与那国島の泡盛
コラム架橋
人口1700人の与那国島に60度以上の泡盛を造る酒蔵が3軒もある。「どなん」の国泉泡盛、「まいふな」の入波平酒造、「よなぐに」の崎元酒造である。与那国島は台湾の酒文化の影響を受け、昔から60度の酒を造る風習があったそうだ。
これらの島酒は公的には泡盛の名称を使えず、正式には花酒=ハナダギという。もちろん、材料も製法もいわゆる泡盛と同じである。しかし、日本の酒税法では45度以上の酒はスピリッツに分類され、泡盛と名乗ることはできないからである。もっとも、観光客も含めて、一般的には泡盛と言っているようである。
私は「どなん」と「まいふな」は飲んだことがあった。「どなん」を飲んだ経緯は忘れたが、「まいふな」は30数年前に白保を訪れた際に、石垣島でお土産に買ったのだと思う。
60度の泡盛をロックや水割りで飲んではいけない。最初の一口は二三滴でもいいからストレートで楽しみたい。舌から口全体へと広がる泡盛特有の味と香り、60度にもかかわらず味は重くはなく、むしろ軽く、香りはさわやかである。矛盾するようだが、急いで冷たい水を飲む。もちろん、喉の保護のため、喉頭がん予防のためである。
次はお湯割りで。焼酎をお湯で割るとき、焼酎にお湯を注ぐのか、お湯に焼酎を注ぐのかには諸説あるようだが、60度の泡盛をお湯で割るときは、泡盛の入ったグラスに熱いお湯を注ぐのがいい。甘く、さわやかな香りがいっぺんに顔全体を覆う。その香りにむせ返りそうになりながら、グラスを口に運ぶ。至福の時である。
「かけはし」に投稿した報告記事にも書いたのだが、自衛隊の配備を巡って、与那国島では島を二分する激しい闘いになった。その影響なのだろう、私たちを案内して下さったAさんが紹介してくれた民宿も、昼食の弁当を買った比川(ひがわ)地区の共同売店の人たちも、図書館の方も、基地反対派の人たちのようだった。
そのAさんが、「蔵元という有力者なのに基地反対なのです」と言って連れていってくれたのが、「よなぐに」の崎元酒造であった。私たちが迷うことなく60度の「与那国」を買ったのは言うまでもない。ちなみに、「どなん」の国泉泡盛は基地賛成派だそうであり、「まいふな」の入波平酒造については、賛成か反対かは聞き洩らしてしまった。 (O)