「開花の時期が早まる」
コラム「架橋」
世界各地に人々に対し春を告げる花が存在する。その花は当然にも地方・地域によって異なる。最近知られるようになったところでは、地中海にあるシチリア島やイースター島のアーモンドの花が報告されている。この地方では毎年2月になるとアーモンドの白い花が咲き、島を活気付けるという。白い花が咲くと人々は果樹の中心であるアーモンドの手入れを行い、野山に飛び出す。また島民は島の主要な産業でもある観光業のために、祭をはじめ観光客を迎えるための準備をはじめるらしい。観光客はヨーロッパを中心に、南米からも訪れるらしい。アーモンドの白い花は、島をはなやかにし、島民の心に灯をつける役割を果たす「春の花」なのだ。
それにつけても今年、桜の開花は早かった。窓の外に校庭が広がる隣の小学校は今年4月7日が入学式であったが、桜は散り校庭の桜の木の下で写真を撮る親子は少なかった。多くは申し訳なさそうに正門脇の「入学式会場」という看板の横でシャッターを押していた。「開花が早まる」と言えば風流だが、それは山火事、水害と同じくらい大きな自然現象である。アメリカの昨年の火事は例年の3倍にも広がったという。燃焼面積の大きさは、火事の「火力」の違いによるもので、「火力」が強い程、火の広がりは大きくなる。そして「火力」の強さを決めるのは、燃える山林の「乾燥度合い」だという。あの湿地帯を抱えるブラジルのアマゾンでさえ昨年は山火事が多発しているという。さらにドイツでは山火事の被害は例年の水害と同じくらいにのぼるという。10年後にはヨーロッパの多数の国が、ドイツのようになるというのが学者たちの報告である。
北極や南極では氷が溶け、ロシアのシベリア地方ではツンドラと呼ばれる永久凍土が溶け、多量の水が海に流れ出ている。そのあおりですでに太平洋の島国では、海水による土地の浸食が始まっているという。
あらゆる政策の基準を自らの延命に置く岸田政権は突然の気候変動に対する政策を発表した。それは突き詰めると2点である。第一は、原発の再利用である。新規に原発を建設し、休業中の原発を再稼働し、古くなった原発を延命させるというものである。福島の事故を未だ収拾できず汚染水を海洋投棄するという。ドイツが原発の放棄を宣言しているのに事故を起こした日本の政府が原発再利用を宣言しているのであり、各電力会社の火力発電に使用している機械を効率的で大型のものにするように指導したり、アジア各国ではそれを実践した国や政府に援助金を出すと豪語している。G7参加国の首脳の中には、日本はG7の会議から「気候問題」をはずすらしいとの発言も出ている。案外憶測とはいえない。「火の気がないところに煙は立たない」というから。
このように岸田政権が好き勝手な発言を繰り返すのは、野党の無力さはもとより、闘う側の弱さの表現でもある。闘う側の力が試されている。最早「花見どころではない」。「ロシアのウクライナ侵攻も」、「気候問題も待ったなしだ」。 (武)