ウクライナ危機の影響

コラム「架橋」

 3月の10日発送分から、ヨーロッパに『かけはし』が送れなくなっている。ロシアが制裁に対する報復として、領空飛行を禁止したためだ。エジプトなどを経由する南ルートや、アラスカ経由の逆回りルートもあるようだが、これらの迂回ルートは減便の影響もあって輸送コストが倍増しているようだ。終息の目途が立たないコロナパンデミックにウクライナ危機が追い打ちをかけて、はたしてこの世の中はどうなってしまうのだろうか。
 ウクライナ危機は、気候変動や内戦などの影響で飢餓に苦しみ、国連世界食糧計画(WFP)などから食糧支援を受けている人々にも大きな打撃となっている。小麦の世界価格は、昨年夏の北米での高温と水不足による不作の影響などで、すでに大幅に値上げされてきた。そしてそこにエネルギーと輸送価格の高騰と、ウクライナでの減産とロシアからの禁輸の影響などが加わってくることになる。
 日本は小麦の約9割を輸入している。輸入先は米国・カナダ・豪州の3カ国でほぼ100%だが、2021~22年の世界の小麦輸出量は、ロシアとウクライナだけで全体の3割弱を占めるとされている。この2カ国からの小麦は、黒海を経由して中東と北アフリカに輸出されている。そうしたことから、シリアとイエメン難民(計1860万人)向けの食糧支援を実施しているWFPは、小麦の半分以上をウクライナ産に頼ってきた。小麦価格のさらなる高騰は、資金不足にあるWFPの人道支援をより困難なものとするだろう。
 現在WFPはウクライナ支援にも翻弄されているようだが、ウクライナ危機はウクライナだけでなく、シリアやイエメンの子供たちをも死に追いやろうとしているのだ。日本政府に対して、WFPへの十分な支援を要求しよう。
 一方、海産物への影響は今のところほとんど出ていないようだ。ノルウェー産の生サーモンが航空便の影響を受けているが、ロシア産のカニ、ウニ、タラ、サケ・マスなどの輸入は制裁の影響を受けていない。
 極東ロシア産の海産物は、密輸防止や価格相場設定などのために、そのほとんどが韓国の釜山に水揚げされているからだ。韓国は現在、ロシア漁船の入港を禁止していないが、これがいつまで続くのかは分からない。また岸田首相がロシア産の海産物に対して関税を引き上げると表明しているので、そのうち影響は出てくるのであろう。
 私はチリ産養殖塩ジャケの油のにおいが嫌で、少し割高にはなるが、今でもロシア産の天然紅ジャケを購入している。しかし『毎日新聞』(3/24)は、すしチェーン店で客から「なんでロシア産なんか使っているんだ」といった苦情が殺到し、「不買運動リスクが考えられる」と、消費者の「ロシア離れ」について報道している。
 「悪いのはロシアの漁民ではなくて、独裁者プーチンだ!」と、ロシア産の天然紅ジャケの塩焼きを口一杯にほお張りながら叫びたい。    (星)

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