魚はどうなってしまったのか?
コラム架橋
最近、庶民の味方で美味しいサンマが取れなく、スーパーに並ばなくなった。魚がどうなっているのか気になっている。海水温が上り、漁場が太平洋側へ移ってしまった。沿岸に近づいても脂の余り乗っていない小さなものだ。安くて美味しいサンマだけではなく、50年前、東京に来た時、格安の魚といえば、目刺しだった。今、スーパーで目刺しを見つけるのは難しい。
そして、私にとって忘れられないのが、「むつ」という魚である。1970年代中ごろ、事務所で組織会議が終わると必ず寄る駅近くの焼き鳥屋さんがあった。そこで「黒むつ」焼きが安く食べられた。脂がのっていて、それで身がぷりぷりしている。そして、この魚がある社員食堂でも、数年前まで提供されていたが、この間出されなくなった。
「銀ムツ」は南極近辺の深海で獲れる。魚名はメロだが「銀ムツ」の名前で流通し、庶民的な値段で出回っていたが、年間輸入量は2012年の2382トンから、昨年はわずか207トンまで激減した。値段も10倍に。厚切りの銀ムツ、西京漬け2枚が4500円に。高級魚になっていた。
金持ちになった中国などが買ってしまうというのだ。水産物消費量が中国の場合、1970年に313万トンから2017年には5519万トンへ増えている。世界的にも倍増。逆に日本は636万トンから582万トンへと減っている。世界の海では、1970年からたった40年で人が食べる魚の50%が減少した。そしてマグロ・サバ・カツオに至っては74%に減少。
NHKの「クローズアップ現代」で、海での操業で漁船員たちへの労働条件を守らないなど、違法問題が取り上げられていた。こうして獲られた魚を国際的には買い入れないことになっている。EUに比べて、日本はこの問題に消極的で、野放し状態だと警鐘していた。また、別のニュース。北の海で本来取れないブリが獲れるようになったが、やっかいもの扱いに。1キロ100円にしかならず、値がつかないという。
まだある。私の田舎の静岡県駿河湾の名産品といえば桜エビだ。それが2018年にはそれまでの7分の1しか獲れなくなった。漁業者は頭を抱えた。それまで、漁協組合員に限定し、漁獲量を決めて資源確保に努めていた。原因は①富士川の濁り。ダムからの土砂の流出、砂利採取による汚濁。②黒潮が蛇行し、海水が供給されなくなったこと。③春漁の水揚げにより産卵期の桜エビを獲りすぎた。最近でも資源量は回復していない。
海のエコラベル、自然の海で取られたものをMSC「サステナブル(持続可能)・シーフード」、養殖されたものにはASCという認証ラベルがついている魚を買うという運動が行われている。乱獲や違法な漁業、海辺の自然破壊、ウミガメや水鳥の混獲、汚染を伴う養殖を防ぐためだ。エコで持続可能な水産物との付き合いはどうあるべきか。 (滝)