パーキンソン病
コラム「架橋」
4月からパーキンソン病で88歳の叔母の介護に張り付いて、もう5カ月になろうとしている。6月に圧迫骨折した腰もほぼ完治して、室内ではフラフラしながらも自立歩行ができている。これだけでも大助かりなのである。またリハビリも、私が感心してしまうほどがんばっている。体重はこの夏に3キロ減らして34キロ。食事も3食よく食べてはいるのだが、排便は週1~2回で便秘状態が続いている。
訪問医の話によると、パーキンソン病患者のほぼ100%が発症前から便秘だという。叔母もそうであったが、だからと言って便秘の人がパーキンソン病になるというわけではない。早い人だと30代で発症するということだが、65歳以上の患者の割合は100人に1人である。
パーキンソン病は認知症患者の6~7割を占めるアルツハイマーと同様の脳疾患でもある。アルツハイマーは脳内たんぱく質であるアミロイドβのカスが、きちんと排出されずに蓄積し、脳内の毛細血管の血行を阻害することで脳を壊死させるという疾患である。だからMRI画像を見ると、脳が委縮したり破損したりしているのである。
パーキンソン病の原因として考えられているのは、αシヌクレインというたんぱく質の異常型だ。これが塊となって脳ばかりではなく末梢神経にも蓄積し、神経伝達物質であるドーパミンの働きを阻害することで運動障害を引き起こすのである。アルツハイマーのように脳を壊死させることはない。特徴的な障害は、小股歩き、指の震え、全身のこう着などだ。
しかも厄介なことに、この異常型たんぱく質は正常なたんぱく質を異常型に変化させるという性質を持っている。レビー小体型認知症と多系統萎縮症も、αシヌクレインが原因とされている疾患だが、それぞれの異常型たんぱく質の形状は異なっているという。いずれもこれといった特効薬などはなく、ドーパミンの働きを補う薬の服用と、リハビリで筋力の衰えを防止する以外にない。
叔母と甥の「老老介護」も大変なのだが、それ以上に今夏の酷暑は体を消耗させているようだ。叔母が「寒い」というので、エアコンは28度の除湿をキープしている。木曜日の午後、蒸し暑さの中紙おむつなどをぶら下げて帰宅すると頭痛がして小便もほとんど出ない。また軽い熱中症になったようだった。
翌日も調子が悪かったので午後に長めの仮眠をとり午後6時半に目が覚めたのだが、私は土曜日の午前6時半だと思い込んでしまい、訳の分からないことを叔母にしゃべっていると「あんた大丈夫なの」と心配されてしまった。
私がしっかりしなければ、確実に共倒れすることになる。涼しい秋風が待ち遠しい。 (星)