関東鉄道夜汽車の旅
コラム「架橋」
ネットの鉄道ニュースを覗いていると「関東鉄道 素朴で懐かしい夜行列車の旅へ」という文字が目に飛び込んできた。そしてそこには、「11月13日(土)急行夜空号 守谷駅23:45分発 守谷駅5:40着(解散予定)」とあった。
関東鉄道常総線とは、常磐線の取手駅を起点に水戸線下館駅を終点とする路線総延長51・1キロのローカル私鉄。開業は1913年11月だから今年で108年の歴史を持つ。全線非電化でキハ2300形が走る。駅数は25駅で、そのほとんどが無人駅であるが、途中の守谷駅では秋葉原とつくばを結ぶつくばエクスプレスが交差することから、付近一帯は東京のベッドタウンとして急速な発展を遂げている。また、関東鉄道には、この他に常磐線佐貫駅を起点とし、終点竜ヶ崎駅を結ぶ竜ヶ崎線がある。
さてここからが本題である。前述したように路線総延長わずか51・1キロの常総線に夜行寝台列車など存在するのだろうか。同線を走る快速を使えば取手から下館までは約1時間。到底夜行寝台車が走る距離ではない。発車から到着までの時間を計算すると約6時間弱。その距離をどのように走行するのか。興味津々のボクはすぐさま乗車の予約フォームを開いた。そこには、定員が36人で、かつての国鉄や現JRのA寝台・B寝台とは異なり、洒落のつもりかC寝台・D寝台の選択があった。そして乗車は先着順ではなく抽選によりその不可を連絡すると記されていた。何でも10月に企画したところ好評で、2回目の運行となったようだ。その参加費はC寝台(ロングシート。足あわせで2人ゴロ寝)で何と1万3000円也。シートと同じ赤茶色のモケットを使った特製枕と夜食がつくというのだが詳細はわからない。
後日、メールで乗車案内が送られてきた。参加費は当日、現金のみで、そこにはキャンセルポリシーも付け加えられていた。まさしく商魂たくましいとは、このことだ。企画力こそがすべてであることを改めて実感したしだいである。
しかし問題は守谷駅発23時45分までどう時間をつぶせばいいのかということだ。運行日の11日は午後3時まで仕事があったので、自宅から守谷まで車で乗せていくというポン友の言葉に甘え送ってもらうことにした。それでも時間は余る。そこで、守谷にほど近いスーパー銭湯で一風呂浴び時間を調整することにした。そして出発の2時間前、最寄りの寺原駅から常総線で守谷駅に向かったが、もう少し開けているかと思った駅前だが広いロータリーがあるだけで、駅構内にも空いている珈琲店はない。バーボンウイスキーを詰めたフラスコと、シェラカップ、ソーダ水を持参してきたので、受付・入線時刻まで待合室で一杯やることにした。が、ここで問題がひとつ発生。その夜行寝台にはトイレが付いていないということだ。つまりあまり呑みすぎるとあとが危ない。列車に乗り込んでから用をたそうと思ってもできないのだ。
23時ごろになるとぞろぞろ、その夜行列車に乗車すると思われる趣味人たちが集まり始めた。しかし、よく見かける乗鉄、撮鉄とは明らかにその風体、様相が怪しげなのだ。中にはキャリーバッグにダンボール箱を括り付けた参加者もいる。もちろん首からカメラは当たり前。受付で領収書をもらう人もいた。
そして23:30入線。乗り込むとベッドとなるロングシートは、すでに枕や案内書、指定番号の札が置かれており、各々自分の席を探し発車時間を待った。途中の水海道駅ホームでは夜食と称されるモツ煮の炊き出しがあり、その他、各所で撮影会が行われた。そして消灯。真っ暗な車内からは、踏切の赤い警報や街灯りが見えたが美しい夜景というほどのものではない。下館駅で30分ほど停車し、折り返した列車は停まり停まりのろのろと走り、まだ暗い守谷駅に5:40に到着した。
1万3000円は、ボクも含めて趣味人ならでは理解できる金額だったと言い切れる。 (雨)