猛暑と人々の姿
コラム架橋
先週の30℃を超えるうだるような熱さが舞い戻ってきた。8月9日東京都心の最高気温が35℃に達し、今シーズン14回目の猛暑日となった。1875年の統計開始以来、歴代最多日数を更新したという。朝4時、部屋の温度は28℃を超えている。地下鉄の始発に乗りバイト先へ。
毎朝、地下鉄のエレベーターでのドラマが待っている。数カ月前のこと。駅に電車が着くともうダッシュで、エレベーターに乗り込み、そして駆け出して行く人がいる。それが毎回のこと。私は時間に余裕があるので、その人の降りる電車を待ち、エレベーター操作をしてあげるようになった。5時半まで勤め先に入らなければならないようでいつもギリギリだ。
朝早いので、余り乗降客は少ないのだがそれでも、上から降りてくる人、上がる人。うまく、その人の到着をみはからって、エレベーターのボタンを押すのがスリリング。間に合って、ニコッとする笑顔がとても素敵だ。今日は、「熱中症に注意して下さい」と優しく声をかけられた。たった、数十秒間のこと、話ができるわけでも、名前も知らない。
職場で同僚との会話。
「今日も熱いね。熱中症にならないように気をつけようね」とお互いにいたわりの言葉。朝6時、ビルの中は空調がまだ入っていないので、30℃を超えている。少し仕事を始めるともう汗が噴き出て、下着までぐっしょり。
私たちの清掃の仕事以外に様々な業種の人たちが出入りしている。長年続けていると知り合いもできる。そうした人とは気軽に会話する。たまにはお互いの故郷の話も。岩手県出身の人は「田舎はいいが、東京に慣れると田舎に帰ろうとは思わない。あの寒さはこたえる」と。
毎朝、食堂に野菜を届ける業者のお兄さんがいる。よく野菜の不出来の話をする。梅雨の時は野菜が腐ってしまったり、今の猛暑だとやはりお照りで、良い野菜が採れない。「野菜は高級品だから、食べないよ」と冗談まじりに話してくれる。青果市場で買い付け、いろんな店に卸していく。3時起きだとも。
私は「熱い、熱い」と仕事をしているが、そんな軟ではとても務まらない仕事がある。それは生ごみを集めるゴミ収集車の運転手だ。ちょうど、仕事の真ん中あたりの時間に来る。20㎏の生ゴミなど400㎏以上を毎回収集していく。ずらりと置かれたゴミを手際よく、台車にどう積んだら良いかを見極めながら、体を動かしていく。実にきびきびとした動きだ。当然、顔からは汗がぽたぽたとしたたり落ちている。いつも「ありがとうございました」とあいさつして帰る。
食堂のシェフに「熱いのでどこかで涼んでいったら、気をつけてくださいね」と声を掛けられた。気遣いに感謝を込めて、会社を後にした。猛暑の続く一方、埼玉そして山形、石川・福井、秋田・青森と猛烈な集中豪雨が続く。明らかに地球温暖化が異常な気候変動が常態化している。まったなしで止めなければ。(滝)