」。そうか! 蛙の合唱は何となく耳に聞こえたもの。人々の声に耳を傾け、意味を考える「聴く」とは大違い。岸田首相は、誰が「国民の声を聴く」と言った!あなた達「国民」の勝手な「思い込み」なのだと態度で表したのがグラスゴーの一件だ。グラスゴーでの「未来のための金曜日」のデモには世界から2万5000人もの若者が参加したと報道されている。このまま何もしなければ大人になる頃に深刻な温暖化が起きると言う未来への危機感。本当に行動すべきは「大人達」なのだと突きつけている。
 政府は「途上国に5年で100億ドルを追加支援」することで「日本で火力発電を使い続ける」ことを正当化したが、世界の声は「CO2排出の蛇口を閉めろ! 石炭火力を全廃せよ!」なのだ! 国際社会と民衆の要求に、化石燃料企業の延命に手を貸すのが日本政府の声明と行動だ。筋書きどうりに「採択の全会一致」を盾に「石炭火力廃止」という希望を霞の彼方に追いやったのだ。「化石賞」という世界の人々の怒りのメダルをぶら下げて岸田首相は「喜々」として戻ってきた。
 そして、もう一つ「未来応援給付」という名の「10万円バラマキ施策」。地球温暖化と天文学的数字1200兆円の国家財政の赤字を「10万円」で背負わせる。こんな政権をのさばらせているのは私達「大人」の責任だ。多様な生物と一緒に生きれる世界。それは人類に課せられた任務なのだと思う。      (朝田)

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