「国家と移民」

外国人労働者と日本の未来
鳥井一平著 集英社新書 860円+税 2020年刊

 少し時間があったので久しぶりに区立図書館によった。入ってすぐの所に特設コーナーとして「移民・難民問題」があり、十数冊の本が並んでいた。どれも読んでみたいような実態を明らかにするものであった。図書館司書さんのセンスの良さに感謝。私が選んだのは鳥井一平さんの書いた本だ。
 鳥井さんはこの間の入管法改悪反対運動の中心的な一人である。もう十数年前になるだろうか。上野七丁目の光輪モータースの争議を鳥井さんたちの全統一労組が行っていた。その闘いと韓国シチズンの労働者支援の闘いが合流していた。韓国シチズン偽装倒産に対して、日本の親会社・シチズンへの事業の再開を求めて、遠征の闘いを行った。韓国シチズン労組支援のために差し入れや田無のシチズンへの抗議に私も参加した。そして、鳥井さんが本書で書いている山梨県でのクリーニング工場における中国人実習生たちが、あまりの労働条件のひどさに抗議して、逃げてきた事件にも遭遇した。
 本書は移住労働者とそれを支援している鳥井さんらの闘いの記録でもあり、何しろ具体例に基づいているので分かりやすい。そして、鳥井さんの移住労働者へ「人として」の優しいまなざしに溢れている。読んでいて、何とかしなくてはと思う本であった。
 目次を紹介しよう。
 はじめに プロローグ 第一章 外国人労働者をめぐる環境 第二章 外国人労働者奮闘記―モノ扱いが横行する現場 第三章 「外国人」労働者受け入れ政策の歴史 第四章 これからの移民社会 エピローグ 「贈るよろこび」

 入管法改悪問題の本質は日本が行っている移住労働者への待遇のひどさにある。少し前に起きた事件だが紹介する。
 「2008年には、『技能実習生』の中国人女性たちが山梨県のクリーニング工場から東京まで逃げてきて、私たちに助けを求めました。彼女たちは、『縫製』『婦人子供服製造』の技能実習という名目で日本に来たのですが、縫製の仕事はいっさいさせてもらえず、ずっとクリーニング工場で働かされていました。その上、信じられない低賃金でした。彼女たちが待遇改善を要求すると、社長たちは暴力的手段を使い、強制帰国させようとしました。必死の思いで逃げ出して私たちのもとにたどり着いたとき、彼女たちは全身は傷だらけでした。(13P)
 日本の研修・技能実習制度は、国際社会や国連の人権機関では、「人身売買、奴隷労働」として悪名高いものだ。
 「オーバーステイ労働者」も「連れてこられた人」も国連定義では「移民」。国際移住機関では、当人の①法的地位、②移動が自発的か非自発的か、③移動の理由、④滞在期間にかかわらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している。または移動したあらゆる人。
 これに従えば、オーバーステイして日本で働いていた人も「法的地位にかかわらず」「本来の居住地を離れて、国境を越え」て日本に移動したのだ、「移民」です(29P~30P)。
  第四章 これからの移民社会で、鳥井さんは移住連編『移民社会20の提案』の一部を紹介している。これは、今回の入管法改悪反対でも問われた本質的な問題の提起だ。
 ①在留資格や在留期間を問わず、すべての移民は、その国籍、人種、皮膚の色、性、民族的及び種族的出身、ならびに門地、宗教その他の地位によるいかなる差別もなしに、日本国憲法と国際人権法が定める人権と基本的自由を享受する権利を持ち、またいかなる差別もなしにその保護を平等に受ける権利を持つ。とくに直接に、政治に参与し公務にたずさわる権利、いかなる国籍も自由に取得し離脱する権利。
 ②すべての移民は、経済的、社会的及び文化的権利を享受する。とくに労働・職業選択の自由、労働条件ならびに同一労働同一賃金に関する権利、住居についての権利、社会保険と社会保障に対する権利、教育を受ける権利。
 ③すべての移民は、国際人権法に基づく法律(改正入管法)が定める正当な理由と適正な手続きによることなく滞在・居住する権利を制限もしくは剥奪されない。
 ④すべての移民は、いつでも自由に出国し、その在留期限内に再入国する権利を持つ。
 ⑤すべての移民は、日本国内において、その家族構成員と再会し、家庭を形成し、維持する権利を持つ。
 ⑥すべての移民は、国際人権法が保障する「民族的、文化的及び宗教的マイノリティの権利」を個人的にも、集団的にも享有する。とくに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰し、かつ実践し、自己の言語を使用する権利、自己の言語、文化、歴史及び伝統について教育を受ける権利、民族名を使用する権利。
 ⑦すべての移民は、これらの権利享有を達成するために必要な特別措置を求める権利を持つ。
 ⑧国と地方自治体は、この法律(移民基本法)が認める権利をすべての移民に保障するために、立法、行政、財政その他必要な措置を取らなければならない。

 移民基本法は、この社会が「すでに移民がいて成り立っている社会」という認識を、一般の人々の間で醸成するためにも必要なものです。
 「特定技能」などという言葉でごまかすのではなく「移民受け入れ政策」と明言すべきだ、と鳥井さんは主張する。まったくその通りだ。
 最後に、鳥井さんのエピソードを紹介する。
 鳥井さんは全統一労働者分会の結成を経て、1993年の外国人春闘を組織化し、以降の一連の長きにわたる外国人労働者サポート活動が評価され、2013年にアメリカ国務省より「人身売買と闘うヒーロー」として日本人で初めて選出、表彰された。          (滝)


 

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