続ジャニーズ考

コラム「架橋」

 「ジャニーズ性加害問題当事者の会」に所属する大阪市在住の男性(40代)が10月中旬、遺書を残して大阪府内の山中で死亡しているのが発見された。彼は5月に性被害を告発したことで「売名行為だ」「金が欲しいだけだろ」などとSNSなどを通しての中傷に悩んでいたという。ジャニーズ事務所に対策を求めていたが、5カ月以上も放置されていた。
 旧ジャニーズ事務所(スマイルアップ)は11月20日現在で、性被害補償に関して連絡があったのは837人だと公表した。それぞれどのような基準で補償内容を決めるのかは明らかにされていないが、その人数の多さには驚くしかない。手を上げていない被害者もいるのだろうから数は1000人を下らないだろう。被害者は独りで黙って悩んでいたら一生涯救われることはないのだから、手を上げて被害を届け出る権利がある。その被害者の痛みに対して塩をこすりつけるような中傷をする輩は、人間の屑だと言わなければならない。
 通常のタレント事務所は、メディアやCMの出演料やコンサートのチケット収入が収益の柱になっているが、ジャニーズはそれに加えて巨大なファンクラブを作り上げてそこから莫大な収益を上げてきた。年間会費4000円とされるその会員数は公表されていないが、ファンクラブからの収入は事務所収入の約半分に当たる年数百億円だという。もちろんファンクラブからの収入は会費だけではないだろうが、100億÷4000=250万であり、いかに巨大なファンクラブがジャニーズの後ろ盾になってきたのかということがわかる。
 ジャニーズファンはSnow Manに夢中な若い女性ファンだけではない。1960年代後半のフォーリーブスから始まって、光GENJI、少年隊、スマップ、嵐などにはまってきた50代くらいまでと、とにかく層が分厚いのである。ある年配のファンに言わせると、ジャニーズとはひとつの「ブランド」だという(毎日新聞11/2夕刊「60年余夢と青春の喪失」から)。ジャニー喜多川の性犯罪が明らかになっても、ジャニーズを批判するファンはほとんどいない。ジャニーズが崩壊してもファンは熱い視線を送り続ける。「今でも信じがたい」「頑張ってほしい」・・・それは某新興宗教の信者に近いものがあるのかと思えてしまうほどである。
 旧ジャニーズは新会社の名称をファンクラブから公募するとしている。巨大なファンクラブに応援してもらうことで、難局を何とか乗り超えようとする思惑が透ける。しかしジャニーズのブランドはすでに地に落ちたのである。事務所所属のタレントはCMやNHKを始めとしたテレビ出演も困難になっており、退所するタレントが続いている。性被害者補償に手こずっているうちに、旧ジャニーズは崩壊から消滅に向かうのかもしれない。
 キムタクは瞬く間にテレビから消えてしまった。(星)

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