陸自ヘリ宮古島沖墜落事故への疑問
コラム「架橋」
いささか旧聞に属するが、4月6日宮古島沖で陸上自衛隊のUH―60JA多用途ヘリコプターが墜落事故を起こした。事故で墜落したというのは、おそらくは紛れもない事実なのだろうが、事故機の捜索等についていくつかの疑問がある。
5月6日に開催された「南西諸島の自衛隊配備に反対する大阪の会」の講演集会で、「ミサイル基地いらない住民連絡会」の共同代表の清水さんは、その問題に少なからず言及していたのだが、「かけはし」での報告記事(5月29日号)では、字数の都合上割愛せざるをえなかった。彼女の発言と持参してくださった「住民連絡会」のチラシを参考にして、この場を借りてその疑問について述べてみたい。
まず、最初の疑問は熊本の第8機動師団の師団長が、宮古島の下地島空港に近い海域を偵察していた理由である。第8師団の管轄は熊本、宮崎、鹿児島であり、沖縄は第15旅団の管轄である。ちなみに、防衛省は第15旅団を1000人増強し準師団化し、南西諸島防衛の中核となる「沖縄防衛集団」を2027年度までには創設するとしている。
第二に事故機発見の経過についての疑問である。当初は池間島沖で落ちたという発表であったが、その後、伊良部島の沖合2キロで墜落と訂正された。この場所は水深40メートル位の場所で目視もできるはずである。しかし、事故機が発見されたのはその10日後、この場所から4キロ北方の水深100メートルの海底であった。確かに、この海域は潮流が複雑で、海底もサンゴ礁でソナーでの探索も難しいのかもしれないが、なぜそんなに時間がかかったのか。
第三に在韓米軍の不審な動きである。事故の2日後の4月8日に在韓米軍のF16戦闘機が、エンジントラブルを理由に下地島空港に着陸を強行し、その後整備を行うと称してC12輸送機も2機飛来した。その際、米軍の警備員は銃を携行して降り立ち、F16は8日間も下地島空港に居座った。
第四にこの間、下地島と橋で陸続きの伊良部島では、連日海岸沿いに多くの自衛隊員が展開され、軍用トラックやジープが島中を走り回っていた。その上、捜索とは無関係と思われる戦闘車両である軽装甲車も参加していた。
これらの事実からうかがわれることは、まず、UH―JAの飛行は在韓米軍も参加する離島防衛・奪還のための日米合同軍事演習の下見だったのではないのかということであり、その際何らかの理由(今回はエンジントラブル)をつけて、現在軍事利用が許されていない下地島空港を利用し、既成事実を作るという目的があったのではないかということである。
そして、事故を幸いにとまでは言わないが、救難活動を理由に実質上の離島奪還・防衛の軍事訓練を行ったのではないのか、そのため機体の発見を遅らせたのではないのかという疑問である。こうした見方はうがち過ぎだろうか。 (O)