30年
「石油はあと30年で枯渇する」。それは今から45年前に世界中を駆けめぐり、ほとんどすべての人々が「そう思わせられた」歴史的な「フェイク」であった。そう「信じ込ませた」背景にあったのは、1973年の第一次「石油危機」だった。それまで湯水のような低価格に抑えられてきた原油価格が3倍上昇するなか、人々は大混乱に陥って、トイレットペーパーなどの争奪という「珍現象」まで発生し、物価も急上昇した。
こうした混乱に乗じた「フェイク」発信者の真の目的は「石油に代わるエネルギー」として、原発を世界的に普及・拡大させることであった。当時、核・原子力産業は人類を何度も絶滅できるほどの核爆弾の過剰生産によって完全に行き詰っていた。核・原子力産業の延命策こそが原発だったのである。
この「フェイク」に完全に飲み込まれていた当時「石油に代わるエネルギー」として原発ではなく「自然エネルギー」「ソフトエネルギー」の提唱と議論もあったし「石炭ならば100年以上の埋蔵量がある」といった意見まで飛び出していた。第4インターはといえば「原発の労働者管理」という立場であり「原発反対」ではなかった。第4インターの公式的な立場を教条主義的に受け入れることなく「原発反対」を主張したのが高島義一(右島一朗)だった。また日本の原子力学会でも、原発の危険性を指摘して公然と反対を主張していたのは水戸巌・星野芳郎・槌田敦などごく少数であった。そして水戸が主張していた軽水炉型原発の危険性は、福島原発事故という大惨事によって証明されることになったのである。
「石油はあと30年で枯渇する」。この「30年」という数字に、人々がまんまと騙されてしまう「トリック」があるのではないかと思えてならないのである。人の寿命を60~90歳とした場合、30歳を想像してみると「どんな仕事をしているのか、結婚はしているのか、子供はいるのか」ということになるし、60歳を想像してみると「孫はいるのか、健康なのか、あと何年くらい生きられるのか」というようなことになるのだろう。
いま原発は「寿命」を迎えようとしている。「再エネへの転換」が声高に叫ばれている。SDGsやESGなどの横文字が氾濫している。そして2030年までにCO2を何%減らせるのか、30年後の2050年までにCO2排出をゼロにするなど、またまた「30年」という数字が登場してきている。
CO2の増加による温室効果を主因とする気候危機は現実であり、それへの全人類的な対処は不可欠だと考えるが、3000兆円と言われている膨大な資金に群がる奴らの主張ややり方をうのみにしてしまっていいのだろうか。45年経ってまた騙されるのではないのだろうか。資本主義は手を組める相手なのだろうか。搾取と戦争の世界をやめない奴らを信用していいのだろうか。
決して信用してはならない。 (星)