平穏に生きる権利を
コラム「架橋」
消費期限は朝方の開店時間に! 賞味期限は夕方5時過ぎに! 物価が上がったと答えた人は実に94%の人々が実感しており、「生活にゆとりがない」と答えた人は53%に上り、その原因を「物価」と答えている。
岸田首相の年頭所感では、生き難い社会状況に何ら触れることはない。「成長と分配の好循環」を生み「経済の持続可能性を追求する」のが岸田首相が掲げる「新しい資本主義」なのだそうだが、どうもどこかで聞いたフレーズだと思ったら「アベノミクス」のパクリ。分配については「格差」に向き合い「企業による賃上げ」や「人的投資の強化」で次の成長……と言う。内閣府資料を見ると91年から30年間にわたり名目賃金、実質賃金はほぼ横ばい。
しかし企業の内部留保(利益剰余金)は20年度統計で約484兆円。つまり日本企業が賃上げを抑制し、しこたま蓄えてきた証拠でもある。「分配と成長の好循環」を語るなら大企業の金庫に眠る大金を放出させること、でなければ「内部留保課税」で社会還元させることが政治の役割だ。そして税収を賃金格差是正に使うことも一案だ。税による再分配機能の低下が言われ続けてきたが大企業・富裕層はむしろ優遇されてきたのだから。もう一つ驚いたのは「令和の所得倍増計画」の報道の中味が「資産所得倍増プラン」だったことだ。運用に回せる「資産」があって多少の運用失敗は「蚊に刺された程度」の富裕層が肥え太っていく施策だ。
つまるところ、岸田政権は何の経済政策も持ち合わせていない。「覚悟」「挑戦」「異次元の少子化対策」等々、まるで「チューリップ」の歌のように並んだが、肝心の庶民の生活困窮には無関心と言うしかない。そして、戦後首相として初めて「敵基地攻撃能力」の保有検討を明言し、何も知らせないまま闇の彼方で政府・有識者の会合等「主権者」不在で戦争準備が進んでいる。
麻生副首相が、街頭演説で日本の安全保障を巡り「弱い子がいじめられる。国も同じ」「(相手が)『やり返される可能性が高い』と思われて、初めて抑止力になる」との発言が昨年報じられた。際限なき軍拡に道を開く防衛費「GNP2%」への動き。「専守防衛」から「相手の着手時」が敵基地攻撃能力のタイミングとして攻撃すると言う。「核の共同保有」を主張する日本の政党・政治家達。戦争を思いとどまらせるかもと語る「核保有」の悪魔の囁きが世界に広がることを憂う。
「敵が攻めてきたら」を論じる前に人々にとって不幸な事態を避けるために会話による外交による解決と努力を進めることが肝要なのだ。日本軍国主義による侵略の歴史と戦争の災禍を肝に銘じるべきなのだ。多民族に対する差別的・排外主義の言葉を公然と吐く政治家を重宝するような政権に平和や友好を語る資格などない。
今日も、早朝のスーパーに足を運び「1円」でも無駄にすまいと苦しい生活を送る人たちを支えるためにこそ税が使われるべきであり、戦争の為にではないのだ。望むのは平穏な生活と生きる権利だ。 (朝田)