障害者

コラム「架橋」

 障害者・障がい者・障碍者・チャレンジド……「障害者」の表記の選択肢としてあげられているものだ。『かけはし』紙上では執筆者個々人の判断で、障害者および障がい者として表記されている。いつ頃だったのかは定かではないが、『かけはし』紙上ではそれまで常識的に障害者と表記されてきたものが、障がい者と表記するものが出始めた。私はこの表記を目にして「柔らかくて優しい感じがしていいかもしれない」と思い、深く考えることなく現在まで「障がい者」と表記してきた。そう判断させたのは「害」という漢字のなかに、公害・害虫など負のイメージを感じていたからだろう。
 先日「これ読んでみないか」と仲間からコピーの束を受け取った。①障がい者制度改革推進会議・「障害」の表記に関する作業チームの「『障害』の表記に関する検討結果について」(2010年11月)と、②文化審議会国語分科会の「『障害』の表記に関する国語分科会の考え方」(2021年3月)と、③放送用語委員会(東京)の「『障害』の表記について」(2019年11月)である。
 ここでは「障がい者」という表記に関連するものをいくつか紹介する。③の資料のなかに「障害者団体に対するアンケート」がある。ふさわしい表記として「障がい」が1件だったのに対して、「障害」が5件、「決めていない」が7件だった。団体の表記として使っているのは「障がい」が2件だったのに対して、「障害」が12件だった。
 「障がい」という表記に対して批判的な意見を代表しているのが「『害』という漢字だけでなく『がい』というひらがな文字においても、マイナス(負)の意味を持っていることは同じである。『障』という漢字もマイナス(負)のイメージがあり、『しょうがい』というひらがな文字に置き換えても同じである。現在、社会において少数者である『障害者』は、社会生活のあらゆる場面においてさまざまなバリア(障害・障壁)がある状況を認識し、それを変えていこうとしており、その取り組みが重要である。表記だけの見直しは、かえって『障害者』が抱えている課題が見えなくなるおそれがあることを意識する必要がある」というものだ。
 こうした批判的な意見の背景には、障害者権利条約の精神と、それを基にした表記(英語)がある。persons with disabilitiesが用いられている。①②の資料のなかでそのことが紹介されている。「イギリス障害学ではdisabled peopleが用いられており…社会的制度によって無力化された集団という意味で使われている。アメリカではpersons with disabilitiesが用いられているが、これは個別的属性としての障害のある人というような意味で使われており、障害を否定的なimpairmentsではなくて、例えば民族性、出自といった属性と同様に属性の一つとしてとらえられている」ということである。
 「障害」の表記に関しても、やはり当事者である障害者を中心にして考えていくしかないのであろう。        (星)
 
 

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