アジア連帯講座 11.5公開講座

香港はいま『香港の反乱』出版にあたって

報告/稲垣 豊さん(ATTAC首都圏)

日時/11月5日(金)午後6時30分~8時30分
場所/全水道会館小会議室4F(JR・地下鉄三田線水道橋駅)

 中国共産党による香港国家安全維持法(国安法)施行(2020年6月)後、香港当局は民主派への弾圧を強化してきました。政治団体、学生、メディア、教育界などの民主派団体の解散を強要し、多数の人々が香港警察に不当逮捕されたのです。
 とりわけ中国共産党政権、香港当局に対して批判してきた蘋果[ひんか]日報(リンゴ日報)が21年6月24日、廃刊に追い込まれました。創業者の黎智英氏が国安法違反などの容疑で逮捕(20年8月)され、幹部も相次ぎ逮捕されました。そのうえで日報社の資産凍結なども強行し資金繰りができず廃刊に追い込んだのです。
 「香港市民愛国民主運動支援連合会」(支連会)幹部4人も国安法違反容疑で逮捕されました(21年9月8日)。支連会は、天安門事件(1989年6月)に対して90年から犠牲者を追悼する大規模集会を香港で毎年開催してきました。だが当局は、民主派徹底弾圧を広げていくために不当逮捕を強行し、解散に追い込んだのです。
 このような弾圧を積み上げたうえで9月19日に行われた香港の選挙委員会の委員選挙が行われました。この選挙は12月の立法会議員選挙で40議席を選出し、来年3月には次期行政長官を選出します。しかし、この委員選挙は、事前に資格審査委員会で愛国者であるかどうかの審査を行い、民主派を排除し、親中国派で固めました。投票資格者も当局が認めた約4900人でしかありません。しかも当局は、6000人の警察官を投票会場周辺に配置し、圧力をかけながらの投票だったのです。まさに中国共産党翼賛体制作りへと踏み込みました。
 香港は、一連の民主派弾圧プロセスをみると中国共産党と香港当局によって親中国派で制圧されてしまったかに見えます。私たちは、「香港はいま」の現実を直視し、どのように受け止め、新たな連帯の方向性を考えていくことができるのでしょうか。
 「香港の反乱2019」著者の區龍宇さんは、2019年12月、「#FIG
HT FOR HONG KON
G @ 2019」の招待で来日し、文京シビックセンターで緊迫した香港民主化闘争の中、「香港に自由と民主主義を~沖縄・日本・アジアのなかで」をメインに学生の陳怡(チェン・イー)さんとともに報告しています。
 區龍宇さんは、「香港の反乱2019」の中で「香港の未来が現状から直線的に発展していくと想像すべきではない。われわれは思いがけない事件や衝撃に備えなければならない。闘いは依然としてわれわれの先にある」、「将来の好機をつかむためには、2014年と2019年の両方の経験を通して考え、正しい教訓を引き出すことが必要である」とメッセージを発信しています。
 講座では新刊「香港の反乱2019 抵抗運動と中国のゆくえ」(柘植書房新社)をベースにしながら、民主化闘争の真っ只中の香港に駆けつけた稲垣豊さん(ATTAC首都圏)に解説していただき香港情勢と仲間たちの思いを受けて、今後について議論していきたいと思います。

「香港の反乱2019
 抵抗運動と中国のゆくえ」

著者:區龍宇(Au Loong-Yu)/訳者:寺本 勉
定価3000円+税/柘植書房新社

【目次】
日本語版への序文
謝辞/序文 序章
本書の概要

第1章 反乱のアウトライン

前段階としての2014年の雨傘運動/反動の五年間/誰もが標的になる法案/運動の4つの段階/運動についての最初の評価

第2章 反乱の当事者たち

北京とその香港での傀儡(かいらい)/香港の大物たち/1997年世代/勇武派 /「本土派」政党を持たない「香港本土主義」?/泛民とその支持層/労働組合と 労働運動/反体制派公務員/中国本土住民/女性とマイノリティの参加/まとめ

第3章 反乱でのさまざまな闘い

6月の3つの重要な日/7月1日:立法会ビル占拠/7月21日:警官が組織的 犯罪者の肩をたたいたとき/8月5日のゼネラル・ストライキとその影響/9月・ 10月における若者の急進主義/2つの大学での11月闘争

第4章 反乱の問題点

スローガンとシンボル/「自然発生性」対「ステージ」/暴力対非暴力/階級問題 /戦術と戦略/香港的な特徴を備えた政治的スペクトル/外国勢力

第5章 ドラゴンとガチョウとコロナウイルス

ドラゴンとガチョウ/香港国家?/中国共産党のアキレス腱/ドラゴンがウイルス に感染するとき/香港人はどれくらい「西洋化」されているのか?/香港に対する 北京の新たな攻撃

2019年香港反乱関係年表

訳者あとがき

The KAKEHASHI

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