イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

アジア連帯講座・公開講座

講師:浅見和彦さん(専修大学)

左翼・労働組合の真価問う
Brexit問題への対応(上)

その分岐をどう捉えるか

 イギリスの経済危機などを背景に二〇一五年五月の総選挙で保守党は、英国の「ブレグジット」(欧州連合離脱)の是非を問う国民投票の実施を公約し、一六年六月に国民投票を行った。結果は、離脱賛成が過半数だった。ところが保守党のメイ首相は、EU離脱協定案を議会に提出したが、否決。「ブレグジット」をめぐって混迷を深めていくことになる。メイ首相辞任後、七月に保守党党首となったボリス・ジョンソンは、「EUとの合意があってもなくても一〇月三一日の期限までに必ず離脱する」と公言。労働党は、第二回国民投票案が提出されれば支持すると表明しているが、内部的にはスタンスのとり方の違いある。
 このような流れの中で左派系・労働組合はどういう態度なのだろうか。「レフト・ユニティー(左翼統一)」(映画監督のケン・ローチなどが呼びかけ、二〇一三年一一月に結成)は、「今回の国民投票は、反移民感情に突き動かされ、レイシズムが焚きつけた極右からの圧力がもたらしたものだ。これは英国の政治史の中で最も反動的な全国運動であり、極右の公然たる登場に結果してしまった」と批判。また、左派系も「レイシズム、外国人排撃、英民族主義の右翼の構想」と批判してきたが、諸傾向と温度差があり一括りできない状況だ。
 分析・評価するための情報が少ないなかで、英国の「ブレグジット」問題をこじ開けるための第一歩として公開講座を設定した。浅見和彦さん(専修大学)は、「現代労働組合研究会/新しい労働組合運動のゆくえ・戦後労働運動の歴史をたどり、イギリス運輸・一般労組の研究」というテーマで研究活動を行ってきた。浅見さんから「ブレグジット」問題をめぐる労働組合の諸傾向、人々の動向などのレポートを含めて報告してもらった。
(本紙編集部)

ブレグジット(Brexit)問題―背景と経過


 二〇一六年にブレグジット(EU離脱)をめぐる国民投票が行われた。国民投票を実施したのは、キャメロン政権だった。戦後は、保守党か労働党の単独政権だったが、保守党だけでなく自由民主党という第三党の力を借りて、戦後初めて連立政権として成立したのがキャメロン政権だった。
 なぜ国民投票を行ったのか。連立政権を組まざるを得ないなかで、保守党内の離脱強硬派(ボリス・ジョンソンなど)の存在があり、また当時、UKIP(イギリス独立党)という党派もできた。保守党の政治基盤の弱体化への危機感が一方にあり、しかしながら党内では解決できず、そのため国民投票にかけて、危機を「克服」しようとするという動機もあった。
 連立を組んでいる自由民主党は、もともとは残留派で、国民投票にも反対だった。だがキャメロンが打って出たのだ。
 当時、誰もが離脱が多数を占めるとは思っていなかった。しかし、結果は投票率七二%で、「離脱」五二% 、「残留」四八%で、離脱派が多数派となり、みなが驚いていた。
 キャメロン首相も辞任せざるをえず、その後メイが首相になった。

 なぜ離脱派が多数となったのか。保守党の元副幹事長のアッシュクロフトは、世論調査会社を持っていて、保守党の政策に反映させるため、およそ一三〇〇〇人が回答したアンケート調査を行い、国民投票の分析を行っている。
それによると、特徴としては、若い人は残留支持が多く、 一八―二四歳は七三%が「残留」に投票、 二五―三四歳は六二%が「残留」で、他方、四五歳以上は過半数が「離脱」で、とくに六五歳以上は六〇%が「離脱」だった。
労働者のなかでは、残留支持が多かった。労働者(フルタイム、パートタイム)の過半数は「残留」で、大卒労働者の五七 %は「残留」、専門職・管理職も 五七%は「残留」支持だった。
政党支持別(二〇一五 年の総選挙時の投票先)に見ると、 保守党支持者は離脱派が多く、五三%は「離脱」だった。 UKIP(イギリス独立党)への投票者は、当然ながらほとんどが「離脱」である。
それ以外の党では「残留」が多数を占めた。労働党への投票者の六三%は「残留」 、スコットランド独立党(SNP)の六四%は「残留」 、自由民主党、緑の党の投票者の七割以上は「残留」であった。
「離脱」派の最大の理由(四九%)は、「イギリスのことはイギリスが決めるべき」 (いわゆる「主権」問題)が多かった 。「離脱」派の 三三%は、「入国審査と国境管理の回復」 を理由にあげている。この調査では問われていないが、新自由主義的な政策に対する反発で、底辺の人たちがかなり強い抗議を示したといわれた。
「残留」派は、経済・雇用を重視している。「残留」派の最大の理由(四三%)は、「離脱すれば、経済、雇用、物価などへのリスクが大きすぎること」 であり、「残留」派の三一%は、「イギリスと単一市場との双方にとって最善だから」と答えている。

 二〇一七年に総選挙がおこなわれた。保守党 三一三議席(マイナス一三)、労働党 二六二議席(プラス三〇) という結果だった。労働党は、コービン党首で左派的な反緊縮政策が支持されていた。
議席を減らした保守党は北アイルランドの民主統一党と連立政権を組み、第二次メイ政権はジョンソン外相らの強硬派を含めて発足した。メイ自身は、もともと残留派だった。
メイ政権は、EUとの交渉では移行期間、清算金などは合意したが、北アイルランドとアイルランドとの国境問題で対立が続いた。EU側は、北アイルランドだけは、EUの関税同盟に残せという要求だった。離脱強硬派は、これに反対した。
二〇一九年三月二九日の離脱期限は、まず四月一二日まで延期になり、さらに 一〇月三一日まで延期となった。 二〇一八年 一一月、メイ政権がEUとのあいだで離脱合意案をまとめるが、今年に入って、離脱合意案は三度にわたってイギリス議会で否決され、メイ首相は辞任に追い込まれた。

最近の動きをどう見る

 七月に保守党の党首選挙があり、ボリス・ジョンソンが外相のハントを破り、党首となって、首相に就任した。
ジョンソンは、九月からの「議会休会」を強行しようとしたが、議会内の反発と「クーデター反対」の大規模デモが行われた。最高裁も、「議会休会」に対して「違法」の判決を出した。
この過程において保守党内の穏健派の離反で、議会の過半数割れとなってしまう。保守党内の一人が自由民主党へ移り、この時点で過半数割れとなる。 さらに、前財務相などの保守党の有力者を含む二一人が造反し、除名された。結果、大幅に過半数割れとなったのである。
労働党など野党と保守党の除名組が離脱延期法案(交渉期限の三カ月延期〈二〇二〇年一月末まで〉を EUに対して政府が要請することを求める法案)を提出し、可決された。法案が成立したためジョンソンも要請せざるをえなかった。

 労働党の態度は、どうなのか。コービンは、党首としての声明(二〇一九年六月)で、「合意なき離脱も、保守党による離脱にも反対し、私としては、労働党が残留を支持するキャンペーンをおこなうことを鮮明にしたい」という態度を示した。ただ労働党としての結論ではなかった。
一〇月二五日、ジョンソンは、労働党に総選挙をやらないかと呼びかけた。解散・総選挙には下院の三分の二の賛成が必要で、保守党、労働党がOKを出さないと総選挙ができないからだ。
二〇一九年九月末の労働党大会でコービンは「離脱の五二%ではなく、また残留の四八%でもなく、九九%のために」とあいまいな発言をしている。影の離脱担当相のケア・スターマーも、あいまいな残留支持の立場だ。
「週刊かけはし」に掲載されていたアラン・ソーネットの論評(二〇一九年一〇月二一日号)は、態度がはっきりしていると評価しているようだが、全体としてはそうとは言えないと思う。
なぜかというと、労働党の中のコービンとコンビを組んでいる最左翼の影の財務相マクドネルは、「残留」をより強調したい意向だったし、左派組合のUNISON(公務員)があいまいさに反発し、「残留」を強調している。つまり、労働党は「残留」で固まっていないということだ。
(つづく)

11.2

朝鮮幼稚園はずしにNO!全国集会

 朝鮮幼稚園はずしにNO!すべての幼児に教育・保育の権利を!全国集会が、一一月二日、日比谷野外音楽堂で開かれた。集会には安倍政権によって一三年から実施されてきた排外主義的で民族差別主義的な高校授業料無償化排除と闘ってきた朝鮮高校の生徒たち多数も参加した。
 今年の一〇月から幼児教育・保育無償化が実施されたが、安倍政権は各種学校だからとして朝鮮幼稚園や外国人学校の付属幼稚園をその対象から排除した。そもそも日本で生活し納税している外国人の子供たちを公共サービスから排除するという人権感覚自体が信じられない。それよりも朝鮮高校に続いて朝鮮幼稚園だけを排除する政治的な露骨さを薄めるために、外国人学校全体を排除の対象にしたとしか考えられない。
 集会では主催者を代表して南昇祐(ナン・スンウ)朝鮮幼稚園幼保無償化中央対策委員会委員長が、集会基調文を読み上げた。その中で「朝鮮学校生徒だけを高校無償化制度から意図的に排除し、ついにその黒い魔手を幼い児童にまで伸ばすに至った。朝鮮本国に対する許しがたい独自制裁の延長だ。在日朝鮮児童らは我が同胞社会の宝だ」と訴えて、措置の撤回と幼保無償化の即時適用を要求した。
 続いて藤本泰成さん(朝鮮学園を支援する全国ネットワーク事務局長・平和フォーラム共同代表)が発言を行った。政党からの連帯発言は立憲民主、国民民主、社民党の代表が行い、来賓あいさつと続いた。
 朝鮮幼稚園の保護者たちからの発言は切実なものだった。「悔しいし、消費税増税もあり家計も痛いが、本当に痛いのは心です。差別されてもいい子供なんてどこにもいない。高校生と共に闘っていきたい」。「街頭情宣で多くの日本人から激励の声をかけてもらった。ウリマル、ウリハッキョを守っていかなければならないと思った」。「みんな違って、みんないい。子供たちが差別される理由はどこにもない。差別のない社会で民族教育のために声をあげて行きたい」。その後、小さなかわいい園児たちがお遊戯を披露した。
 いくつかの連帯アピールの後、日本政府への「要請書」を採択し、銀座パレードに出発した。   (R)

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00290=6=64430  新時代社