10月の憂うつ

コラム架橋

 毎年10月は、自治体で働く非常勤職員にとって、一年間でもっとも緊張する月と言える。来年四月からの自分の身分が問われる時期だからである。「地方公務員法改正」で2020年度から導入された会計年度任用制度(会任)。雇用期間が文字通り「一会計年度」に限られる、問題だらけの制度である。
 私は昨年4月、非正規公務員となった。定年退職後約4カ月の失業を経て、A区職員として働いている。A区では常勤1638人、非常勤が862人。職員総数2500人のうち、34%が非常勤職員である。私の席のあるB部では常勤265人会任117人で約3割が非常勤。C部に至っては常勤75人会任153人。非常勤率は67%にも上る。職場募集の専門職は事務職より基本給が高い。月額任用の基本給は20万円に届かず、一人暮らしなどままならぬ薄給だが、同僚の専門職の女性らはダブルインカム。主たる生計維持者が配偶者だから勤まるのか。かつて正規一般行政職は「男性職種」だったが、非正規化のとたんに「女性職種」と化した。「非正規化」と「女性職種化」は一体となって進むのだ。
 「○○さん、面談だって」。同じ職種のDさんが私を呼んだ。課長面談である。事前に提出した書類を基に、型通りの質問に答えて数分で終わる。業務量が多く残業が続いた昨年は早々と「更新」が告げられた。ところが今年は仕事が激減。人員が減らされるのでは、との不安が誰にもあった。
 常勤正規職員の報酬の根拠は(もちろん官公労労働運動の成果もあるが)、異動を想定した「職務無限定、仕事無定量」を前提とする賃金制度にある。一方で会任職員は「限定移動、限定職種」という考え方による。つまり、「単純な仕事を繰り返すのだから、能力の伸長も必要ない」というわけだ。選挙の投票に従事して知り合った女性の非常勤職員は、上司に毎年「配置換え」を訴えているが無視され、不本意の職場で数十年も更新を続けているという。
 A区では区長の裁量で非常勤職員の考課を3段階に分けている。「4年勤続」を条件に昇格の申請を行ない、最上級の基本給は20万円を超える。ところが突然の採用募集では、職種に応じ資格所持を求めつつ、不問のケースも。この基本給が前述と同等だから不公平感は収まらない。職員研修を充実させても賃上げには結びつかない。悪名高き「公募制度」で、職場に慣れた頃に無用な入れ替えが行われ、雇い止めに遭う理不尽もある。
 個人面談から2週間後に、組合は当局の人員配置の回答を受けた。実質的にはこれが次年度の体制となり、再度の課長面談で各職員に告げられる。こうして私が悶々としている間にも、非常勤職員の募集がさかんに行なわれている。なんとも慌ただしい年末である。(隆)

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