映評「地球で最も安全な場所を探して」

エドガー・ハーゲン監督/2013年制作/スイス映画
「核のごみ」をどこに捨てるのか

10万年後まで保管できる場所はあるのか

 この映画は、原発からでる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地を探して世界を巡る科学者に密着した、2013年制作のドキュメンタリーである。 
 イギリス出身・スイス在住の原発推進論者、廃棄物貯蔵専門家のチャールズ・マッコンビーが主人公。地層処分地探しに世界を歩く彼とともに、スイス人の監督、エドガー・ハーゲンが候補地を巡るロード・ムービーだ。

日米を貫く差別と不平等の構造

 アメリカの映像には、ハンフォート・サイトが登場するが、1943年以降にそこで製造されたプルトニウムが最初の原子爆弾に使用された。その土地を所有する先住民・ヤカマ族環境回復廃棄物管理プログラムディレクターによって、放射能汚染との長い闘いが語られる。サイトには世界初の処分場の建設が予定されたが、ヤカマ族や環境保護活動家の反対により、計画は実現しなかった。
 また、ネバダ核実験場跡にあるユッカマウンテンも登場し、ショショニ族政府外相によるとその土地はウエスタン・ショショニ族の聖地である。1950年代に地上で119回、地下で1000回の核実験が行われ1992年に中止。その後処分場が計画されたが、建設反対運動によって計画が撤回された。再び候補地に指定されないように活動を続けていることが伝えられる。
 『かけはし』10月26日号の記事にあるように、アイヌ民族や研究者でつくる団体は、北海道における処分地選定の動きに対して抗議声明を出し、アイヌ民族の同意が必要だと訴えた。水俣病に寄り添った故・原田正純医師は「差別されている場所に公害というしわ寄せがくる」と語ったという。アメリカ・インディアンと日本のアイヌを貫く、差別と不平等の構造が明らかになる。

迷惑施設は地方に押し付け
 
 1999年に核兵器製造後のTRU廃棄物(後述)を処理する核廃棄物隔離試験施設(WIPP)がニューメキシコ州カールスバッド市で操業を開始した。この施設を受け入れた元市長は、多額の補償金を受け取り、ユッカマウンテン計画の失敗は市への神の恵みだと言う。そこでは外部に放射性物質が漏洩するのは20万年に1回の確率だと予想されていたにも関わらず、稼働後わずか15年で外部への放出と労働者の被ばくが発生したという(原子力資料情報室)。
 寿都町町長の「将来の町の財政を見据えた」という言葉は、財政難にあえぐ地方自治体が文献調査受け入れによって国からの交付金をあてにするということであり、場所は違えど町長の姿が、カールスバッド市元市長の姿とダブルイメージになる。

地上保管が唯一の選択


 マッコンビーの真剣で誠実そうな人柄と風貌によって、地層処分の可否を彼と同じ土俵の上で考えてしまいそうになる。彼は「もしたくさんの国々で原発の廃止を決めたとしても、問題は残る。廃棄物の処理は必要だ。」と監督のインタビューに答える。彼の言葉からは、使命感に燃え、真面目な人であることが伝わってくるだけに説得力がある。日本では全国で24基もの原発の廃炉が決まっているが、解体されたあと、どうするのだろうか。処理方法も決まっていないうえ、廃炉技術も確立されていない。「ごみ」の後始末の問題が、改めて自らの問題として考えさせられる。
 現在の地層処分技術は10万年もの間にわたって環境から隔離することではなく、環境に漏れ出てきた放射性物質による人への被ばくレベルを許容できる範囲に抑えることだけを目指している。
 使用済核燃料を再処理した高レベル放射性廃液をガラスで固めたガラス固化体は鉄の容器に入れられ、その周りを粘土で覆う。その粘土は1000年間にわたって漏洩を抑制することになっているが、その後は少しずつ放射性物質の漏洩が始まる。
 さらに地層処分されるものには、NUMOが住民説明会で明らかにしないものがある。再処理の過程で回収された寿命の極めて長い超ウラン元素などで汚染された放射性廃棄物(TRU廃棄物)である。
 これは、ガラス固化体の「高レベル」に対して「低レベル放射性廃棄物」と呼ばれる。ドラム缶にコンクリートなどとともに詰められ、鉄製の容器に入れられる。この中には半減期が1570万年ときわめて長く、水に溶けやすいヨウ素129が含まれている。TRU廃棄物は、処分後早い場合には10数年後から漏洩が始まり、高い被ばく線量をもたらすと言われている。
 漏れ出ることを前提に計画されている地層処分によって、環境に出た放射性物質は河川に運ばれ、人が飲食物を通して内部被ばくを起こす。
 処分技術も未熟なまま、人間の目の届かない地下に埋めてしまうことは、未来の世代に対して無責任な行いだろう。
 「行動する市民科学者の会・北海道」は、日本学術会議が2012年に提言した原則50年間の地上保管に加え、処理技術をさらに進歩させ、今ある「核のごみ」の放射能もかなり低下する200年間の保管を目指すべきだと主張している。(https://youtu.be/8rxqNf56sjsを参照のこと)
 『かけはし』2月15日号のクラウス・エンガートの文章にあるように「地上に残せ!」というスローガンは、我々のものでもある。
 この映画は2月から東京を皮切りに公開され、全国での劇場公開はほぼ終了しているが、北海道では7月と10月に、東京でも8月に自主上映される予定である。
 (白石実)

週刊かけはし

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