国家による国家のための五輪強行に、広く異議ありの声を

4.12 東京オリンピックを様々な角度から批判

オリンピックは
許されるのか?
四月一二日、太平洋資料センター(PARC)は、東京ウィメンズプラザで「検証!オリンピック―商業主義、ナショナリズム、東京改造、メディア―」を行い、約六〇人が参加した。
第三二回夏季オリンピック(二〇二〇年)の東京招致が一三年九月に決まり、ビッグビジネスチャンスだとして大喜びで安倍政権、スポーツマフィア、財界、ゼネコンなどが一斉に動き出している。東日本大震災復興の遅れ、福島第一原発被災者の生活再建が進まず補償も不十分であるにもかかわらず、石原元知事は「三兆円の経済効果がある」などと放言した。すでに東京都は招致費用に二〇〇億円以上も使い、五輪関連費含めて約一兆五〇〇〇億円もかかると言われている。
PARCは、このようなオリンピックをめぐる動きに対して①開催地は誰がどう決めるべき?②オリンピックで暮らしや震災復興が犠牲に?③巨大施設建設で環境や住まいは?④ほんとうに「平和の祭典」なの?⑤スポーツの商業化は是か非か?の論点を設定し、検証の取り組みを開始した。

問題点を指摘
抗議が次々に
論議を具体的に深めていくためにPARCは、ビデオ『検証!オリンピック―華やかな舞台の裏で』を制作し、シンポジウムの冒頭に上映した。
ビデオは、新国立競技場計画に対して批判する。三〇〇〇億円(当初一三〇〇億円)をかけた環境・景観破壊の強行に対し多くの建築家や文化人から計画見直しの要求があがったことを紹介する。
続いてオリンピックを批判する人々のシーン。
向井健さん(山谷労働者福祉会館活動委)が「再開発にともなって、貧しい人たち、特に野宿する人たちの追い出しが行われる」と批判。
新国立競技場建設に伴って立ち退きを迫られている甚野公平さん(都営霞ヶ丘アパート)が不誠実な都を厳しく糾弾する。
飯田陣也さん(日本野鳥の会)は、葛西臨海公園の三分の一を埋め立てるカヌー競技場建設計画に対して、「七四種の野鳥が観察されている。オリンピックの精神は、環境との両立を言っている。環境破壊を引き起こす計画は考え直してほしい」と訴える。
佐藤和良さん(いわき市議)は、「(福島の人々は)強制的に被ばくさせられた。土地を汚染されて故郷を奪われて、捨てられたという感じが強い。オリンピックそのものが原発事故の隠蔽、被害者の圧殺なのではないか」と強調した。
特別スピーチとして飯田陣也さん(日本野鳥の会)が葛西臨海公園のカヌー競技施設計画の見直しの取り組みを報告した。
首藤久美子さん(反五輪の会)は、「五輪返上」を合い言葉に二〇一三年一月に都庁前情宣を皮切りに反オリンピックコンサート、デモ、反五輪メッセージ運動を繰り広げてきたことを紹介し、連帯アピールした。

ナショナリズム
国家主導、浪費
シンポジウムは、三人のパネリストから五輪検証視点を提起した。
阿部潔さんは、「ナショナリズムとメディア―『昭和ノスタルジー』の呪縛を超えて―」というテーマ。
安倍政権の「日本を取り戻す」というアプローチからの「TOKYO 2020」の位置づけについて分析し、メディアが「『過去』を自己愛的に美化し、正当化するノスタルジーに支えられたナショナリズムの高まりは、『来たるべき未来』の可能性を著しく制限する。現行メディアは、そうしたノスタルジーとナショナリズムに大いに加担しているといえる」ことを明らかにした。
また、「今こそメディアには、政治的に利用されるような『2020東京オリンピック』に加担した報道ではなく、未来への閉塞感を不可避的に伴う『昭和ノスタルジー』の呪縛から抜け出すうえで『スポーツすること』にどのような潜在的可能性があるかを、醒めた視座から問いかけることが期待されている」と問いかけた。
谷口源太郎さん(スポーツジャーナリスト)は、「オリンピズムを壊すナショナリズム」に焦点を当てて問題提起した。
「東京オリンピック大会組織委員会の会長に森喜朗元首相が就任した。『日本は天皇を中心とした神の国』とする時代逆行の復古主義、国粋主義の森を組織委員会のトップに据えたことだけでも『オールジャパン体制』といっても明らかに国家主導だ。安倍政権による『戦争する国づくり』と憲法改正にむけてオリンピックの政治利用、国民総動員を考えている。国家による国家のための東京オリンピックの危険な政治性格を明らかにしていくことが必要だ」と発言した。
福士敬子さん(前都議会議員)は、「オリンピックのための招致と開発の予算のおかしさ」について①招致活動経費(七五億円)の支出内容の詳細が不明②申請ファイル作成契約金がいずれも巨額な額となっている③IOC評価委員会対応費(六億円以上)の書類の内訳が「黒塗り」で不明など、都の情報公開を否定する姿勢をとり続けていることを批判し、招致反対の取り組みを報告した。
さらに舛添都知事のソチ五輪出張費が三〇〇〇万円以上の問題、莫大な予算をかけて競技施設を建設していくが、いずれもその後の維持費が膨れあがることを知っていながら税金で負担していけばいいという無責任なレベルでしかないことを批判した。

パラリンピック
の歪曲が広がる
質疑に入り、「パラリンピックの検証視点をお聞きしたい」という質問に対して谷口さんは、「オリンピック・パラリンピックを一緒にする言い方は使わないようにしている。オリンピックは文科省が管轄し、パラリンピックは厚労省が管轄していた。そもそもパラリンピックは、障がい者のリハビリのためのスポーツを取り入れ、振興のためにあった。メダル競争のためではない。だからオリンピックと一緒にしてはだめだ。だが四月から管轄が文科省に統一した。競技を公平にするという名の下に障がい度を正確に報告させるという差別を拡大している。この問題は深刻化する」と指摘した。
最後に主催者は、ビデオ『検証!オリンピック―華やかな舞台の裏で』の上映を草の根で行い、継続してオリンピック検証の論議を広げていこうと呼びかけた。        (Y)

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