北の太刀魚

コラム架橋

 最近、三陸の海は「太刀魚」(タチウオ)が豊漁だそうです。大きめの地元産タチウオが二切「6から700円」で売ってます。かれこれ50年も昔の話だが、会社の集合研修か何かで東京に出張したことがあった。旅館に二泊三日程の日程なので、言ってみれば気楽な小旅行の雰囲気だった。
 ひと風呂浴びて夕飯を終えると何もすることがない、しかもまだ「宵の口」。宿の近くの小さな居酒屋に入り酒を注文するとお通しに魚と胡瓜を酢で和えた「胡瓜もみ」が出てきた。うん!酒に合う。この魚はナニ?と聞くと女将さんが「タチウオです。今が食べ頃」「おいしいでしょう?」。
 初めて名を聞く魚であり想像できなかったことを覚えている。それもそうだ、つい最近まで東北ではなじみのない魚であった。「海に異変が起きている」。この頃よく聞く話だ。
 昨秋は秋刀魚が不漁で「刺身」はお目にかからなかった。可哀そうなほどか細い秋の味覚の代表・庶民の魚「秋刀魚」が店頭に並んだ時には、その姿と高値に唖然とした。毎年、放映されてきた「大間の鮪漁師」もクロマグロの極端な不漁に喘いでいるという。
 海藻類が食い荒らされ「磯焼け」が広がる海と、中味はスカスカの大量のウニが岩肌にくっついている姿。三陸の海で取れる聞きなれない名の魚たち、何かが起こっていることは容易に想像できる。
 「人的影響による地球温暖化」(22年のIPCC報告)が「確定的要因」と発表している。温暖化による日本近海の海水温上昇は、世界平均の1・5倍〜3倍も上昇していると報告され「直ちに地球温暖化の対策を行って気温の上昇を抑えられても、海水温や海面水位が変化するまでには相当な時間がかかると考えなければならない」(水産庁)と言う。研究者は「サンゴの白化現象の拡大、オニヒトデの大量発生、水質の変化等による磯焼け等々、漁場の荒廃を拡げている」と報告している。
 気候温暖化はあらゆるものに不可逆的な影響を与えている。産業革命以降の資本主義的生産と人間の欲望が危機を創り出した。しかし、参院選挙で「気候温暖化問題」を切り口に「脱原発・脱炭素の再生可能エネルギー」政策を正面切って訴えた候補者は私の知る限り殆どいない。やれ「若さ」だの、「国会で仕事をさせて下さい」だの「皆さんのお役に立たせてください」等々……温暖化、貧困格差が世界を覆い先進国の責任が試されるなかで、またぞろ「成長戦略」と「豊かな日本」というアピールに辟易するのは私ばかりではない。
 新聞の「歌壇・俳壇」コーナーは、世相や人々の意識を反映しておりこの頃は興味深く読んでいる。最近のお気に入りは……。戦争について、「残念な生き物王座」は、戦争を絶やしたことのない「ホモサピエンス」と詠んだ短歌と、気候変動問題について、「温暖化」は「ホモサピエンスの問題」で「地球は少しも困っておらず」と詠んだ二つの短歌である。地上の生態ピラミッドの頂点(王座)を占める人間の愚かさを的確に突いているなと感じる。
 王座に就いた人類の驚くべき「錯覚」は「生殺与奪の権利」を握ったと言う思い込みなのだ。世界では体温限界値を遥かに超える「50℃」超があちこちで。既に残された時間的余裕は無いのでは? 猛暑の夏に一人思い巡らす。   (朝田)

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